はるばるやってきた旅をしたなあと思うよ

 東下りは有名だから説明は要らないと思う。高校生なら結構此のギミックに感動して憶えてしまう子も居るはずだ。
 3時に起きた。昨日寝たのが20時だから、7時間は眠れたことになる。
 適当にネット巡回していた。早期覚醒には違いないのだが、うんぽいちゃんが起きていたことには驚いた。
 ポテトスープ作って飲んでいた。寒いからそうでもしないとやっていけないのだ。まあソルボンヌ大学のマーニャさんとこの研究施設ほどの酷さではないけれど。一度はあの落描きを見るべきだ、特に物理erなら。
 リーゼさんとかエルヴィンとかボルツマンとかのお墓もそうだけれどね。ヨーロッパステキお墓参り巡りとかないかなあ。物理学者限定で、女の子限定で。
 雨がやんでいた。今日なら秋葉原まで行けるかもしれない。
 適当に腎盂を書いていた。第1章其の1が全部終わったので、PSに上げておいた。読み物置き場の腎盂のところが少しずつ増えていることに気付いていただけただろうか。
 そういえば物理学科の子がお気に入り登録とかしてくれてたなあ、と思い出した。結局誰だか知らないのだけれど、でも追レポのことを教えてくれたりとなにかとありがたい存在であることには違いない。
 pixivにヌエさんがハロウィンの絵を上げていた。ヌエさんがまともに龍可のサニーピクシーコス絵を描いていたことに驚いた。鬼柳とクロウがかっこよくて、蟹とブルーノとシェリーさんがギャグだった。アキさんは相変わらず、ではなく、夜薔薇の騎士の恰好だった。全体的に本当に恰好いいのだが、下の方でプラシドとルチアーノとホセが呆れていたのが笑えた。やっぱりヌエさんは龍可の絵を描く段階で相当興奮していたらしい。龍亞のモバホンは手抜きだと思う。
 コミケにからあげ屋さんとVOK41とコーポさんが出すらしいけれど、安倍川さんはどうなってるんだろうな。あの人はあまりそうカツカツ仕事するタイプではないのでまったりやってくれたらいいのだけれど。逆に火鳥さんはやりすぎだ。あれで季刊誌にも連載させていて、且つ2つのサークルで漫画をばんばん描いている。
 そういえばバーローでは、「妙だな……」という科白が確かに多い。「みょんだな」って一回くらい言ってほしいよな。
 腎盂で性描写を何処まで書くかが問題だった。態々、
『パクリコンとランカシーレは其の侭互いに求め合い、愛し合うことでお互いの絆を確かめ合った』
と書く必要ははっきり言って無いし、需要も無いのだけれど、でもこう書くことで一連の一日に終止符が打たれるのだ、ということが伝わったら嬉しい。
 眠いので寝ていた。さらば、オーズ、ハトプリ、りるぷり。
 10時すぎに起きた。
 雨はやんでいる侭だ。よし、喰いに行こう。
 中央学食で味わいSを喰らった。が、量が多い。非常に胃もたれするし、味噌汁も残したのだけれど、駄目だった。
 セキネで牛乳2リットルと、薬屋で水4リットル買ってきた。
 パクリコン垢のほうに、アンチ猫派派(←正しい表記なので)なことと、あと物理学科のことを書いた。こんなことならもっと飲み会とかに行ってもよかったかもなあ。
 昔の日記、主に、だいしょうのおもさ、とか、けいきょくのげんじつ、辺りを読んでいると、これらもPSに残すべきではないか、と思えた。なので今度、SS集みたいな感じで残そう。なんというか、「パクリコン君の今までで、知っておくべき事実」みたいな感じで。
 QQは比較的そういうのは無い上、ピチせかと歴史が違うからあまり意味はないのだが、しかし0にいたっては、タイトルを「パクリコンさんとランカシーレさんの22日間の物語」としても別に不都合は無い。「愛欲の22日」でも、「愛と涙とセックスと」でもかまわない。それだけにタイトルが中身を反映していないんだ。
 おなかいっぱいなので、秋葉原はあとにしよう。
 かといって、一回しか読んでいない死の秘宝の誤訳サイト見るのもなあ。勉強にはなるけれど。

 勉強になった。
 秋葉原に行ってきた。
 ホビステが新しくなっていたけれど、内容は変わっていなかった。キムチのDREVが未だ出ていなかったので、なにを血迷ったか、コアキデビルとLODTを1パック買った。ジャスティスワールドが当たった。うわあ……いらねえ……。
 ラジ館のイエサブに行って、コアキデビルの補完とエンジェルリフト3を買う。蟹デッキに入れよう。主にチューサポを蘇生させたい。他はニトロシンクロンとかターボシンクロンとかかなあ。いずれにしても機械複製術が割りと生きる。
 あ、サイドラ買えばよかった。50円なのに。
 帰る。腎盂のことばっかり考えていた。ランちゃんのキャラだけはあまり崩したくないなあ。まあ……腎盂が最初の登場で、そいで終わるけれど。

 ランちゃん誘拐とか在り来たりすぎて萎える。
 2周走ってきた。なんとかなった。
 シャワーを浴びて体重を測ったら、77.4キログラムだった。マイナス400グラムである。
 適当にリア垢とパクリコン垢で日記書いて、ネタ帳(只のコピー用紙、しかも計算式がいっぱい並んでいる)にネタを書き込んで、今日はもうばてた。いっぱい打ちすぎた。18ページは書いたぞ、でも一時期の35000字には負けるんだよなあ。地の文なんて嫌い。誰が喋っているか分かるのだったら書く必要ないじゃん。
 だから私は切羽詰ったシーンではなるべく地の文を除いている。折角のテンポのいい言い合いを崩したくないのだ。
 ああ、なんかキーボードが重いけれど、其の所為か腰が痛い。
 今日のメッセ。
名前:パクリコン@ライ吉の運命
サブタイ:なんか似たような状況の奴等が多くて萎える。
 でも第1次虐殺ブームは終わりなので、安心してね。次の虐殺は第2節の始まり辺り。


 ピチロの世界

 人生、宇宙、すべての答え

 第1章-5

 茅ヶ崎市消防署のセキュリティジムでは、ジムにやって来た隊員のピチロたちがT7の話を聞いていた。
「じゃあ、横浜国立大学に今日ブチョーさんが行ってるのか」
「ああ」
 緑色の鎧甲に身を包んだ、大きなピチロがバナールに尋ねていた。
「事件なのか事故なのかよく知らないんだけれど、どっちなの?」
「事故、ということにはなっている。けれど如何せん研究対象が機密事項だから、おおっぴらに変なことかけないんだよ」
「そうかー」
 小さめだが重装備のピチロがタッツーと喋っていた。
「バジル」
「んあ? なんだよ、アル」
 緑色の鎧甲もピチロが、重装備のピチロに話しかけた。
「バジルは其の件の事件だか事故だかについては知ってたのか?」
「新聞読むからね、僕は。載ってたよ」
「そうか」
 アルはバジルの意外な豆さにやや驚いた。
「グリース何処行った?」
「グリースなら向こうでパンチャーとかと話してる。多分、大したことは喋ってない」
「だろうな」
 タッツーが案外醒めたことを言った。
 すると浮遊したり飛行したりしながらジム内を飛び回っている奴等が邪魔してきた。
「だーぱぱぱぱぱ!」
「アンチャンアンチャン!」
「……ティーノとミートには此の現実を受け止めるだけの力量が無いな……」
 アルは腰に差していた槍を引き抜き、ミートに向かって投げつけた。ミートの後頭部にガツンと当たってミートは地面に叩きつけられた。
「なにすんだぜアンチャン!」
「いや、なんのことかな……」
 一方グリースという、緑と赤の鎧甲で背の高いピチロは、パンチャーとゴンフにフォースについて話していた。
「じゃあパンチャーもゴンフとチフマみたいにビタフォースの変換量が落ちてきたのか」
「ピチュ」
「そうなんだよ。あとチフマとジャスティンもそうなんだ。なんとかならないかなあ」
「うーん、むずいな。もとよりお前等は此処の星の生態系とは一線を画したところにいるから……正直お前等の星の住民に訊いて治すしかないんじゃないかなあ」
「住民に訊いて治す……か」
「でもそんなことしてたらセキュリティジムは終わるぜ?」
「チフマ、気持ちは分かるけれど、フォースの変換は生命の根幹となるシステムだ。ピチロは元来生命力の源としてのベータフォースを活動エネルギーのビタフォースに変換しないといきていけない。其れが途絶えたら……分かるよな?」
「分かるけどよう……」
 チフマは不満そうな声を上げた。
「科学力はお前等の星の方が上なんだ。だから俺等地球人に頼るより、俺は星に……その……帰って治したほうが……いいんじゃないかとな……」
「グリース……」
 グリースが何を言いたいかを察してパンチャーもゴンフもチフマも其れ以上何も口に出せなかった。
「まあ此の件はブチョーさんにも相談して、ブチョーさんの事件のほうが一段落したら何か対策を練ってもらおう。……あんま大声では言えないが、お前等の宇宙船は秘密裏に修理して直してある。いつでも帰れるって寸法ではあるんだ。まあ、お前等次第、というところもあるよな」
 グリースの意図はパンチャーたちの言いづらいところを突いているものだった。

 横浜国立大学付近の病院の廊下で、大原とライ吉は長いすに座って待っていた。緋乱寺家の親戚の人たちが教授に別れを言いに来ているので、暫くの間外で待つよう言われたのだ。
「ライ吉、本当に気の毒なことだったな……。ちゃんと此の件は捜査して、はっきりと原因を突き止める。そしてあの送り主が如何いう奴なのかも明るみに出さねばなるまい」
「……」
 ライ吉は黙りこくっていた。
「ライ吉、お前が緋乱寺教授の下からうちの消防署に来てくれたときは、本当に嬉しかったものだ。パクリコンもネズ吉もそうだが、何かしら社会の中で行きづらい子等のための救援となり、そして社会に出られる為の足がかりとなればと思ったのだが、お前たちは……」
「ブチョーさん。もういいですよ」
 ライ吉は下を向いたまま口を開いた。
「知ったような口きかれるよりかは、黙っていてくれたほうがいいです」
「そうか……だがパクリコンもそうだが、お前は……」
「だから黙っててくれって言ってるじゃないですか!」
 ライ吉が叫んだ。
「パクリコンんところと俺のところと、全然状況も環境も違うんですよ! パクリコンのとこは確かに全員死んだらしいですけれど、パクリコンはあの人たちを家族だと思っていなかった! 事実血すらつながっていない人たちが殆どだ! だけど俺には、父さんが、緋乱寺教授が、育ててくれたことが、唯一の生き甲斐だったんだ! 父さんが俺にくれたものは掛け替えの無いことばかりだ! もっと父さんから、世の中のことを、俺の知りたいことを、全てを、教えてもらったかったのに!」
「……だがお前にはまだ仲間が……」
「仲間は居るけれど! あいつ等も居てくれるけれど! 俺の心は誰も分かっちゃくれないんだ! 俺に残されたものは孤独しかないんだ! パクリコンにはランさんが居るけれど、俺には誰も居ないんだ! えいみーは死んだんだ! そして父さんが、今度は死んだんだ! 俺に何ができた!? 俺が如何することができた!? なにもできなかった! 俺はただ、えいみーや父さんが居なくなるのを、指をくわえて見ているしかなかったんだ! くそっ! なんで……なんで俺ばっかりなんだよ……! 俺は、ピチロとして、生き物として、なんなんだよ……! 死にたいよ…………!」
 そう言うライ吉に、大原は其れ以上何も言うことはできなかった。

 緋乱寺教授の葬式が明日執り行われることが決まり、大原とライ吉は茅ヶ崎に一旦帰ることとなった。
 ライ吉の言ったことを大原は反芻していた。ライ吉もパクリコン同様混血で粗孤児状態の子ではあったが、其れ以上に他人への接しかたが似ていた。何処か他人であることを拭えず、心の底では絆を欲しているけれども其れを表になかなか出せず、そして擬似的な家族や恋人とのつながりを大事にした。
 ライ吉が言ったえいみーというのは、彼が数年前まで付き合っていた恋人の名だった。本名を桃井詠美という、ピチロである。別れたきっかけは単純なことで、ライ吉と詠美の間には子供ができえないことを知った詠美が別れを切り出したことから始まった。ライ吉はなにも反論できずに其の侭訣別を認めたが、其れでも詠美に対する愛は消えていなかった。
 がしかし、去年のこと、詠美は脳に悪性腫瘍を患い僅か22歳で命を落とした。ライ吉が其のことを知ったのは詠美が死んで数ヶ月経ったときのことだった。
 ライ吉は詠美の死からなかなか立ち直れず、海岸分署に勤務しているときも常に暗い影を漂わせていた。やけっぱちになったり悲観的になったりと情緒不安定な時期が長かったが、やっと元に戻った、と思われたのが二、三ヶ月前だった。
 そして其の上での緋乱寺教授の死である。ライ吉には此れ以上無いくらいの精神的なダメージが感じられた。
 大原は、ライ吉が今度立ち直るまでにどれくらいかかるものかと心配したが、ライ吉の心の中には既に、もう立ち直る必要性を微塵も残していなかった。
 ライ吉の愛する人たちは、もう此の世に居ないのだから。

 大原とライ吉が消防署に戻り、ライ吉の為にと緋乱寺教授から送られてきたデータを大原はライ吉に見せた。其処には様々なスペクトル解析図や電子顕微鏡での撮影結果が残されてあった。
 ライ吉にはどうしても信じられないことが一つだけあった。緋乱寺教授がこんな簡単なミスを犯すわけがない、ということだ。たかが試験管一つを高温蒸気に当てるだけで、何故あのような事態が出来したのか、何故緋乱寺教授が死ぬこととなったのか。
 ライ吉が結論付けたことは、此れは事故死ではなく殺害死である、ということであった。
 あの試験管を送ってきた誰かが、必ずや調べられるときに用いられる手段を読んで其れを失敗させるような細工を施したに違いない。
 ライ吉がそう考えるまでにそうはかからなかった。
「俺が……そいつを……!」
 ライ吉が最初で最後に人を憎んだのは此のときだったのであろう。
 そしてライ吉は、或る動画を見ていて発見した。此のウィルスが毒素で他の微生物を攻撃するとき、殆ど必ずと言っていいほど、微生物の細胞膜内の或る器官から死滅させていることに気付いたのだ。
 ライ吉は目を見張った。
 他の動画を再生させてみても、其の器官がある微生物に対しては強力な毒素で殺戮を繰り返すウィルスであったが、其の器官を持たない微生物に対しては、非常に緩やかなスピードでしか毒素の効果を与えられないのであった。ライ吉は急いで其の器官を拡大し、其れが何のものであるのかを同定してもらうことにした。
 生物学に詳しい人たちが議論を重ねた結果、此れは其の器官の出すエネルギーに指向性を持つようなウィルスであることが判明した。
 そして其の器官が出すエネルギーは通常ビタフォースと呼ばれ、其の器官はピチロにだけ特有なベータフォース―ビタフォースの交換作用を持つものであった。
 つまり――此のウィルスはピチロにだけ強力な即死的毒性を持つものであることが分かったのであった。

 交代の時間が終わった頃に、セキュリティジムの大原のところに海岸分署のネズ吉とギラとレア吉がやって来た。
「ブチョーさん居ます?」
「奥の事務室に居るぜ」
 そうバナールから教えられ、三人は事務室に向かった。
 事務室に入ると、大原がなにやら書類仕事をしていたようだった。
「ブチョーさん、今いいですか?」
「ああ、構わん。何の用だ?」
 大原は書類を全て机の引き出しに仕舞ってから答えた。
「ライ吉のこととパクリコンのことなんですけれど……」
「あまりプライバシーを害するようなことは言えないが、何だ?」
 レア吉が三人を代表して言った。
「じゃあライ吉のほうから。緋乱寺教授が亡くなった、というのは事故なんですか? 事件なんですか?」
「いきなり難しいことを言うなあ、お前等は」
 大原はちょっと考えてから言った。
「あくまでライ吉の意見だが、事件だ。其れも狙って殺されたかのような事件である可能性が高い」
「なんでですか?」
「機密事項だからあまり言えたことではないが……あー、そうだな、ネズ吉の目の前にチーズを態と置いておく、ネズ吉が食べる、がしかし中には毒が入っていて……というようなパターンだ」
「ネズ吉ならともかく、緋乱寺教授がそんなのに引っかかるんですかね」
「逆だな。緋乱寺教授だからこそ引っかかった、というところが大きいと思う。其処が犯人の、まあ犯人なるものが居れば、の話だが、そいつが狙っていたところだろうな」
 大原の話にレア吉は納得しかねるところがあったが、其れ以上追及しても答えてくれないだろうと思って、話題を切り替えた。
「じゃあパクリコンのほうですけれど……パクリコンの家族が死んだのも、事故ですか? 事件ですか?」
「ん、何故そんなことを思ったのだ?」
「いえ、だって……真昼間にガードレールぶち破って谷底に車ごと転落ってありえるのかなあ、って思いまして」
「ありえるだろう。どんな人にでもミスはある」
 大原は重苦しく言った。
「でも緋乱寺教授のも、仕組まれたミスなんですよね? だったらパクリコンんとこも……」
「お前さんが何を言いたいかは分かった。だが此の二つの関連性は殆どと言っていいほど無い。限りなくゼロに近い上、どちらもまだ検証段階だ。全てが分かったらお前たちにも話すが……セキュリティジムが一から十まで把握し切れているわけでもないのだ。本来なら警察の範疇下だからな」
「そう……ですよね」
 レア吉はネズ吉とギラを見た。
「じゃあ、まあ、ありがとうございました」
「納得がいってくれればいいがな」
 三人は辞去して事務室から出た。

 三人がセキュリティジムを出て寮に戻ろうとしたときのことだった。
「あれ、ライ吉、此処に居たのか?」
「ん、ああ」
 レア吉がライ吉を発見すると、ライ吉は此方に歩み寄ってきた。
「葬儀は明日だ。今は父さんの親戚だかなんかだかがいっぱい来ていて、俺の出る幕じゃなかった。なんというか……どうしようもないというかな」
「そうか。ライ吉の父上だったもんな、ライ吉がいろいろと憧れているのも知っているし、本当に……最悪な事件だった」
 レア吉の其の言葉にライ吉は反応した。
「事件って……お前等もブチョーさんに訊きに来たのかよ」
「そう、だな。半分くらいはそうだ」
「半分って如何いう意味だよ」
「いや、もう半分はパクリコンの家族の事で訊きに来ていた。あまり有力な情報は得られなかったけれど、少なくとも緋乱寺教授のほうが事件性は高いって事だけは……」
「高い、どころじゃないな」
 ライ吉が静かに言った。
「あれは、完全に、事件だ。其れも一人や二人を殺害するだけが目的じゃない」
「え? でも、ブチョーさんは、あれは緋乱寺教授だからこそ引っかかったっていうことで……」
「其れはあの事件だけに限った話だ。お前等はもともと父さんがセキュリティジムの嘱託として何を調べさせられていたか知ってるか?」
「いや、其れはよく知らない」
「誰にも言うなよ。……或る人物からセキュリティジムに一本の試験管が届いたんだよ。其の中にウィルスが入っていて、其れが如何いう性質なのかを調べさせられていたんだ。研究の結果、其のウィルスが非常に強い毒性を持っていることが分かった。其れだけじゃない、其のウィルスが主に攻撃対象にしているのは――」
 ライ吉は荒い息を静めながら続けた。
「ニンゲン以外の、俺たちピチロ全般だ。あのウィルスはピチロの中のベータフォース変換器官を攻撃するようになっている。しかも真空、高熱、低温でも死なず、空気感染する可能性が非常に高い。あんなものが世界中にばらまかれたら、世界はお終いだ。ピチロが全員……絶滅する」
 ライ吉の言葉にネズ吉もギラもレア吉も何も言えなかった。

 つづいて、
 第1節-6

 海老名市ではパクリコンがランカシーレとレビアに仕事作業風景を見せていた。
「其処、其のアングルだと口唇が映らない」
「あ、そうか」
「あとこっちのコマが狭いです。そっちのを削りましょう」
「あ、うん」
 みっちりパクリコンが指導されていた。
「君等が居てくれてなんか漫画の人気が上がってるみたいなんだ。いやあ、らくちんだなあ。適当に描いたのを見せるだけで修正箇所教えてくれるなんてさ」
「一人じゃできないもんねー」
「でしょうね。あ、此処のランカシーレさんはやや表情を崩しましょう」
「やだよ」
「やだじゃないです。崩してください」
「なんでランちゃんは此の子のことになると本当に……」
「だって私に似ていないのですから」
「似てるよ、ねえ、レビアちゃん?」
「どうだかなあ。ランちゃんのは似てるけれど、あたしに相当する子がなんか、可愛すぎる。パクリコンさんはあたしとランちゃんのどっちが好きなの?」
「なんで其の質問に発展するんだよ。答え聞くまでもなくわかってるくせに」
「わからないなー。パクリコンさんってちっちゃい子好きそうだから」
「な、何を根拠に……」
「だって漫画の中のランカシーレさん、実際のランちゃんより身長低いよ」
「え? そうかなあ」
「3ページ前に戻って。其処で抱き合ってる図があるんだけれど、ほら、実際ランちゃんと抱き合ってみてよ」
「うん……」
 パクリコンは立ち上がって、ランカシーレを抱きしめた。
「ちょっと待っててね」
 レビアは其処等辺に置かれてあった漫画の単行本を手に取り、ランカシーレの頭の上に置いた。
「此れくらい」
 レビアは単行本の底から4センチくらいのところに人差し指をさしていた。
「大体此れくらいしか身長差が無い筈なのに、こっちの劇中では、大体10センチくらいは身長差あるよね」
「ほんとですね。パクリコンさん、私の身長がそこそこあることに対してそういうふうに……」
「思ってない! そんなことは決して思っていない! 君の今の慎重の方が好きだ! 漫画で描くときは、やっぱりヒロインはちっこめに描くべきだ、っていう意見を以前聞いたからそうしただけで!」
「でも他の女の子キャラもちっこいんだよねー」
 レビアが鋭い指摘をした。
「粗レギュラーキャラなのにこっちの人なんか偉いちびっこだしさ、こりゃ取り合いになるね」
「ならないよ! 此れ只の小学生向け漫画だよ!?」
「最近の小学生は耳年増ですからね」
「君も嫌な単語知ってるなあ。此の漫画を読んで、小学生がそもそもそういう作者の嗜好とか其処まで考えないよ」
「小学生向けなら、なんでセックスシーンが入ってるの?」
「あ……いや……」
 パクリコンは答えられなかった。

 茅ヶ崎市の海岸分署にライ吉が戻ってきたかと思ったら、今度は地下室にこもりっきりになった。此れは今に始まったことではないが、おやつの時間になってもライ吉が出てこないことには消防署の皆が訝しんだ。
 ライ吉は地下の研究室で次亜塩素酸カルシウムについて調べていた。次亜塩素酸カルシウムを固めたものはプールのカルキとして有名だろう。だがしかし、確かに消毒殺菌作用はあるものの、其れが具体的にウィルスに対して如何作用した結果そうなるのかが分からなかった。
 ライ吉はデジカメで撮られた動画を何度も再生して唸った。確かに他の化学物質ではウィルスの核酸を破壊することができない。ウィルスを守っている蛋白質の変形した壁が其れを許さないのだ。従って唯一ウィルスの蛋白質の壁を壊す、正確を期すならば、壁に対して強力な酸化作用で溶かすことで核酸の破壊を可能にする次亜塩素酸カルシウムは、どうして此れ唯一なのか、という疑問を払拭させるほど簡単な問題を呈していなかった。ライ吉には他の化合物で試す機会が無かったが、緋乱寺教授からのデータに拠ると、此の強固な蛋白質の壁を破壊するに有効で、且つ空気感染する此のウィルスを止めることができるのは、扱いが簡単で比較的容易に手に入る次亜塩素酸カルシウムしかないのかもしれない。仮に濃硫酸や王水を固形化、粉末化できるのならば同じく有効な手段となりえただろう。だが人類の科学力は其処まで進歩していないのだ。
「次亜塩素酸カルシウムの臨界濃度は幾らなんだ……どれくらいの濃度で死ぬんだこいつは……!?」
 其のデータについては何も緋乱寺教授は教えてくれなかった。ただ唯一、研究室内に散布された量だけが手がかりだった。少なくともあれだけの量を散布すれば、ウィルスは死滅する、ということは分かっている。しかし緋乱寺教授は死亡した。ということは、ウィルスの出す毒素自体の解毒作用にはならない、ということだ。此れは要するに一次的な解決にしかならず、ウィルス自体の二次的な影響を防ぐことができない。解毒薬を開発する前に研究員達が皆死んでしまったため、誰も其のヒントを得ることができない。
 ライ吉の頭の中には、今や此のウィルスを如何にして解毒化するか、そしてウィルスから一般ピチロを守れるか、ということしかなかった。
「ピチロに効く、ってことは……ベータフォース変換器官だから……あ! 俺等だけじゃないんだ!」
 ライ吉は急いで携帯電話を取り出し、電話をかけた。因みに地下室だが電波は届くようにしてある。

 パクリコンがランカシーレとレビアに散々身長の事で文句を言われ続けたところで、パクリコンの携帯電話が鳴った。チルノのパーフェクトさんすう教室のMIDIだ。此のMIDIはパクリコンが作ったもので、文字通り世界に一つしかない。しかし、幾らパクリコンが、「紛らわしいから」と拒んでも、どうしてもとランカシーレが言うので、ランカシーレの携帯電話にも同じものが入っている。
「ああもう、電話鳴ってるから出るね。……ライ吉? もしもし?」
「ああ、パクリコンか、よかった。伝えたいことがある。先ず……先ず何から言えばいいんだ、そうだな……今朝の新聞は見たか?」
「いや、うち、新聞を取ってないからわかんない。ネット上のニュースだけしか見てないから……」
「ああ、まあパクリコンだから率直に話す。昨日の晩、俺の父さんが実験に、如何いうわけか失敗して、死亡した」
「なっ……緋乱寺教授が、か?」
「そうだ。なんというか、パクリコンも似たような感じだから大して気兼ねせずに言えるのがいいな。お前なら形だけの慰めなんて言わないしな」
「いや、まあ俺んところは大したことないけれど……お前はさあ」
「パクリコンとこはうちの4倍は死んだんだ。差し引きプラマイゼロで考えてくれ、いいな。じゃあ本題に入る」
 ライ吉は一呼吸を入れた。
「父さんが研究していたのは、或るウィルスについてだ。其れはセキュリティジムに匿名で送られてきた謎のウィルスだったが、非常に強い毒性を持つことが分かった。しかも其のウィルスは、ピチロの持つベータフォース変換器官に対し、途轍もない毒性を発揮する。だが一方ニンゲンには殆ど毒性は無い。分かるな?」
「ああ、なるほど、新型の生物兵器、というわけか」
「そういうこと。で、あんま此のことは人には言わないでほしいんだが、俺等K17だけ、外部で且つ知っていることになっている。あとはセキュリティジムの機密事項だ。だが研究データはもらってあるから、俺が此れから父さんの研究を引き継いで此のウィルスに対して如何すればいいかはっきりさせる」
「でも……ウィルス自体はあるのか?」
「無い。無いが、父さんはいろいろな実験結果を残してくれた。其れを手がかりに、若し、万が一だが、其のウィルスが神奈川中に散布されてもなんとかなるように、俺は最善を尽くす。つまり……」
「ピチロが絶滅するかどうか、っていう瀬戸際なわけか」
「そういうこと」
 ライ吉の声が落ち着いてきた。
「俺次第なことは否めないが其れはしょうがない。後でライ君も呼んで手伝わせるが、此れは俺の義務だ。俺がやらなきゃならない。まあ一般人に此のことを知らせて大混乱が起きてもしょうがないからパクリコンは人に言わないように……」
「あー、其の子となんだけれど……」
 パクリコンはちらっと後ろを見た。
「ランちゃんとレビアちゃんが此の事聞いてるんだ。まあ、二人くらいならいいよな?」
「……。まあいい、嫁さんと妹さんならパクリコンの家族みたいなものだ。彼女等もピチロとの混血だろ? だから……一応何気なくベータフォース変換器官があるのかどうかくらいは病院ではっきりさせておいたほうがいいかもしれん」
「そうか、それなら……」
「ちょっとパクリコンさん、代わってください!」
「な、なに?」
「いいから!」
「あ、うん。ライ吉、ちょっとランちゃんに代わるね?」
「おう」
 ライ吉はそういうどたばたには馴れていた。
「ライ吉さん、私とパクリコンさんにはベータフォース変換器官があります! レビアちゃんは……」
「あるよ」
「あるそうです! 其のウィルスについては如何転ぶか分からないわけですよね? でも、いずれは判明する未来なわけですよね!?」
「ああ、まあ……あっ!」
「そうです! 未来テレビがありますよね!? 其れでウィルスをどのように解毒化できるのか、どのようにして散布を防ぐことができるのか、そしてウィルスの送り主が如何いう手段に出て、どういう結果になるのか、ピチロが全滅するのかを確認してください! 今すぐに!」
「おう! なんかランさんって結構頭いいよな。全然気付かなかったよ。タイムテレビは今調整中で画質が悪いが、見えんわけではない、ちょっと設定をあわせて……よし、映った!」
「どうです!?」
 ライ吉の声が聞こえなくなった。
「ライ吉さん!?」
「……いや、ピチロは、絶滅して、いない」
「よかったぁー」
「なんだ、なんとかなるんだなあ」
「じゃああとは方法を先取りして片付けるだけだね」
「じゃあライ吉さん、……ライ吉さん?」
「いや、なんかな、変なんだ。ピチロは居るんだが……此処が俺の研究室で……あれ、なんでニンゲンが居ないんだ?」
「え?」
 海老名市の三人は其の一言に固まった。
「ニンゲン、が、居ない?」
「どういうことです!?」
「分からん。ピチロはぴんぴんしているんだが、セキュを覗いても道端を見てみても、ニンゲンが人っ子一人居ない。なあ、ニンゲンの存在比って1~2割だよな?」
「茅ヶ崎では12.6%だね」
「さんくす。しかし100人くらい見てみたが、一人も居ない……どういうことだ?」
「ニンゲンが確実に居る場所を探してみました!?」
「ああ、消防署内部とか署長とか……なんで居ないんだ? 代わりに別の奴が椅子に座ってて……」
「なあ、ライ吉、もう一回訊くが、其のウィルスは、本当にニンゲンには無毒なんだよな?」
「パクリコン、完全に無毒なウィルスってのはゼロだ。ウィルスっていうのは自分の核酸と生物への侵入手段を持っている非生物の一種で、生き物を媒体利用し増えるしか能の無いものなんだ。だから……」
「いや、そういう意味じゃない。ニンゲン特有の器官に攻撃することはない、っていう証拠はあるのか?」
「其れは……パクリコン、ニンゲン特有の器官って殆どないんだよ。ピチロはフォースを使って生きている特殊な生物だが、ニンゲンは只の猿の仲間だ。強いて言うなら、ニンゲンは最初に二足歩行をし始めて、そいで手が器用で、脳がでかくて、此の辺りは俺等と同じなんだ、分かるよな、他の二人も?」
「はい」
「うん」
「あと、此れは単なる仮説でしかないが、ニンゲンにしか無い器官が一個だけ脳にある、ということになっている。大脳新皮質の中に埋もれているもので、過去を振り返る為に作られたと言われている謎の器官だ。其のおかげでニンゲンは歴史を作り、過去を顧みて、遺産を大事にする、といったことを本能的に行うことができる。俺等はそういうのが無くて、単に頭で考えるから歴史書を紐解こうということになって、此の器官は純粋なニンゲンにしか無くて、パクリコンもランさんもレビアさんも持っていない。混血になった時点で最初に切り捨てられる器官なんだ、其れくらいに意味が無いと思われていたんだが……」
「だったらウィルスに其の器官を接近させてみて如何振舞うのかを……」
「パクリコン、もうウィルスはないんだ。其れに父さんが残したデータはウィルス対微生物の実験ばかりで、ニンゲン特有の器官なんてものは研究対象じゃなかった。もう調べようがないんだ。其れに、ニンゲンにだけ作用するウィルスなら、何故に父さんは死んだんだ? ピチロに対する解毒薬が見つかり、且つ違うウィルスの散布でもあったのなら話は別だが……ちょっとタイムテレビを少しずつ今から未来にかけて映してみる。何か分かるかもしれん」
「ああ」
 ライ吉の声が一旦止んで、パクリコンもランカシーレもレビアも息を飲んだ。
「駄目だ、未来が不安定になってる」
「不安定?」
「誰かのラプラスの魔が邪魔してるんだ」
「ラプラスの魔って……」
「無限の過去から今までの情報が全て分かっているのならば、未来は全て予言されうる、という、哲学、数学者のラプラスさんの仮説です」
「其のとおり。嫁さん凄いな。だが其の仮説は今は否定的に証明されている。或る偶然ひとつで如何とでも未来は変わるんだ。しょうもないことならいいのだが、例えば、コインを投げて表なら核ミサイルの発射ボタンを押す、とかになると、誰の理性でも止められない、50%で核戦争の未来になるだろ? そういうときにタイムテレビで未来を確定的に映すことができなくなって、そういうのをラプラスの魔が邪魔をする、っていうんだ。だから……例えば俺が解毒薬を開発するかどうかは偶然じゃなくて努力で補える、言ってみれば俺が今、どれだけ実力を出そうとするかだけに依存することだ。だけれど、……此れはどうも其のウィルスの送り主が如何いう未来像を描きたいかを迷ってるな」
「迷ってる……?」
「まあ、要するに、コインを投げて表ならあのウィルスを散布する、裏なら別のウィルスを散布する、みたいな感じだと思う。だが……ウィルスに二種類もあるのなら、なんでそっちをちらつかせないんだ? 何故一種類だけ送ってきたんだ? 解毒されないことにそんなに自信があるのなら、二種類送ってきてもいい筈なんだが……未完成なのか? 其れとも他に協力者か共謀者が居て、そいつが手間取っているのか?」
「ですけれど未来はニンゲンが居ないものですよね? 其れは変わらないのですよね?」
「あ、ああ……確かに。此処等辺の未来は安定して見られる。ということは変わらないんだろうなあ……」
「未来の時間帯によって安定するしないが変わることってあるのか?」
 パクリコンが尋ねた。
「ある。例えば、パクリコンが海老名から茅ヶ崎に来るのに、電車で来るのかタクシーでくるのか徒歩で来るのかは分からない。でも来ることは分かっている。みたいにな。確かに其の手段の部分については部分的に見えないこともあるが、全体として、パクリコンが茅ヶ崎に来るって事実は変わらないだろ?」
「そうか……そういうことなら……」
「ではニンゲンが絶滅した未来に至るまでで何処で画像が不安定になっているのでしょうか!?」
「其れがなあ……今現在から少しずつ未来に向けて流しているんだが……早速今日の夜から画像が不安定だなあ……どうなってんだ……今晩にもう此のウィルスの解毒薬が完成して、そいで別のウィルスに切り替えられるのか?」
「ですがニンゲンが死滅するということは分かっているのですよね? でしたらどうして不安定な画像になるのでしょう?」
「確かにそうだが……まあ……そうだな……なんでだ……ニンゲンを死滅させるのに複数の手段があることも考えられるが……」
「あれ? ニンゲンが全員死ぬんだよね?」
「なにを今更言ってるんだ、パクリコン」
「ユカリさんは……?」
 パクリコンの一言に、ランカシーレとレビアは血の気が引いた。
「確かめてくる!」
「私も参ります!」
「すまん、ライ吉、ちょっと一旦切る! 後でかけるかもしれん! 俺も気になって!」
「ああ、気持ちは分かる、行ってこい」
「おう」

 レビアが最初にユカリの家に辿り着いて、ドアを開けようとした。がしかし鍵がかかっている。
「どっか行ったんだ……」
「居ません!?」
「出かけてるみたい!」
「なんだよ、ユカリさん普段家でごろごろしてるだけなのに……」
「其処のコンビニかもしれません!」
「行こう!」
「おう!」
 三人は路地を走って、表のとおりに面したコンビニに駆け込んだ。
「ぜい、はあ、居る!?」
「居ない!」
「くそ、デートかもしれん……」
「其れは無いと思われますけれど……」
「マルイファミリーかビナウォークかも!」
「其れだ!」
 三人は駅前のマルイファミリーに先ず向かい、手当たり次第に店内を走り回りながらユカリの名を呼んだ。
「迷子になった母親を探してるみたいだよなほんと!」
「居ました?」
「居ない、駄目ね、ビナウォークのほうかも」
「なら……行こう」
 三人はビナウォークの方へと走り出した。
「あ、居た!」
「ユカリさん!」
 見るとビナウォークから口笛を吹きながら買い物袋片手に自動ドアから出てくるユカリの姿があった。
「あら、どうしたの三人とも、汗だくで」
「あの、ええっと、……言っていいよな?」
「言うしかないでしょ!?」
「うん。あの、ユカリさん、落ち着いて聞いてください、近々……ピチロではなく純粋なニンゲンだけを殺戮することを目的とした事件が発生するかもしれなくて、そして、だから、ユカリさんみたいなニンゲンの人が危ない状況になって……」
「ん? ねえ、其れは、純粋なニンゲンだけ、が対象なの?」
「そうです! ですからユカリさんのように純粋なニンゲンの方が……」
「ちょっと待ちなさいよ。私がいつ純粋なニンゲンだって言ったのよ」
「へ?」
 其の言葉にパクリコンもランカシーレもレビアも、呼吸をすることすら忘れて立ち尽くした。
「言う機会が無かったから言うけれど、私、12.5%はピチロの血が流れているのよ」
「証拠は!?」
「血に証拠なんて無いけれど、そうねえ……耳は普通だし、尻尾もないけれど……でも一箇所だけあるわ」
「見せてください!」
「此処じゃ駄目よ。ちょっとあれなところで……」
「じゃあ其処の公衆トイレで見せてください!」
「パクリコンさん、パクリコンさんがユカリさんにそう言っていると、なんか違う目的みたい」
「もうこの際如何だっていいだろ!?」
「まあ、あなたたちがなにをそんなに慌てているのか分からないけれど、……いいわ。そんなに言うなら見せてあげる」
 ユカリは公衆トイレの方へと歩いていった。

 パクリコンだけ公衆トイレの前に立って、まだかまだかといらいらしていた。一日千秋の思いで待っていると、やがて女子トイレのほうから三人が出てくる気配がした。
「如何だった!?」
 ランカシーレはパクリコンに抱きついた。
「ユカリさん、本当にピチロとの混血の人でした!」
「ほんと!?」
「すごいよ! だって……いや、言わないけれど、兎に角本当にピチロとの混血だった!」
「で、なにが如何違ってたから分かったの!?」
 其のパクリコンの問いに、ランカシーレとレビアは口を開けた侭目を合わせ、そして言い訳のように、
「いえ、其れは言えないのですけれど、本当に……」
「信じてよ、ユカリさんはね、ピチロの証拠があって……」
と言うだけだった。
「なんで俺に教えてくれないの? なんでだよ?」
「……と仰っておりますけれど」
「まあ……パクリコンさんになら……いいわよ、言っても」
「……レビアちゃん、言ってください」
「ランちゃんが言ってよ」
「レビアちゃんのほうがそういうのに詳しいでしょうに」
「そんなわけないじゃん。ランちゃんのほうが……」
「ああもう、姉妹喧嘩するな。君等が教えてくれないなら、俺が直接ユカリさんから聞くから。はい、耳貸しますから喋ってください」
「じゃあ…………言うわね、……此れ本当に外に漏れてない?」
「漏れてませんよ」
「パクリコンさんがおしっこのこと喋ってるみたい」
「レビアちゃん、そういうこと仰ることじゃないの!」
「…………まあ、いいわね、言うけれど……私、奇形じゃない複乳なのよ……」
「……へ? なんです? その、……あ! 今思い出した! 確かpixivとかで有名なジャンルですよね! 確か……あんな……の……か……」
「そういうこと」
 ランカシーレとレビアもばつの悪そうな表情をしていた。
「まあ、言いにくいだろうなあ。でもまあ、ピチロとの混血でそういう特徴なら、大っぴらに言えないだろうし、まあ、今まで隠してきたのも分かりますよ」
「納得した?」
「はい」
 三人とも声を揃えた。
「でも……そんなことがどうして急に訊きたくなったの? 買い物先まで押しかけてきて……」
「だってユカリさん、いつも家でごろごろしているじゃないですか」
「何よ其の偏見。私だって独身時代長かったのよ?」
「……そうとは思えないよね」
「……しっ!」
「まあ、ユカリさんが射程外なら、よかった……。ひと安心だ。ユカリファミリーに被害者は出ない……」
「ですよね」
「よかったわー」
「ねえ、何の話かちゃんと聞かせてよ?」
「え、あ、はい、まあ……いいよな、此れくらいは。じゃあ帰ったら説明します」
「分かったわ」
 3人は其の侭肩で息をすることを思い出したかのように這う這うの体のような姿で、ユカリに従いて自宅へと戻っていった。
(つづく)

あちこちの人が見つけるんだろうなあ

 9時くらいに起きた。
 朝餉戴いた。饂飩作った。がしかし、流しに饂飩が少量流れ出てしまい、仕方が無いのでもう一度湯掻いて喰らった。きっと大丈夫。
 適当にネット巡回していた。雨が降っているのでホビステを見に行けない。イッテルビウムとドビュッシーも変だよなあ、確かに。
 一人で考えていてもしょうがないが、とりあえず、物を買うときの確率、言い換えれば、買いやすさ、をカノニカル分布で出せると思う。つまり、日本のお金の最小単位(必ずしも1円とは限らない)をtとすると、
 Z=1/(1-exp[-βt])
となり、結果最小単位のN倍の金額のものを買うときには、
 P=exp[-βNt]/(1-exp[-βt])
という確率が得られる。N=0だとしても、必ずしも只だからといってそれしか買わない、というのでは生活が成り立たないのが表現できている。βの中の温度Tは、勢いというか、高い金額の物を買うための衝動のパラメータみたいなものだ。で、1/Pを考えて、此の分布が実際の供給バランスと照らし合わせたときに、1/Pのほうが大きければ希少価値が生じてT→大になる。満足度はT→小のときに大きいと仮定する(無茶して高価なものを衝動買いしても後悔するだろうから)と、1/P>分布のときには満足は得られず、逆のパターンでは満足が得られる。
 それくらいかなあ。
 因みに昨日上げた腎盂での、レビアちゃんとランちゃんが喋った伝承の大部分はウィキ見ながら書いた。
 最初はニンゲンVSピチロだったけれど、やっぱりありきたりすぎたかなあ。ニンゲンが宇宙人と戦う、とか、ニンゲン(の中の一部の民族、国)が他の部族、国を相手に戦う、とか、割と普通だった。只其れが日本の中で違う種の生き物で、ということにはなる。がしかし今現在のピチせかでのニンゲンの存在割合は、ちゃんと今までの登場人物から推測したわけではないが、1割くらいだと思う。そんな1割が如何足掻いても差別できない部分もあるし、逆にニンゲンのほうが多少先に発達していようと、能力や社会的地位でニンゲンが下に来る場合は、差別は別の意味を孕む。
 なので結局は上か下かというそういう一元論に帰着してしまうので、あいまいな混血の子等をテーマにした。そもそも科白の数からして、混血の子等のほうが圧倒的に出番が多い。4人しか居ないのに。
 ニンゲンは排他的な生き物だ、っていうけれど、じゃあ排他するのはニンゲン以外の全てのピチロなのか、ということになる。無論1割の生き物が排他することなどできやしなくて、逆に、
「あいつニンゲンだぜ」
「旧世代の生き物かよ」
とニンゲンが排他される。なのでニンゲンは混血の子等をニンゲンという枠組みから放り出すことで自己満足に浸る。混血の子等はそういうバックグラウンドはあるものの、ピチロであるという矜持も捨ててはいないので、ニンゲンに立ち向かえるだけの実力は持っている。少なくとも社会の中で、「黙っていれば分からない」、「仮令ばれても其れを上回る能力がある」ということで補える。雑種強勢を肯定的に見るのなら、パクリコンとレビアちゃんの潜在能力は通常のニンゲンをはるかに上回り、其れを差別のネタにニンゲンが果たしてできるのかどうかも分からない。
 同じニンゲンでも、ピチロと深く接しているダックDやブチョーなどと、あとニンゲンの中でしか生きてこなかったようなGx団の下っ端(レオルドとかライブルとか)ではピチロに対する見方が違う。いつぞやのSSでも書いたけれど、後者はピチロをケダモノ扱いし見下そうとはする(毎回其れで反論されて終わるけれど)、一方前者はピチロを何の変哲も無い普通の仲間だと、同じ社会の中の奴だと認められる。前者は其れで自己完結した論を持っているからいいものの、後者は、いざ自分がピチロの中に放り込まれると身を守る術が無い。だから差別し排他することでなけなしのプライドを保とうとするが、そうすることの滑稽さを理解できない。独り善がりで苦しい言い訳を重ねても、結局は、「俺はニンゲンだから~」という言葉で尻すぼみに終わる。
 相手がピチロでもなんでも、セックスをしたいほど好きなのならするべきだし、結婚したいと思うのならすればいい。其処で生物的な制約を課せられるかもしれないが、其れはあくまで(そういう相手になるかどうかという)確率の問題であり、個人の義務や責任の対価ではない。
 ニンゲンが、ニンゲンであることのプライドなるものがあるのだとすると、ピチロの各種においても同様のプライドは存在する。だからどっちのほうがどうという比較は難しい上、そういう事自体に意味は無い。
 そういえば昨日pixivに上げた絵の閲覧数が300を超えた。何が原因なのだろうか。

 昼餉戴いた。カレーウドンだ。またかよ……。
 適当に腎盂を書いていた。暇な午後はこうして時間を潰すしかないのか。平安時代の暇な貴族みたいだな。あの頃は一日2食だったらしくて、まあ、パクリコンには、丁度いいかもしれない。
 腎盂で書きたいことが書けた。パクリコン君がちょっとだけニンゲン臭い奴に見えてきた。まあ5割はニンゲンなのだけれど。やっぱりピチせかを書いているのが一番楽しいなあ。いろんな奴等が使えて、いろんな描写ができる。キャラの数の指数関数に描写量の義務が増えるけれど、其れもなんとか調節しながらやっている。
 そういえば、ランちゃん、レビアちゃん、ユカリさん、聖ちゃん以外でパクリコン君のことを「パクリコンさん」と呼ぶ人は誰がいるか、という問いは非常に難しいよな。ノルムくらいしか思いつかない。ネー君はパクさんだし、モナドは呼び捨てだし、そもそもこいつ等とパクリコン君の接点は無い、という設定なんだ。どうしたものかなあ。

 今日のリア垢の方でピチせかの腎盂でやりたいことを書いた。実際腎盂は書いているのだから、嘘にはなっていない。がしかし、ニンゲンの存在比とその他の種の多さについて書き忘れた。まあボイス見てくれれば分かるか。
 ピチロ、って書けないのが悔しい。直ぐにpixivとウィキにヒットするのだ。ウィキは検索で出ないようにできないかなあ。pixivもアホな絵を描くんじゃなかった。まあ最近のピチせか絵ってランちゃんばっかりだからいいけれど、ちょっと前だとなんか変なのがあるんだ。
 あ、でもどれくらいの子等がpixivのアカウントを持っているか、っていうのはまたわかんないよな。
 今まで、自由と正義と愛は描いたけれど、腎盂のテーマは何にしようかなあ。絆は5D’sに取られているしなあ。まあ完成してから考えよう。愛の第二弾でもいいしさ。
 ポケカーのルール変更があったらしい。きずぐすりが+30とか、プラスパワーはバトルポケモンに対してのみ+10とか、サポートカードはすぐトラッシュとかだった。特殊能力、ポケパワー、ポケボディときて、特性、まで増やすのか、面倒くさいなあ。まあLEGENDのわけの分からんカードに比べたらマシかもしれない。
 ポケカーやりたいなあ。

 レオルドなんて典型的なニンゲン様主義な人だと思う。ライブルやサジタルはそういう意識が無いかもしれないけれど、意識せずにピチロの味方ができる人なんて殆ど居ないので、ニンゲン様主義にしておく。セルクタスは……悩むなあ、一応彼はピチロとあまり接さない子ということにしておこう。ジェミニンにはGP6がいるけれど、ジェミニン一人でレオルドやライブルの我侭が止められるとも思わない。レオルドにとってしっぷーは飯代のかかるケツのでかい下僕で、そういう意識がしっぷーにも伝わったのか、IT企業の社長となったしっぷーはレオルドを門番にしようとする。もはや彼等の間にキズナは無い。ホダシならあるけれど。
 あと、しもちゃんがコメントを残してくれた。でも彼はピチせかを知らない、けれど哲学的な観点からの彼の考察はあるのだろう。真摯に受け止めよう。彼が言うには、特に、ピチロの間で育ち成長できるダックDみたいな奴が「ピチロの為に戦って死ぬ」のと、レオルドみたいなのが「自分のくだらないプライドに固執して死ぬ」という「大義名分」のどちらかにしても、「信じるにどれくらい値するかという指標」を主張として出せば、こいつ等が死んだときに其の主張が大きく通される。という部分に興味を持ったそうだ。まあ腎盂の肝というかオチみたいなところだからなあ。
 ちょっといい案思い浮かんだ。主に海老名市でのことで。茅ヶ崎が舞台だったのはいつまでだったのだろうか。

 一日中饂飩と腎盂だけだったなあ。
 今日のメッセ。
名前:パクリコン@トゲ太はぶられ大作戦
サブタイ:奴だけ科白がない。あとドー君どうしよう。
 ドー君の二つ首は変だよなあ。

 ピチロの世界

 人生、宇宙、すべての答え

 第1章―4

 其の日の晩御飯はユカリの家で4人が食べることになった。
 ユカリはパクリコンにとりあえず、お気の毒に、のようなことを言ったが、最早パクリコンは其れが形式的な挨拶にしか聞こえず、何処か他人ごとのような振る舞いで居た。其のことでユカリは尚更心配したものの、パクリコンがいつもと大して変わりない素振りだったのでそういう気遣いは表に出さずに居た。
 レビアがユカリに、今度の大会でパクリコンが神鎧甲で出られることやピチトルが如何いう感じのものなのか、ということを話していた。パクリコンはランカシーレの話を聞いてから、ランカシーレにもなにか重要な使命があるのではないかと思っていたものの、其れが何なのか、何のために役立つのか分からずにいた。
「どうなされました?」
 ランカシーレはパクリコンがちらちら見てくるので、怪訝な顔で尋ねた。
「いや、綺麗だなあと思って」
 パクリコンは適当な答えが見つからないときは決まってこう答えた。
「パクリコンさんの漫画の中の人の方が綺麗じゃないですか?」
「そんなことないよ。見たまんま写して描いているわけだし、言ってみれば著作権法違反なとこだよね」
「どうでしょうね。見たまんまな割には似ていないのですけれど」
「……其れは暗に俺の画力が無い、って言いたいの?」
「逆です。パクリコンさんの画力が現実を捏造しすぎて、元の肉塊がなんか凄くヒロインじみて見えることが可笑しいのですよ」
「誰が肉塊だよ。俺には、そういう風に描いても不自然無いくらいに、君の事が魅力的に映っているんだから」
 ランカシーレは黙ったが、未だ何か言いたそうではあった。
「俺の壁紙も実際の君の写真とかだと、やっぱりこう……」
「写真でいいじゃないですか。どうして絵にする必要があるのでしょうか」
「実際の人の写真だと、なんかずっとこっちを見られてるような気がするんだよ。ほら、写真撮るときってみんなカメラのほうを向くから、どうしてもさあ」
「じゃあカメラ目線ではない写真を今度撮りましょう。其れでよろしいですね?」
「いいよ、いいけれど……なんでそんなにむきになるの?」
「私はむきになどなってはおりません」
「其の態度でそんなこと言っても説得力無いよ。生理近いのなら……いーででででで!」
 パクリコンはランカシーレにテーブル下でつねられた膝をさすった。
「ごめん、言い過ぎた」
「あなたたちさっきから何を喋っているのよ」
 ユカリが複雑な表情で訊いた。
「いえ、別に、睦言の一種です」
 パクリコンは精一杯誤魔化した。
「あ、そういやさ、パクリコンさん、あのことユカリさんに言ってないでしょ」
「え?」
 レビアがふいにパクリコンに言った。
「ほら、さんぜんろっぴゃく……」
「ああ、そうだ。あの、ユカリさん。ちょっとしたことなのですけれど……」
「なに?」
「俺のところに遺産が転がり込むことになりまして、で、ちょっと相続額がでかい、ってランちゃんが言うものでして、ちょっとユカリさんの意見も聞きたいのですけれど」
「いいわよ、どれくらいなの?」
「此れが詳細です」
 パクリコンは二枚の書類をユカリに渡した。
「うん……うん……。そうね、不自然ね」
「え、そうなんですか?」
「此の半分の額なら納得もするわよ。でも……何かしらね。ボーナスと株と先物取引が全部一緒にきてもこんな額になるとも思えないし、パクリコンさんは其の家族が何をやっていたかとか……知らないわよね。まあ……貰っておいていいとは思うわ、だけれどいつなんどき、実はあれの内訳は……って分かる日がくるかもしれない。それだけ憶えておいたらいいと思うわ」
「そうですか」
「あ、無論パクリコンさんに非は無いのよ。二次的なところまで金銭的な繋がりは届かないから」
 ユカリはパクリコンを安心させようと言った。
「でも、パクリコンさん、其の額があったら、ランちゃんとの結婚式の資金は工面できるんじゃ……」
「あ、そう、そうです、そうなんです! だから、ランちゃん、全額俺が出す!」
「え!? 駄目ですよ、パクリコンさんは2割で妥協するって約束をしてくださったじゃないですか」
「あのときとは事情が変わったんだ! 2割じゃなくて10割でもなんとかなるんだし、正直あんなお金持っててもあれだし、さっさと使おう! 式は世界中何処でやってもいいしさ、いやあ助かったなあ!」
「嫌ですよ、せめて私が半分でも出さないと……」
「強情張るな。いつも君には気持ちいい思いさせてもらっているのだから、其のお返しということでさ」
「だってパクリコンさんは……を30分もしてくださるうえ、私の言うこと聞かずに……でおやりになって!」
「其れは趣味だからカウントしない。あとやっぱり、ランちゃんのは自分で稼いだお金だから大事にしておいて、俺のはそう大事じゃないからさ」
「私のも、此処の家にホームステイさせていただいているから浮くわけで、決して自分で稼いだとは言えないのですけれど……」
 そんなやりとりを聞いていたレビアが、ふとパクリコンに言った。
「パクリコンさんって、あれに30分もかけてるの?」
「其処だけ聞かないでよ!」

 パクリコンは夕飯が終わった後、ランカシーレを駅前の外国語教室へと連れて行った。
「確かにああいうのは、一般的な相場と逆かもしれない」
「思いっきり逆ですよ。パクリコンさんにお金が無いことが唯一の弱点でしたのに、あっさり覆されて本当に……」
「弱点は他にもいろいろあるけれど」
「見せてくださいませんじゃないですか」
「せめてあの子の前でかっこ悪いところ見せたくないよ。ってやつ」
「別にパクリコンさんがかっこ悪くても私は構わないのですけれど」
「俺が構うの」
「そうですか」
「あ、其れと、あんなこと言った手前なんだけれど……」
「何でしょう」
「それでもさ、やっぱり式はこじんまりとしたいんだ。だから……お金があると言っても、そんなに規模はでかくしたくなくて……ってのでいいよね?」
 ランカシーレは其れを聞いて軽く笑った。
「分かっておりますって」

 パクリコンがランカシーレを送り届けて、自宅に帰ってきたところでふと思い出した。
「あれ、今月の水道料金の請求書が未だ来てない……」
 自宅の郵便受けを覗いてもやはり何も入っていなかった。
「ユカリさんにしては珍しいけれど……なんで忘れてるんだろ。ちょっと訊いてみるか」
 パクリコンはユカリの家のチャイムを鳴らして、インターホンに出たユカリに尋ねた。
「ユカリさん、今月の水道料金の請求が入っていませんよ? 明日払いますから渡してくださいよ」
「ああ、そのことね、ちょっと待ってて」
 ユカリはインターホンを切って、中でごたごたやっていた。
 暫くしてユカリが玄関に出てきた。
「あのね、別に同情しているとか情けだとかそういうのとは違う、って分かっておいてほしいんだけれど、パクリコンさんもランちゃんも、ここんところ不幸が続いたでしょ? 其れにもうじき二人は結婚するわけだし、もう此れ以上私とパクリコンさんとを他人と他人として付き合うのもどうかと思ったのよ。だから、家族から水道料金取るのって変よね、って思ったから、今月から水道料金払わなくていいわ。ガスと電気は家別だからしょうがないけれど、あと家賃ももう払わなくってもいい、ってことにするし、……ね?」
「え、あ、いや、其の、其れはなんか悪いというか……」
「悪いだなんて。パクリコンさんも分かっているくせに。私の中ではパクリコンさんも私の、大事な、子供なんだから」
「え、はい……」
「私がどうして留学斡旋業やっているかも分かるでしょ? そういう繋がりが、絆が欲しかったのよ。でも其れは私だけじゃない。ランちゃんもレビアちゃんも同じようなものを欲しがっていた。パクリコンさんだって例外じゃないわ。強がっていても、ランちゃんとの愛情やレビアちゃんとのつながりを大切にするし、私が自分で言うのもなんだけれど、私とパクリコンさんも、単なる大家と下宿人の関係じゃないでしょ? パクリコンさんは出会った頃とは違って、ちゃんと私を、ユカリさん、って呼んでくれるし、パクリコンさんも一人称俺で喋ってくれるし、私もパクリコンさんをパクリコンさんって呼べているじゃない」
「そうですけれど……じゃあ俺がユカリさんのことを、母さん、って呼んだりしてもいいんですか?」
「いいわよ」
 ユカリは微笑んで言った。
「ええっと……じゃあ……其の……あのさ、母さん」
「なあに、パクリコン君?」
「俺さ、其の、ずっと、母さんみたいな人が、欲しかったから……だから……ずっと、俺の母さんで居てほしい。俺が此れから、どういうことになろうとも、ずっと一緒に居てくれる、ランちゃんや、レビアちゃんや、あの子等と同じように、母さんが、居てくれることが、うれ、しくて、だから……」
「うん……うん」
 ユカリはパクリコンの両肩に手を置き、そして抱きしめた。
「かあ……さん……?」
「親子なら普通でしょ?」
「うん……ぐすっ……ありが、とう……母さん……」
「案外パクリコン君も泣き虫ね。ランちゃんにそっくり」
「そりゃ、だって、……母さん、って……そういう……存在が……ぐすっ……ずっと……」
「うん、うん……」
 パクリコンはユカリを抱きしめる腕に力を込めた。
「母さん……大好きだ……」
「ええ、私もよ」
 パクリコンは暫くの間大粒の涙を流しながら、ユカリを抱き合った侭立っていた。

 午後10時を過ぎて、ランカシーレが急いで教室からの階段を駆け下りた。
「パクリコンさん、ごめんなさい、ちょっと事務仕事がありまして」
「いいさ、俺も今来たところだし」
「……そうは言いつつも、15分前にはいつも来ていらっしゃるでしょう? ごめんなさい」
「いいっていいって。さて、帰ろう」
「はい」
 ランカシーレはパクリコンの左腕に腕を絡ませて、海老名市の街灯に照らされている明るい歩道を歩いていった。
「ランちゃんってさ、ユカリさんのことを最初なんて呼んでいた?」
「ユカリさん、ですか? ヤクモさん、ってお呼びしたら、ユカリでいいわよ、って仰られたので、ユカリさん、でずっと通してきました」
「それもそうだなあ」
「まあ外国では下の名前呼び捨てで呼びあうのが普通でしたから」
「じゃあ外国だったらランちゃんも俺のこと、パクリコン、って呼んでた?」
「んー、そういうときは、敬称二人称、ってご存知ですか?」
「いや、知らない」
「英語には無い概念なのですけれど、普通の二人称、日本語でいう、君、とか、お前、とかそういうのとは別に、態と複数形にしたり三人称にしたりして其れを二人称として代用することで丁寧さを出すことができるのですよ。日本語でいう、あなた、に相当するところですよね。ですから、私はパクリコンさんにならずっと敬称二人称で呼ぶことになると思われます」
「そうかあ。そういうギミックがあるのかあ」
「私はいつの時代も、ランカシーレを縮めてランでしたから、まあなんでもありですよね」
「ちゃん、に相当するのはなんか無いの?」
「ちゃん、ですか……語末に、ヒェン、を付けるとそういうニュアンスは出ますよ。実際ランヒェンって呼ばれていたこともありましたから」
「ランヒェンか。なるほど、言いづらいけれど」
「ランちゃん、のほうが圧倒的にいいですよ。残り僅かな可愛げが出ますから」
「残り僅かってわけでもないと思うけれど。本当に可愛いじゃん」
「パクリコンさんのぱくりんには負けますね」
「其れに負けて如何するよ」
「あとはパックンとかぱくちーとか……いっぱいあって羨ましくございますよ」
「そうかなあ」
「はい」
 二人が自宅について、ランカシーレが着替えてパクリコンの家に向かったときには月が海老名市を照らしていた。
「パクリコンさーん」
「入ってー」
 ランカシーレは玄関の錠を閉めて土間から上がった。
「じゃあお風呂に入りましょうか」
 パクリコンが仕事部屋から出てきた。
「そうだね」
 パクリコンはランカシーレの眼を見て、そして目を閉じてランカシーレに接吻をした。
「今日はほったらかしにしていてごめんな」
「え、なにがでしょうか」
「気付いてないならいいけれど、君は素直だから直ぐ分かる」
 パクリコンはもう一度接吻をした。
「実直で正直で可愛くて優しくて美人だ。君と一緒に居られることが何よりの幸せだ」
「パクリコンさん……」
 パクリコンは更に接吻をした。舌と舌が触れ合い、唾液が交わった。
「さっきな、ユカリさんと話していたんだけれど、どうやら俺も君もユカリさんの子供みたいなものらしくてさ」
「そうでしょうね」
「そいで、もう自分の子供からは家賃だの水道料金だの取れない、って言われてさ。だから……ランちゃんも同じように、ユカリさんちでタダで住まわせてもらっていることも、なんの気兼ねすることもない。ユカリさんだって、そうやって近しく接してくれることを望んでいるんだ。俺も君も、母親の存在を殆ど知らない侭育ったけれど、だけれど、ユカリさんは、ユカリさんを、母親だと、母さんと呼んでいいのだと、言ってくれた」
「そうだったのですか……」
「だから、俺も君も、一人じゃない。一人と一人だけじゃない。少なくとも此処にいる限り、俺と、ランちゃんのほかに、レビアちゃんとユカリさんっていう存在が絆になってあるんだ。家族なんだ」
 ランカシーレは、パクリコンに抱きついて、パクリコンの頬に接吻した。
「家族、って単語、素敵ですね」
「ああ、こんなに感じられるなんて思ってもみなかった」
「ずっと……一緒ですよね」
「ああ、ずっと一緒だ、なにがあろうと」

 パクリコンとランカシーレがお風呂から上がり、二階の寝室のベッドの中で睦言を交わす頃になると、空も雲が翳り始めた。パクリコンとランカシーレはいつものように優しく愛し合うことでお互いの愛情を確かめ、そして二人が恋人同士であることを示した。
 ランカシーレはパクリコンの30分に渡る前戯を、一つの愛情表現なのだと思い受け止めることにしたが、流石に体位までは譲れず、久しぶりにランカシーレの騎乗位で性交渉を行った。ランカシーレが果てたとき、パクリコンの身体に倒れ掛かった。耳を甘噛みし、胸に抱かれることでパクリコンに甘えた。ランカシーレが普段人前では見せないそういう一面をパクリコンだけが知っていた。特権でもあり、其れを見届ける義務があるともいえた。

 其の頃、横浜市にある横浜国立大学の計量化学研究所では異変が起こっていた。
 警備の為研究室の施錠を確認していた人が、緋乱寺研究室だけ厳重ロックがかけられて
いることに気付いたのだ。
 中に入ることができず、仕方なく緊急用の警備隊と警察を呼び、緊急パスコードでロックを解除し、中に入ろうとした。
 すると中には、もうもうと立ち込める鼻を突くような匂いと白い靄が渦巻いていた。
 なんなんだ此れは、と誰もが思ったそのとき、ガスマスクを装着して中に入った警察官の見たものは、床に横たわっている複数の研究員達の姿であった。しかも口から血を吐き、其の全ての人たちの意識が無く――いや、既に息絶えていたのであった。
 警備隊長は消防署に緊急連絡し、すぐさま排気と分析、研究員達の病院への搬送を指示したが、誰も息を吹き返すことはなかった。
 茅ヶ崎消防署のセキュリティジムに最後データを送った痕跡だけが残っており、他は何も変化が無かった。ただ、研究対象とされていた試験管の一つが破損していることが認められた。
 どうやら秘密裏に行われていた其の試験管内部の「物質」についての研究に失敗し、中身が漏れたことで部屋を密封し、そしてあらん限りの消毒液を散布したように思われた。靄の原因は消毒液の蒸発したものが細かい露となって浮遊していたものであると直ぐに判明された。
 試験管内部の「物質」はやがてセキュリティジムとの連携で或る種のウィルスであることが分かった。消毒液の過剰なまでの散布によりウィルスは死滅したものと考えられていた。細かいウィルスのデータはセキュリティジムの機密事項なので其の場の人たちには伝えられなかったが、仮にウィルスが生き残っていたとしたら其の場の人たちもウィルスに感染し悪性症状が出始めていたことだろう。研究員達の執った行動は結果的に被害を最小限に食い止めることになった。
 病院に搬送されて、そして死亡が確認されたのは述べ三人であった。
 一人は突普クォークという研究員、もう一人は鳥野レプトンという研究員、そして――緋乱寺雷蔵という研究責任者であった。

 翌朝の新聞には少しだけ其の死亡記事が出ていたものの、殆どの人が気付かずじまいで過ごしていた。しかし此のことはセキュリティジムの人たちを震撼させるに値するものであったことは言うまでもなかった。
 セキュリティジムの責任者である大原は横浜まで行き、緋乱寺の死亡について追悼の辞を述べた。そして緋乱寺からセキュリティジムへと送られてきたデータについて吟味せざるをえなかった。
 送られてきたデータには、主なウィルスの活動の様子、他の生物に対する攻撃性、そして如何いう状況で生きているか、という実験の内容であった。
 ウィルスは真空、高温、低温でも99%が生き延び、クマムシ並みの生命力を持っていた。更にはあらゆる他の種の微生物に対しても強力な毒素を出すことで粗即死に近い病原性を持っていることも記されていた。此のウィルスが死滅するには、研究室内に散布された消毒液、正確には次亜塩素酸カルシウムの粉末を接させるしかない、とだけ書かれてあった。次亜塩素酸カルシウムがそうそう其処等辺に存在するわけもないのだが、計量化学研究所だからこそ為しえた「防毒」だったのかもしれない。
 更にセキュリティジムでは、此のウィルスの送り主が、此れだけの生物兵器を所有していることを危惧することに重点を置かざるをえなかった。此の送り主が一体何を考えてこんなことをしてきたのか、宣戦布告の心算なのか、挑発の心算なのか、誇示の心算なのかは分からなかった。がしかし、今までに類を見ないタイプの大量殺戮を目的としていることは確かであった。
 怪谷でも桑でもしなかったことを、此の送り主は企んでいるのだろう。
 セキュリティジムは緊急会議を開き、此の一連の動きについて対策を練ることにした。
(つづく)

帰る波があるだなんて、羨ましいよ

 9時くらいに起きた。またもレオルドが夢に出てきた。あと貪欲な壺がゴールドシリーズに入るってお告げも聞いた。デュエタをやったらトリシューラその他諸々30枚くらい出てきた。
 カレーウドンを喰らったことを朝餉とする。
 適当にネット巡回していた。レオルドがリア垢のほうで結構コメントを残していた。レオルドは4分の3.5拍子をカワカミ先生から見せてもらったことがあるらしい。なるほどなあ。
 腎盂を書いていた。殺す奴等が増えたよ。ネー君は殺したくないけれど、殺したくない奴等を殺しまくった挙句のエンディングって結構盛り上がると思う。誰も愛せる人が居ない、誰も好きな人が居ない、そんな渺漠な人生になり、そしてやがては自らすら居なくなるという。なかなか其処までは狙えないけれど。
 先生のところへ行ってなんだかんだ話してきた。
 マイクロ波スペクトルとか面倒くさそうだなあ。さっさと終わればいいのに。まあ其れまでの有意な無為の時間を過ごそう。
 適当に帰る。
 腎盂書いてばっかりなので、SSのネタが出てこない。寧ろ、SSで書くくらいなら腎盂で書くよ、みたいなネタばかりだ。13ばかり思いついたイベントも10ほど消化したし、これから如何しよう。
 ランちゃんを書いていて敬語が身に付いたと思っていたけれど、そうでもなかった。

 秋葉原まで歩いて行ってきた。
 ホビステが改装中だった。折角キムチDREV買おうと思ったのに。合憲当てようと思ったのに。
 ラジ館のイエサブでレベルスティーラーとロードWを買う。レベルスティーラーとバルブとフェーダーは100円でないと買う気がしない。ロードさんは80円だったけれど、後で確認したら既に1枚持っていた。だったらジャンクデストロイヤーのほうがよかったのかなあ。
 7階ケース屋では特に欲しいものがなかった。キメラテックフォートレスが640円で迷ったが、買わなかった。バルブもダンディも安いのが無かった。
 サーパラにも行ったけれど、なんかゆかりんのスリーブが売り切れているらしくて、其の侭帰った。
 昼餉戴いた。ツナサラダだ。
 大家さんから水道料金の請求が来た。こんなところだけピチせかと一緒とはなあ。

 今日の一枚。
448.png
もみちゃん「あー、遠くまで見えますねー。……ん?」
るみちゃん「あっちより低いぞー! もっと頑張れグリムロー! っていうか飛べー!」
グリムロねえさん「ルミナスさん、アナタ、ちょっと重いのですよ、あとアナタのほうが身長低いじゃないですか」
しょーちゃん「あ、諏訪子さんが見に来てる」
諏訪子「もみちゃん可愛いわあ」

 2周走ってきた。
 リア垢に四平方の定理を書いた。詳しいことは忘れたけれど、みんな普通なら名前すら知らないだろうと思った。数学の授業でも数論はやらないからなあ。
 ロードランナーをXYZドラゴンキャノンに引っ掛けることで安定化した。
 レオルドの言っていたことを統計力学でモデル化できないだろうか。
 
 ドラの子犬イチの国はワンニャン時空伝を縮小したようなものだった。のび太像はそのまんまかな、憶えていない。ドラえもんの恋愛とかネコジャラとか、まあ無くてもいいのかなあ。
 今日のメッセ。
名前:パクリコン@朝カレーウドンダイエット
サブタイ:確実に効果は無い。
 でもうまいんだ。
 あ、竜たちノ夢が116回再生された。まあいいだろう。二日で此れは……ありだ。

 ピチロの世界

 人生、宇宙、すべての答え

 第1章-3

 消防署のセキュリティチームではチガサキエンジンの調整が行われていた。
「此のメカもなあ……役には立つんだけれど、メタりすぎだ」
 ダックDがぼそっと言った。
「其れじゃあチガサキエンジンを稼動させて模擬ピチトルをやろう。ピチトルする相手は……」
「俺とパンチャーとバナールで」
 ダックDが言った。
「3対1でやるのか……」
 カルボは呆れたが、仕方が無いのでチガサキエンジンにそうインプットした。
「それじゃあ……ピチトル開始!」
「うおおおおお!」
 ダックDはいきなりライフルを続けざまに撃った。チガサキエンジンの装甲がバキバキと削られてゆく。
「ピチュッ!」
「射撃するなら下がってろってのに!」
 バナールはチガサキエンジンまでパンチャーと接近した。
「……!」
 チガサキエンジンはビーム砲から2発ビームを照射した。
「ピチュッ!」
 パンチャーは反射体勢をとり、ビームを全て跳ね返した。
「続けて……喰らえー!」
 バナールは大きな拳でチガサキエンジンの装甲の薄い部分を殴った。チガサキエンジンは横転したものの、直ぐに体勢を立て直した。
「……!」
 チガサキエンジンはミサイルを5発続けざまに撃ち放った。其れ等はバナールにずがががぁんと直撃し、バナールは深手を負った。
「ダックDは何をやっている!?」
「俺なら此処だ!」
 ダックDは変形し、肩に取り付けてあるブースターを利用して大空を驀進していた。
「此の侭チガサキエンジンに突っ込む! うおおおお!」
「……!」
 しかしチガサキエンジンはダックDが直撃する直前に急に後ろへと退いたので、ダックDは何もない地面に突き刺さった。
「がはあっ!」
「ピチュッ!」
 パンチャーがチガサキエンジンの背後に回りこみ、右腕で大きくアッパーカットを決めた。
「あれ……パンチャーのパンチが……」
 脇から見ていたタッツーが言った。
「なんか、威力弱くなってないか?」
 事実バナールのような破壊力は無く、精々装甲を少し削った程度だった。
「……!」
 チガサキエンジンは至近距離でパンチャーにプレス攻撃を放った。反射体勢をとり損ねたパンチャーは後ろに吹っ飛ばされた。
「くおらあっ!」
 バナールはビームを放った、がしかしチガサキエンジンは特殊装甲盤に光学無効のフォースを発させ、其れを無効化した。
「……!」
 チガサキエンジンはバナールにレーザーを放った。バナールは回避できず、結果、パンチャー、バナール、ダックDは戦闘不能になった。
「其処まで!」
 カルボはチガサキエンジンの臨戦モードをオフにして、パンチャーにかけよった。
「パンチャー、お前があそこでチガサキエンジンの特殊装甲盤を破壊していればバナールの攻撃は通っていたのにな」
「ピチュッ!」
 パンチャーは歴戦のセキュリティ隊員ではあったが、力が出し切れなかったことに憤っていた。
「いつつつ……まあこんな日もあるさ、パンチャー、気にするな。チガサキエンジンも強くなったよなあ」
「あーででで、地面に突き刺さるとかギャグだよな……」
 泥だらけのダックDがやっとこさ立ち上がった。
「ダックDの突撃攻撃が効かなかったのが悪い」
「な、なんだと!? 普通の奴相手だったらちゃんと通じるんだよ! 俺の攻撃を既に見切っていたチガサキエンジンが悪い!」
「見切られたら終わりなのかよ」
「う……そうだなあ……」
 ダックDも立つ瀬無かった。
 するとジムのほうから大原が出てきた。
「パンチャー、調子は如何だ?」
「ピチュ……」
「そうか……ちょっと話がある。パンチャーだけこっちに来てくれ。あー……お前たち、負けたのか」
「そうですね。敗因はダックDということで」
「なあっ!?」
 バナールの素っ気無い一言に、ダックDはぷんすか怒った。
「お前ががむしゃら攻撃ばっかりするから柔軟性に欠けるんだよ!」
「ダックDだってライフル撃ってりゃいいのに、なにがDDDDだ」
 DDDDとはダックDの突撃攻撃のことである。
「きっさまー!」
「ピチュ……」
 パンチャーはそんな二人に冷たい視線を浴びせながら奥へと入っていった。
 大原がパンチャーを連れて行った先には、ジャスティンと呼ばれていた男が立っていた。隻眼で体格のいい男だった。パンチャーと同じく、プラネットジャスティスと呼ばれている星からやってきた宇宙人である。無論パンチャーは日本語を喋ることができないが、ジャスティンはちゃんと喋ることができる。
「パンチャー、私が此の間から感じてきたことなのだが……フォースの出力が落ちていないか?」
「ピチュ?」
「パンチャー、お前の先ほどのピチトルもそうだったが……チフマとゴンフに続いてお前もビタフォースの射出量が減っているように思えてならないのだ」
 大原は言った。
「ジャスティンもそう感じているらしい上……なにか原因があるのかもしれない。チフマとゴンフの精密検査に加え、お前たち二人も検査を受けてみたら如何だ?」
「そうですね……パンチャー、精密検査をやってみるしかない」
「ピチュ」
 パンチャーは首肯した。
「しかしセキュリティジムの大いなる損失だな……パスタの連中がいつ頃帰ってくるか聞いているか?」
「明日あたりだと聞いてますが」
「そうか」
 大原は其れを聞いて安心した。

 パクリコンが海岸分署までやってきたとき、丁度交代の時間だったようだ。
「あれ、リュウ君、どっか行くの?」
「ああ、パクリコン、久しぶりだね。今から僕等は交代だからさ」
「そうか」
 背中の青い蛇のようなピチロとパクリコンは話していた。
「多分また遅れてくるんじゃないかな……イヤミーズは」
「まあイヤミーズだからなあ。未だ治らないのか」
「うん」
 リュウはあっさり認めた。
 すると消防署の中からピチロが三人ぞろぞろ出てきた。
「まだかー、イヤミーズのあほどもとひょう吉は……あ、パクリコン」
「んあ、パクリコン?」
「パクリコンじゃん、どうしたどうした」
「いや、時々来てるんだよ、此処に。お前等が気付かないだけで」
「そうなのか」
 大きな蛇――リュウの躯体より幾許も大きな――と、薄いピンク色の眠そうなピチロと、茶色い身体に首の細いピチロが喋った。
「そういや此の間ひょう吉はデートと称してどっかに行こうとしてたな」
「なっ、ひょう吉がデートだと?」
「ファイちゃんだろ、あいつんところも長いよな」
「そうかー、よし、弄ろう」
「しかし其の当の本人が来ないんじゃなあ」
「あと40秒以内にこなかったら始末書ものだな」
「りゅう吉、最近始末書の閾値は下がっているんだ」
「そうだっけな、ドー君」
 りゅう吉と呼ばれた大きな蛇のようなピチロが、茶色い鳥獣のピチロをほうを見下ろして言った。
「あ、それとそれと」
 もう一人の薄いピンク色の眠そうなピチロがパクリコンに話しかけた。
「ん、ヤド君、どした」
「ブチョーさんが言ってたんだけれど、パクリコンがなんか大変な状況になったって……」
「いや、大したことはない」
 パクリコンは素っ気無く言った。
「ちょっとした小金が手に入ることになったくらいで、俺自体は……」
「小金って何さ?」
 ドーが尋ねた。
「数千ラー円……」
「なんだ、たったそれだけか」
「……かける1万くらい」
「……え?」
 ヤドとりゅう吉とドーはパクリコンのほうを見た。
「じゃあ、数千万ラー円!?」
「そんなの……どうしたんだよ!?」
「いや、なんでだろうね」
「じょ、冗談じゃなかったら……今度何か」
「奢る気はないからな!」
 パクリコンは予め制した。
「俺は決して其のお金を無駄なことには……」
「なんの金だって?」
 パクリコンが振り向くと、目つきの悪いヤマアラシとトリとイヌの形状をしたピチロに加え、ひょう吉がなんのことかと此方を見ていた。
「なんでもないよ!」
「なんでもないにしては慌てていたな」
「五月蝿い、イヤミーズには関係ない!」
「イヤミーズだからこそのしつこさでパクリコンに詰め寄るというね」
 パクリコンは呆れた。
「あのな、マグ吉、俺はイヤミーズだろうがウンコーズだろうが、決して……」
「パクリコンが数千万ラー円貰ったんだって!」
「莫迦、ドー君、空気読め!」
 するとマグ吉等の目の色が変わった。
「そ、そんな大金が……よこせー!」
「よこせー!」
「いててて、エア吉、ヘル吉、今俺は持ってない、其の内手に入るってだけで、いててて、殴るな、お前等なんでそんなに本気なんだよ」
「当たり前だろ!? 3200万ラー円を16人で分けたら一人頭200万ラー円だ! 此れを逃す手は無い!」
「パクリコンがなんでそんな気前のいい設定なんだよ」
 ひょう吉が飄々と言った。
「1割でいい、いや、消費税程度でも……」
「と、ともかく、お前等に分けてあげるだけの予算じゃないんだ!」
「でもパクリコンが何に使うって言うんだよ!」
「うっ……」
「納得いく説明をしてもらおうか!」
「さあ吐け!」
「くそっ……俺の結婚資金だ、って言ったらなっとくするよな!? 其の後自分の一戸建ての家を買って、SAIを買って、ペンタブも筆圧補正のかけられるやつを買って、ってしてたらなくなるだろ!?」
「じゃあ結婚するな!」
「無茶言うな! なんで俺がそんなくだらないことで一生を棒に振らなきゃならないんだ!」
「一戸建ての自宅を諦めてだなあ!」
「俺の夢なんだ! かなえさせてくれ!」
 其れから暫くの間、ぎゃーすかパクリコンとイヤミーズは怒鳴りあっていた。
「いっつもこんなんだよな……」
 ひょう吉が呆れたように言った。

 パクリコンが海老名に帰った頃には既に陽が傾きかけていた。
「あー、ちょっと茅ヶ崎に行くだけ、って言ったのに嘘になっちゃったなあ」
 電車を降りながらパクリコンは呟いた。
 海老名駅からマルイファミリーとビナウォークを余所目に南に歩いていき、次の信号を左に折れる。其処から3つ信号を過ぎ去った次の路地に入っていき、更に左に折れる路地に入ったところの2軒目がパクリコンの家だった。
「ランちゃん怒ってるかなあ……なんて言い訳しよう。まあいいや、入ろう」
 家に入ろうとすると、錠が開いていることに気付いた。
「あれ、俺、鍵を閉めずに来たっけ? まずいなあ……」
 しかし中に入るとランカシーレの声が聞こえてきた。
「お帰りなさいませ」
「た、ただいま、なんだ、居るんだったら鍵くらい閉めたらいいのに」
 ランカシーレがひょっこり仕事部屋から顔を出した。
「パクリコンさんだっていつも開けっ放しではないですか。今更閉めておくのも不自然ではないでしょうか」
「だって、女の子一人で居るんじゃあ……」
「一人じゃないよ?」
 レビアも顔を出した。二人とも髪の毛が長いので廊下にまで髪が達している。
「あれ、レビアちゃんも居たんだ。なにしてんの?」
「いろいろ。ランちゃんが面白いもの見せてくれてたから」
「へぇ、何?」
「パクリコンさんのパソコンの壁紙とか」
「なぁっ、なぁっ、なぁああああっ!?」
 パクリコンはどたばたと仕事部屋へと駆け込んだ。
「あんなの見たって楽しくな……だからそんな顔するな! 俺の趣味ではあるが、俺の、その、違う、そういう意味じゃない! にやにやしないでくれ! 誤解だ!」
「だってパクリコンさんってランちゃんのことが大好きなんだね」
「えへへ」
「いや、まあ、其れは、そうなんだけれど……」
「12分割してランちゃんの絵ばっかり描いて……本当にぞっこんなんだから」
「其れは、否定できない、けれど……でも俺はあれがいいんだ!」
「あれ、と仰られましても、私の絵じゃないですか」
「うん、いや、そういう意味じゃなくて……」
「パクリコンさんってランちゃんのおっぱいを如何いう目で見てるの? あれはどうにもこうにも……」
「おっぱいなんて日によって大きさ変わるだろ!?」
「変わらないよ?」
「俺には変わって見えるのに……描く段階で違ってくるのに……」
 パクリコンはがっくりと両膝両肘を床についた。
「私は別に嬉しいから構わないのですけれど……でもパクリコンさんは、私が居ないときはやっぱりこういう絵を描いて自分で……」
「してない! 俺はランちゃんをそんないやらしい目で見たことがない!」
「あれだけ毎日やってるのに?」
「いや、レビアちゃん、君にもいつか分かる日が来るが、男女がセックスするとき、男は必ずしもいやらしい目で見ていないってことが……」
「なんであたしが未だわかってないって思うのよ」
「へ?」
 パクリコンは拍子抜けした。
「だって……」
「あたしだってセックスくらいやったことあるよ」
「嘘!? いつ!?」
「大学入ったらそんなもんだと思うけれど。初体験18歳って割と今じゃ普通じゃない?」
「そ、そうか、それなら……え、其れちゃんとユカリさんに言った!? あの人なら……」
「そう思うから言ってないよ。ランちゃんとパクリコンさんだけの秘密ね」
「ああ、うん、其れなら其の秘密は守るけれど……」
「ランちゃんだって19歳でパクリコンさんとでしょ? 何ら変なところは無いね」
「無い、けれど、そうだったのか……言ってくれればいいのに」
「態々メールなり電話なりで言うことでもないじゃん」
「……じゃあ、変なこと訊くけれど、痛かったろ?」
「ちょこっとね」
「へ? ちょこっと? だってランちゃんは……」
「どうして私の方をご覧になるのですか。女の子の処女膜と痛覚神経は人其々相関が違うのですよ」
「あ、そうなんだ……俺、保健体育の授業は割と寝ていたから……」
「あと血は出なかったよ。半分くらいの子は出ないらしいしさ」
「へぇ……あ、そうだ! 避妊はちゃんとやったろうな!?」
「避妊も何も、相手の子とあたしとじゃあ、子供出来ないもん。避妊の必要性はないよね?」
「あ、そうなのか……まあ性病予防の為というのもあるけれど、避妊は……そうか……。あれ? 今まで訊いたことなかったけれど、レビアちゃんって何のピチロの血が8分の3混じっているの?」
「其れ訊かれると厄介なんだけれど……」
 レビアは困った顔をした。
「対外的には犬の血だ、って言ってる。だから、犬歯がこんな感じになってて、あと耳もね。でも……分かると思うけれど、ピチロが犬に似ているからって、犬の血、という表現はおかしいよね」
「うん、其れは分かる。俺も山羊さんとの子供というわけじゃないし、ランちゃんも狐さんの間に生まれた子供じゃないし……」
「あたしの育ったところじゃあ割と通じなかったんだけれど……あのね、黒妖犬、って分かる?」
「コクヨウケン? なにそれ?」
「わかんないか。まあ伝説上の生き物だからね。ええっとね、主にイギリスに生息されていると言われている伝説上の、いわば魔法の犬だよね。黒くておっきくて、奇怪な術が使えるらしいんだよ。言ってみればピチロの影響なのかもね。で、其の黒妖犬、現地語でスクライカっていう名前なんだけれど、其れにとても近い存在として認められているのがあたしの血の一部なんだよ」
「スクライカ……? わかんないけれど、其れはそういうピチロの種類がいるんだよね?」
「居るよ。居るけれど数は少ない。イギリスと一部のヨーロッパにしか住んでいない、ってことになってる。あ、ランちゃんとも繋がりがあるんだよ」
「どんな?」
「スクライカ、って名称はね、イギリスのランカシャー地方での呼び名なんだけれど、其れが広まったの。だからランちゃんが、まあ具体的にどういう狐さんの親戚なのかは知らないけれど、少なくともランちゃんがランカシャー地方に居たことがあるのなら、接する機会があってもおかしくはない、ってこと」
「ああ……ああ。そうか、そういうことね。だからレビアちゃんは髪の毛が黒いんだ」
「其れはあまり関係ないけれど、そういう納得されても文句は言えないね」
「そうかあ。ああー、ってことは、俺が山羊でランちゃんが狐でレビアちゃんが犬で、……俺は喰われる運命なのか」
「喰ってるくせに」
 レビアは偽悪的に笑った。
「俺は君までは喰わないよ。こっちの金髪の子が愛しいもので」
「羨ましいよ、そんなに愛し合えるのなら」
 レビアが意味深長に言った。
「レビアちゃん、でも其の相手の子、ああ、まあまた此の話題だけれど、って、ちゃんとレビアちゃんのことを……」
「いや、普通にセックスしたかったからしただけ。そんだけ。なんもないよ」
「そう、なんだ……」
「セックスしたら愛情でも自然発生かと思った。だけど逆だったね。セックスは只の通過儀礼か拡大鏡みたいなもので、何らかの問題があったとして其れを拡大こそするけれど、解決には使えない。そんな感じ。パクリコンさんも分かるでしょ?」
「分かるような分からないような……」
「ランちゃんはパクリコンさんと生涯添い遂げたいと思った、だけれど其の為にはセックスしなきゃならなかった、だからセックスしてみた結果、生涯添い遂げるに値するかどうかみたいなことが分かった。そういう問題の焦点が合った、ってことであって、問題自体はパクリコンさんとランちゃんが解決した、ってことでしょ?」
「そうなるなあ……」
 パクリコンは座りなおした。
「レビアちゃんが其処まで考えていたとは……賢いなあ」
「多分ランちゃんのほうが賢いと思うけれど」
 レビアは続けた。
「ランちゃんのピチロの血の混じっている、母方のほうの血筋に、言い伝えがあるんでしょ?」
「ありますけれど……ただの言い伝えですよ?」
「ランちゃんの出生の意味が分かるかもしれないじゃん」
「そうですけれど……」
「どんな伝承なの?」
「そうですね……パクリコンさんは、狐さんが1000年生きたらどうなるか、ご存知ですか?」
「俺そういう伝説とかよく知らないけれど……動物が1000年も生きるの?」
「全ては架空の話です。狐さんは1000年生きると天の狐と書いて天狐というものになります。天狐は千里先のことを見通し、まあ要するに予知能力の比喩みたいなものですよね、それから尻尾が9本になるとも、俗に言う九尾の狐の始まりですね、そして天界、神様等が居るという聖域に行き来できるようになるのです。其の証拠に、流れ星のことをアマツキツネと呼ぶことがあるでしょう」
「知らないけれど……そうなんだ?」
「そうです。アマツは天、キツネは狐さんですよね。ですから、天狐はそういう神獣のような存在でした。丁度レビアちゃんの血の黒妖犬が悪魔の犬で、触れたり話しかけたりするだけで呪いにより命を奪うという、そういう存在とは対極にある存在だといえます」
「え、レビアちゃんの血にそんな能力があるの?」
「ただの喩え話だよ。実際そんな生き物がいるわけないじゃん」
「そうだけど……」
「私も其れでお終いだと思っておりました。そうしたら、私のお母さんが私の小さかった頃に、お母さんは此れで1000年目だから、ランには其の素質がある、いつでも、『呼べば応え、必要ならば与えられる』と申しておりました。如何いう意味かは分かりませんでしたし、只の伝承の一部ですから信憑性も何もあったものではないです。ですけれど……後で私の血の正体を知るにつれて、どうしても否定できなくなったのですよ」
「そうだよな……でも御母堂さんは……」
「はい、お母さんがそういう、言ってみればピチロなり人知を超えた能力なりを持っていたことはありませんでした。……持っていたら別の未来になっていたでしょうね。ですから此の血筋で唯一残されたのが私ですので、私が、まあいつか天界に行くようになったり尻尾が9本になったりするかもしれません。それだけのお話です」
「なんか……狐につままれたような感じだなあ。信じがたい」
「そのまんまじゃん。狐につままれた、って」
「そうだけれど……」
「でも」
 ランカシーレは目を閉じて言った。
「私にはなんのピチロとしての能力が無くても、其れは其れでいいのではないでしょうか。血のつながりで能力がどうのこうのというより、実際に愛し愛される人たちとともに生きていけることを大事にできたほうが、幸せだと思われます」
 パクリコンもレビアも、其の言葉には勝てなかった。
「……な、何でしょう。私がこういうことを申しても……」
「いや、ランちゃんだからこそってね」
 パクリコンはランカシーレを抱き寄せて頬に接吻した。
 レビアはそんな二人をにまにま笑いながら見ていたが、ふと気付いた。
「パクリコンさん、其れ何?」
「え?」
 パクリコンは自分が今日貰った書類がポケットから落ちていることに気付いた。
「ああ、此れは今日貰ったんだよ。例のやつで」
「ああ」
「ああ、って……レビアちゃんに話したっけ?」
「ごめんなさい、私からレビアちゃんとユカリさんにはお話しました」
「まあいいさ」
 パクリコンは書類を広げた。
「なら大体分かると思うけれど、此れが俺が相続できる遺産の総額。モノは全部売り払って、お金の形で銀行口座に入ってくるらしい。まあ、貰わなくてもよかったんだけれど、額が額だからさ……」
「さんぜんろっぴゃく……うへえ。パクリコンさんが一日でこんな大金もらえるってことだよね?」
「そうだよ。なんというか……」
「此れ、ちょっと多いような気がしますけれど」
「え、そう?」
「普通に暮らしていて、相続税を引かれて、ってなりますと……」
「あ、相続税引かれる前はこっち」
「ありがとうございます。此の額ですよね、一般的な家庭で、4人家族で此れだけの資産があるのは不自然ではないでしょうか」
「そういわれれば、確かにちょっと多いとは思うけれど……」
「固定資産も普通ですし、株や優待なども殆どありませんし……ちょっと不自然ですよ。弁護士の方からなにかデメリットみたいなことを申されませんでした?」
「いや、なにも、特に……相続する? イエス。で終わった話だし」
「にしては帰ってくるの遅かったけれど」
「其の話はまた後でな」
「うーん……普通相続するとなると、ローンなども一緒に相続する義務があるのですけれど、そういうことは書かれていませんよね」
「ああ、うん」
「交通事故ではありませんでしたから慰謝料というものもありませんし……如何いうからくりで……」
「まあ、悩んでても分からないよ。当の本人等は死んでるんだし」
「そうですけれど……」
「で、なんで帰ってくるの遅かったの?」
「君もなんか性格が誰かに似てきたよ。まあ、消防署巡りしていたのと、あと俺が預かってた神鎧甲をくれることになった、ってくらい」
「パクリコンさんって神鎧甲持っていたの!?」
「そうだよ」
 神鎧甲、ゴッドアーマーと呼ばれ、珍しい鎧甲の一種であり、強度やフォース増幅量が通常の鎧甲に比べ、大きく異なっている。
「でもあのとき使っていた鎧甲は……」
「あれは別、いつも使うのはあれね。で、其れとは別に、大事に保管してある神鎧甲が一式あるんだよ。俺にフォースを教えてくれた人、の、師匠が俺にくれてね」
「え、要するに……師匠の師匠?」
「そう。あれ以来ずっと海外をぶらぶらしていたらしいけれど、今丁度日本に来ててさ、そいでいろいろ話し込んでいて、そのときに、日本に来たのは俺に神鎧甲を正式に渡す、ってことだったんだよ。まあ日本観光もしたいって言ってて……」
「ねえ、其の神鎧甲見てみたい! 初めて見るよ! ねえ、見せてよ!」
「いいよ、こっち」
 パクリコンはレビアとランカシーレを縁側の奥へと案内した。
「いっつも此処に飾ってあるんだけれどね。此れ」
 パクリコンが布を取ると、其処には黄金色に装飾された派手な神鎧甲があった。
「すっごい……こんなんなんだ……」
「私にはなにがなにやら」
「まあ、いいと思うよ」
 レビアは神鎧甲をべたべた触っていたが、ときどき手の平を翳しながら納得したような表情をした。
「此れ使ったら、相当強いんでしょ?」
「強いよ。射程も延びてAPも減って威力増大、基本ステータスは上がるしビタフォースの発動も簡単になって、っていいとこ尽くしだね」
「……じゃあなんで昨日のあたしとのピチトルで此れを使ってくれなかったの!? 手を抜いてたの!?」
「違うよ。ただ……いきなり神鎧甲相手にしたら今までと勝手が違うだろうし、俺自身も普通の鎧甲に馴れてたんだ。あと……まあしょうもない話だけれど、神鎧甲って修復するのがちょっと面倒くさくて、値段も高くてね、君とのピチトルでズタボロになったら直すのが、ほら、借り物なわけだったし、だからどうしても使うに使えなくて……ごめんな」
「いや、いいんだよ、そういうことなら」
 レビアはあっさり認めた。
「じゃあ今度のピチトル大会は其の神鎧甲で出てよね」
「え、うん、其れはいいよ、もう俺の物だし、修復も大会なら簡単にできようし」
「ならいいや。よし、パクリコンさん、優勝しよう」
「優勝かあ、去年のチームに勝てるかどうか」
「去年?」
「知らない?」
「知ってるけれど……でも殆ど無名無所属の5人だった、って聞いてる」
「そう、そうなんだよ。チームロリパ。あいつ等の行動は分析してみたけれど……本当によくできている。普通に立ち向かったんじゃ勝てないかもしれない」
「パクリコンさんがそう考えるくらいならそうなんだろうけれど……全員ピチロだったよね」
「そう。行動の数が尋常じゃない。チームワークも完璧だし技やビタフォースの発動タイミングも図られてるくらいにぴったりだ。大会って武器の規制があるけれど、あいつ等は武器ゼロで勝てた。其れだけのポテンシャルはあるんだ」
「うーん……武器ゼロで、か……」
 レビアも悩んだ。
「パクリコンさんに武器ってあったっけ?」
「無いでもない。でかい鎌みたいなのがある。ポラリジーレンフォルターっていう……」
「『分極させる拷問器具』」
 ランカシーレがぼそっと言った。
「そう、なんかそういう意味だって聞いたけれど……」
「だってドイツ語だよ?」
「あ、そうなのか。一応フォースで電場を作ってポジトロニウムを照射できる。多分大会になら規制で引っかかるからあまり持ち込んだことはないんだけれど、いざってときは振り回してたなあ。レビアちゃんは?」
「あたしはなんだろね、ちっこい剣みたいなので近接は捌いてた。殆ど射撃だからあまり意味は無いし邪魔なんだけれどね」
「其れもそうだなあ」
 パクリコンは把握した。
「じゃあ俺等は素手でやったほうが早いな。鎧甲付属の武器も最近ははやっているけれど、無理にあわせる必要は無いしさ」
「そうだね」
(つづく)

毎晩ちょっとくらい寝てしまってほしいんだよ

 9時くらいに起きた。
 適当にネット巡回していた。今日は雨が降っていて尚更冷え込むだろう。
 ハリポが児童書だという認識はあまりないのだろうか。児童書「だからこそ」の魅力ってあるとは思うけれど、其れを引き出しきれていないのがやや悲しい。間違っても読者が、
「ああ、此処は原書ではpleaseなんだなあ」
とか考えながら読まなきゃならないのはやや苦しい。寧ろエルマーのぼうけんでの、
「どもれどもれ! りゅうがようひつだ!」
も苦しいけれど、其れ以上のがハリポにはある。でも此のネズミの科白をどうやって訳せばいいかはわからない。
 朝餉戴いた。饂飩だった。
 適当にレポートの体裁を調えていた。なんとかなった。ただホッチキスでとまらなかったので、クリップにした。
 レポートを出しに行った。そしたら電子線の波長の計算と、あとスポットがどの逆格子点に相当するかを書かないと駄目だ、と言われてすごすご帰った。
 そして神速で直す。此れ以上無いくらいに直した。今すぐ出しに行ってもいいけれど、まあ昼餉ついでに出しに行くか。
 腎盂であと数人確実に殺す奴がいるのだけれど、どうしようかなあ。

 レオルドを殺すというのもありだが、そうするとレオルド関連のことをまた書かなきゃならなくて面倒くさい。適当に病院送りにしよう。
 昼餉戴いた。ツナサラダだ。
 買い物して帰る。うどんが10円安かった。
 私の体温を36℃、外の気温を15℃として、自分の体重や身長から表面積を割り出した結果、私は毎秒240ジュールのエネルギーを輻射しているらしい。……20秒で1キロカロリーだよな。そんなに都合のいい話はそうそう無いと思うけれど、でも計算したらこうなったので、頑張って15℃のところで居ようと思う。

 らんもみを流行らせようと思って描いた。
447.png
 藍しゃまでかい。

 多分今回のポケモンで出てきたツタージャは、以前のツタージャとは違って普通の声だったので、誰もが簡単に、「ッタージャッ!」って其れっぽく言えば似てくると思う。
 キバゴはヨーギラスに似ているのに体重が軽いよな。
 夕餉戴いた。走りにいけないので、簡単にタマゴカレーウドンにした。あれ、何故にカタカナだらけになるのだろうか。

 『交感ノートは喋らない』の後編に物凄く感動した。思わず涙ぐんだよ。話の組み立てに最高に惹かれた。キャラ使いにも惹かれた。登場人物3人でよくあんなのが描けたなあ。お手本に、は、しないけれど、でもいい思い出として永遠に残しておこう。まあHEROさんはセミプロみたいなものだからなあ。

 薔薇さんが以前私にメアドと携帯の番号を教えてくれたけれど、あれってまだ使えるのかな。
 今日のメッセ。
名前:パクリコン@腎盂→2→3→LB→星襲☆→ヲタカメ
サブタイ:何此の仕事の山。
 
 ピチロの世界

 人生、宇宙、すべての答え

 第1章-2

 Gx基地に団員が少しずつやってきた。
「おはよ、セルクタス」
「おはよう。ジョーネが一番乗りとは珍しいなあ」
「二番乗りだけれどな」
 ジョーネと呼ばれた団員が椅子にどっかと腰掛けた。
「……。あのレオルドの残骸みたいなのはなんなんだ」
「ああ、レオルドだよ」
「なんでまたあんなんなんだ?」
「それは……」
 するとGx基地のドアがウィーンと開いた。
「おーっす、おはようっと」
「おはようっとね」
「おはよ、ゼハツェン、アクエル」
 二人のGx団員もちょっと経ってレオルドが倒れていることに気付いた。
「なあ、なんであいつあんなんなんだ?」
「なんかね、レオルっていうレオルドに恨みを持つ人がやって来て、レオルドとピチトルやったんだよ。で、レオルドがフルボッコにされてああなったの」
 セルクタスは説明した。
「レオルド……弱いくせに無茶やるから……」
「あーあ、鎧甲もずたぼろじゃん……」
「で、其のレオルってのは誰だったんだ?」
「知らない。あんまり説明聞くまでもなくレオルドがやってきてピチトルやって、そしてレオルが暴れだしたところで、なんかレオルの知り合いらしきピチロがやって来て、レオルを気絶させて運び出した。だから僕も正直よく分からないんだよ」
「ふーん……知り合いってどんなの?」
「ええっとね、6人は居た」
 セルクタスは少しずつ思い出しながら言った。
「リーダーらしき子は慎重が此れくらいの薄茶色のピチロでね、流れるような茶色い縞があって、であとは……」
「ん、そいつの名前とか分かる?」
 アクエルの質問にセルクタスはやや戸惑った。
「んーと、なんていってたかな、ネークシル、ってのが其の子だった」
「ネークシル? ……ひょっとして、去年の茅ヶ崎ピチトル大会の優勝チームの子じゃないかな」
「其処までは知らないけれど……」
 アクエルはパソコンを起動させ、茅ヶ崎ピチトル大会の歴代優勝チームのページを示した。
「此処見てよ。こんな感じだった?」
「そう、そんな感じ。他のメンバーもそんなんだったよ。でも……優勝チーム、ってことは賞金400万ラー円を掻っ攫って、っていうところだよね。なんでレオルって奴と知り合いなんだろう」
「其処までは分からないなあ」

 一方ネークシル等に担がれていったレオルは、或る家で意識を取り戻した。
「此処は……? ぐっ……」
「じっとしてろよ。本気で俺はお前を殴ったんだから」
 モナドが反省する気のない口調で言った。
「レオル、お前にレオルドの居場所を教えたのはレオルドにピチトルをしたいからだと聞いた。だけれどお前は……レオルドを殺したがっていたようだけれど、其処は如何なんだよ」
 ネークシルは訊いた。レオルは少しずつ口を開いた。
「あいつは……俺のプライドをずたずたにした……許せなかったんだ……!」
「ピチトルで、だから、ピチトルで復讐をしようと」
「そう……」
 ノルムの言葉にレオルは首肯した。
「まあ……どっちもどっちな感じだったけれど、でも今更レオルドなんかを甚振ったってなんにもならないだろ?」
「俺は其れでよかったんだ……」
「まあ人の因縁までどうこう言う気は無いけれど」
 ネークシルは続けた。
「お前の過去話だと、あの時はレオルドは仲間4人居たわけだろ? 他の奴等も甚振らないと気がすまない、って言うんじゃあ、際限ないんじゃないかな」
「其れは……そうだが……」
 レオルは詰まった。
「だが1対5とはいえ……俺は……」
「ねえ、其のレオルドとかいうのって、今年のピチトル大会にも出るのかな」
 イデアが何気なく訊いた。
「知らないが……出る心算はあるだろう……」
「ボク等が出られないからって油断してるだろけれどねー」
 ノルムが莫迦みたいなことを言った。
「だったらレオルドだけといわず、其のピチトル大会でレオルドのチームごとやっつければいいのに。まあ大会でなくてもいいけれど」
「だが……俺には仲間が居ない……」
 レオルは歯軋りした。
「僕んところから貸すわけにもいかないけれど……」
「だったら使える強い奴でフリーなのを教えてくれよ……! 俺には……仲間が必要なんだ……!」
「仲間なんてそうそうできないと思うけれど」
 ノルムがぼそっと言った。
「だって仲間が如何いう行動を取れて、如何いう戦略が通用しえるのかとか、そんなの長く訓練していないと分かんないことだらけじゃん」
 ノルムの言うことも尤もだった。
「だが……」
「じゃあこうしろ」
 ネークシルは言った。
「去年のピチトル大会でいいところまでいったチームを参考にするんだ。如何いう繋がりでどういう編成だったのか。茅ヶ崎市消防署がいいお手本になると思う」
「消防署?」
「そうだ。3位と5位に消防署のチームがランクインしているし、2位も消防署つながりだ。何か力になれるんじゃないかとは思う」
「そうか……なら当たってみよう」
 レオルは立ち上がった。
「世話になった。迷惑をかけてすまない。では俺は此れで……失礼する」
 レオルは部屋を出て、其処の家から出て行った。
「……なんだったんでしょうね」
 レマが無表情に言った。
「まあそういうの多いさ。だからってうちを当たられても困るけれど」
「ノルム、此処は、僕んちだ」
「そう硬いこというなよーネー君ー」
「僕んちに入り浸りすぎるんだよ! 僕にもちゃんと家族が居るんだ! 君等に貸せる時間帯や部屋なんてほんとうに限られてるんだ! いい加減僕の事情を……」
「ネー君、此の写真の女の子誰ー?」
「だあああ! もう! 勝手に触るな! はい、今日はおしまい! みんな出てった出てった!」
「ちぇー」
 ネークシルは家から5人を追い出した。
「全く、僕はなんなんだよ……こんなので賞金6等分とか絶対納得いかないよ……」
 すると奥の方でとてとて音がしたかと思うと、戸が開いて、ネークシルと同種族の女の子が顔を出した。
「ネー君、お友達は帰った?」
「ああ、帰ったよ。毎回此処を集合場所にするのなんとかしないとなあ」
「私は別にいいんだけど、あの人たち面白いから」
「面白いっていうのかな、ああいうの」
 ネークシルは訝しんだ。

 海老名市でパクリコンはランカシーレに言った。
「そういえば、ブチョーさんが俺に遺産がどうのこうのって話をしたがってたから、今日ランちゃんがフィットネスに行っている間に茅ヶ崎に行ってくるよ。どれくらい時間がかかるか分からないけれど、さっさと切り上げて帰るから」
「はい、まあ……ご満足のいくまでおやりになったので構わないとは思いますけれど」
「いいんだよ、遺産なんて大して興味ないもん」
 そうは言っているものの、仮に遺産が数億ラー円あったら態度も変わるだろう、とランカシーレは思った。
「土地とかあったらユカリさん状態になれるけれど、そんなに都合のいい話なんてないもんなあ」
「そうでしょうね」
 すると、ピンポーンと音がした。
「誰だろ」
「レビアちゃんではないでしょうか」
 パクリコンは玄関まで行って、鍵を開けた。
「ああ、やっぱりレビアちゃんだった」
「おはよ。やっぱりってなにが?」
「いや、ときどきランちゃんの未来予知が怖いんだよ」
「未来予知というか、現状の観察の上での推測だよね」
 パクリコンはレビアを縁側へと連れてきた。パクリコンとレビアを見て、ランカシーレは一人で笑いを噛み殺していた。
「何の用事だっけ?」
「ああ、9月にあるピチトル大会ってパクリコンさんどうするのかなー、って思って」
「どうするって……どうしようかなあ。出るにしてもまた消防署のメンバーと組むかもしれないけれど」
「あたしと出てみない? 今度のピチトル大会も去年と同じで5人チームでしょ? なかなかバランスのいいパーティが組めなくてさ」
「そっか……」
 パクリコンはちらっとランカシーレを見た。ランカシーレは軽く頷いた。
「分かった。よければ一緒にチームを組ませてもらうよ」
「やった! 此れで5人揃った、9月が近付いたらメンバーの詳しい紹介はするけれど、大体こんな感じなんだよ」
 レビアはポケットから一枚の紙を取り出した。其れにはメンバーの名前と取れる行動の詳細、基本的なステータスが書かれてあった。
「回復、防御で……こっちが攻撃部隊か。俺はどういう位置づけになるの?」
「パクリコンさんは反撃とチェーン停止で中堅だね。中堅はバックヤードの回復と射撃を守る意味もあるから、タイマニングアンダレーションで守るって手もあるし、あと、パクリコンさんが勝手に編み出したっていうタイマニング……なんだっけ?」
「デス・シンギュラリティ」
「そう。其れで守ってくれてもいいし。割とパクリコンさんならなんでもできるとこだね」
「そっか。弾除けじゃないならいいかな」
「あっはは」

 ネークシルの家から追い出された5人は、仕方が無いので自分達の家に帰ることにした。
「ネー君もあんなに強情張らなくったっていいのになあ」
「ノルム君だって自分の家に入り浸られたら嫌じゃん?」
「ボクは別にどうってことないけどねーフフーン」
「じゃあ部屋の、見られちゃまずい宝箱関連はどうするんですか」
 レマに言われてノルムはぎくっとなった。
「そ……其れは……ちょっと隠して……」
「え、なに? 宝箱?」
「いや、其の……」
「ノルム君もそんなのあるんだー」
「え……いや……」
 イデアとアフィンにも言い詰められて、ノルムは立つ瀬が無かった。
「モナド! 男には見られちゃまずいものが一個くらいあるよな!?」
「無い」
「そんなー!」
 ノルムは孤立無援を悟った。
「ボクはね、今まで旅してきたりなんだかんだしたりしてきたオモヒデを大事に取っておく子なの!」
「おもひで……?」
「思い出のことだよ! 其のくらいわかってよ!」
 ノルムは必死に言いまくし立てた。
「どうせ携帯で撮った可愛い子の写真ばっかじゃねーの?」
「ち、違う!」
 モナドの一言をノルムは否定した。
「ボクは今も昔もレマちゃんだけ好きだった! だから結婚できたんじゃないか!」
「必死ねー」
「必死にもなるよ!」
 ノルムはイデアにも変な視線で見られることに耐えられなかった。
「此の間ぐぐって分かったけれど、要するにノルム君は筒井筒的なことをしたかったと」
「え、筒井筒?」
 ノルムは分からなかったが、レマとアフィンとイデアはくすくす笑った。
「なあモナド、筒井筒ってなんなんだ?」
「俺が知るかよ」
 モナドは冷たかった。
「まあいい、ボクも帰ってぐぐればいいだけだ。ぐーぐるさいこう! 情報氾濫社会万歳! というわけで此処等辺でさらばだ! 行くぞ、レマ!」
「こういうときだけえらそぶったってしょうがないでしょうに。がむしゃら攻撃グラスオラガ……」
「ぎゃああ! ストップストップ! 分かったよもう……」
 ノルムとレマは違う方向に歩いていった。
「じゃあ、俺等も解散するか」
「そうだね」
 ひょいとモナドはイデアを肩に乗せた。
「じゃあアフィンちゃん、またね」
「じゃあな」
「うん、またねー」
 モナドとイデアも自分の家があると思しき道へと帰っていった。
「ま、また直ぐ集まることにはなりそうだけれど」
 アフィンはそう呟いた。

 パクリコンとランカシーレは昼食を終え、ランカシーレはフィットネスに出かける準備をしていた。
「ランちゃん、ちょっと二の腕見せて」
「いいですけれど……はい」
 パクリコンはランカシーレの腕を揉んで、自分よりも分厚いであろう筋肉を確かめた。
「こっちより胎盤のほうを鍛えたほうがいいんじゃないかなあ」
「なんのことやら。私は全部が全部パクリコンさんにおんぶに抱っこが嫌なだけですよ」
「そんなこと言うなよー」
「そういう意味ではなくて……パクリコンさんに頼りっきりなのも如何かと思っている次第なだけですから」
「いや、いいんだよ、頼りっきりでも」
「甘えるのは夜だけにしたいので」
「うーん……そうなのか……」
「はい、ではパクリコンさん」
 ランカシーレはパクリコンの右頬に接吻をした。
「行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
 ランカシーレはがらがらっと玄関を出て行った。
「……俺も準備しなきゃなあ」

 パクリコンは保険証と印鑑を持って家を出た。海老名駅まで歩いていき、電車に乗って茅ヶ崎駅まで目指した。こんなにも茅ヶ崎まで行き来するのなら定期を買ったほうが寧ろ安いのかもしれない、くらいにしょっちゅう茅ヶ崎まで行っているのであった。
 茅ヶ崎について、K17の仲間内だけで使える自転車を物陰から引っ張り出してきて、中央通りを走っていった。
 やがて茅ヶ崎消防署が見えてくると、パクリコンは自転車を勝手に職員用駐輪場に停めて、建物の中に入っていった。
 大原が大概居るのはセキュリティジムと分かっているので、パクリコンは真っ直ぐセキュリティジムへと向かった。
 ジムへの入り口のドアを開けると、例によってミットを殴る音や爆発音が続けて聞こえてきた。
「此処も派手だよなあ……」
 パクリコンは大原の居場所を探したが、直ぐに見つかった。ピチトル場の傍でパンチャーとチフマとゴンフになにやら指示を出していた。ピチトル場の中では鎧甲に身を包んだピチロたちがピチトルをしていた。
「ブチョー、来ましたよ」
「ああ、パクリコンか。本当に翌日来るとは……まあいい。パンチャー、チフマとゴンフにはビタフォースの発動のメニューをやらせておけ。其れと……おおい、バナール!」
「なんですか?」
 バナールがピチトル場から答えた。
「ちょっとわしは抜けてくる。其の間のことは頼んだ」
「ラジャー」
 大原はパクリコンに、従いてこい、と言ってセキュリティジムから出た。
 パクリコンが大原に従いていくと、或る小部屋に連れて行かれた。
「此処に入れ」
「なんなんですか?」
「今日も来てくれる筈なのだが……お前のところの弁護士だ。遺産についていろいろ言付かっているらしい」
「そうですか」
 パクリコンは大して興味ないかのように答えた。
 大原は携帯を取り出し、なにやら喋ったかと思うと、暫くして小部屋のドアが開かれた。
「お待たせしました、大原さん。この人が……」
「飯骨稼パクリコンだ」
「あ、初めまして」
「どうも」
 パクリコンは軽く会釈をした。
「早速ですが、パクリコンさん、あなたのご家族については気の毒でした。心中お察しします。此方がパクリコンさんのご家族の遺産についての内容です」
 心中察していないかのような事務的な言い方にパクリコンはいらっときたが、何も言わずに其の紙を受け取った。
「先ず貯金残高が一番上のところのもので、続いて資産、不動産などの査定結果が記されております。一番したが査定総額になりますね」
「はい」
 パクリコンは一番下の項目に目線を移した。数千万ラー円の金額が記されていた。
「パクリコンさんが相続されるということに異議はございませんね?」
「無いです」
 パクリコンも事務的に答えた。およそ異議があったとしても、言わないほうが面倒くさくないだろう。
「では相続という形になります。パクリコンさんには、相続税を以下のように引かれたものが……」
と弁護士は二枚目の紙を差し出した。
「相続額になります。えー、パクリコンさんはご家族と関係が非常に希薄でしたので、あまり物質的な相続には……」
「興味は無いです」
「でしょう、でしたら、全て売却という形でパクリコンさんに相続されるという形で構いませんね?」
「はい」
「では後日銀行口座に振り込ませていただきますので、口座番号を此方にお願いします」
「はい」
 パクリコンは自分の口座番号を書いた。
「では以上で相続に関しては終わりです。なにかご質問は?」
「ないです」
 パクリコンは反射的に答えた。
「では私は此れで失礼させていただきます」
 弁護士は部屋を出て行った。
 大原はパクリコンに尋ねた。
「パクリコン、本当に其れでよかったのか?」
「なにがですか」
「いや、生前の家族の家を見に行ったりと……」
「僕には何の価値もないことですから。其れに本当なら遺産相続も放棄する心算でした。結婚資金が足りないので仕方なく相続しただけですので」
「そうか……。パクリコン、近々結婚するのか?」
「婚約まではしていませんが、そういう心算です」
「余計なおせっかいかもしれないが、パクリコンはピチロとの混血だから……」
「大丈夫です。相手の子も混血で、子供も作れます。順風満帆です。強いて言うなら」
 パクリコンは席を立った。
「僕も彼女も、良くも悪くも、世界で一人、というところですかね」
 パクリコンは辞去して小部屋を出て行った。

 パクリコンが消防署を出た辺りで、パクリコンは消防車が数台、サイレンを鳴らしながら出て行くのを見た。ほんの10年前までは自分もあの中に混じって出動しなければならなかった。圧倒的に今の暮らしのほうに愛着を感じている。パクリコンは其の侭自転車で元来た道を帰りだした。
 中央通りを走り、中央公園に差し掛かったところで、パクリコンは公園内に見知った人が居るのに気付いた。自転車をおりて、公園内を自転車を押して歩いていった。
 ベンチに、一本ツノが生えた白い毛のピチロと、二本のツノが生えた白い毛のピチロが話し込んでいた。
「お久しぶりです、セリーニー大先生、シルバヌス先生」
 パクリコンは挨拶した。
「パクリコン!? 久しぶりだなあ、いやあまさかこんなところで会えるとは」
「探してたのよ、元気ー?」
「あ、はい、まあ順調です」
 パクリコンは形式的に返した。
「え、で、探していたというのは?」
「以前シルバヌスがパクリコンに勝手にキュンティアの神鎧甲をあげたでしょ?」
「ああ、はい、……あれって勝手だったんですか」
「あったりまえでしょ、なんで神鎧甲をタダであげなきゃならないのよ」
「だって俺は弟子じゃないですか」
「弟子でもあげたくないものはあるの!」
「はいはい」
 すると横のシルバヌスが口を開いた。
「しかしセリーニー先生には鎧甲が別にあるし、私にもある。というわけでパクリコンに正式にあの神鎧甲一式をあげようと思ってな」
「え、いいんですか!?」
「いいもなにも、もう私たちは使うことが無さそうだしね」
「今度のピチトル大会にも私らは出ないから……パクリコンは出るんだろう?」
「出ます、一応友達が誘ってくれたので其れに釣られて、って形にはなるのですけれど」
「まあいいわ。鎧甲も継承されていかないことには進歩しないもんね。パクリコン、しっかり使ってやるのよ」
「お前なら立派に使いこなせると信じているからな」
「はい、ありがとうございます!」
 パクリコンは深々とお辞儀をした。
「さてと、パクリコンに会う用事は済んだし……どうします」
「そうね、日本観光でもしましょ」
「そうですね」
 セリーニーとシルバヌスはパクリコンに、日本の何処が今一番熱いかいろいろ尋ね、今後の日本観光の方針を立てることにした。
(つづく)

ラザフォード散乱

 衝突パラメータを設定しなくても、量子論のフェルミの黄金律を使うだけで結構あっさり結果が出る。そのためにはデルタ関数や積分値を知っていないといけないけれど。
 9時すぎに起きた。架空のハリポワールドを冒険する夢を見ていた。ハリポの誤訳ばっかり読んできたからだ。
 適当にネット巡回していた。レオルドが、コミュについて知っていた。ジョンジは自分がジョンジと呼ばれている事自体に気付くべきだ。
 朝餉戴いた。カレーウドンだった。
 二限現代実験物理学に出席した。ああ、今学期私が取っている講義って全部「物理学」ってつくのね。現代物理学入門、化学物理学、物理学実験Ⅱ。相対論的運動学は1年生の復習みたいで簡単だった。フェルミの黄金律の導出は懐かしかった。其れを応用してラザフォード散乱を簡単に出していたのには驚いた。こっちの解法を憶えよう。
 終わったので図書室に行く。げ、理科年表が無い。レポートの支障になるぜ。あとリーゼさんの評価が低い本を発見した。書き直しを要求する。少なくともリーゼさんがハーンに「師事した」というのは本当にごく一部からの見方でそうなるだけであって、実質リーゼさんとハーンは同等な立場だった。差別したことを正当化するのもどうかと思うけれど、あとオージェ電子の発見もカウントしてほしかった。
 終わったので帰る。
 レオルドのお薦めで、「Live in Despair」を落とした。なかなかいい曲だ。
 ひょっとして腎盂を終わらせたら、もうピチせかのSSを書いたらいけないのだろうか。難しいところだ。確かにいっぱい死ぬ。だけれど死んだからって過去話を書いていけない決まりもない。だがやや心が締め付けられる。
 あるコメディ映画の俳優が死んで、そして追悼式で其のコメディ映画を流す。みんな俳優を偲んで涙を流す、コメディ映画なのにだ。そういうところがあると思う。

 昼餉戴いた。ツナサラダだ。
 アカフダドウでトイレットペーパー198円だけ買ってきた。ほかは大して安くない。
 ずっと腎盂を書いていた。ロリパが出てきた。
 今週の5D’s実況。
・ちょっと作画が変わった。
・ステファニー可愛い。
・ジャックからのバトン。
・「此のクロウ様がこんなとこでくたばるわけないだろ?」凄い死亡フラグ。
・「クロウ、死ぬなよ」死にそう。
・ルチアーノ、なんかご機嫌になってる。
・「マジで死ぬかもな!」
・スピードカウンターを10支払い破壊。
・インフィニティウォール。カード効果の破壊を無効化。
・隠れ蓑のスチーム☆3(チューナー)。
・ブラストを特殊。
・アウロラを特殊。
・スチームはフィールドから離れるとスチームトークン特殊。
・☆7でアーマードウィングになるアウロラ。
・あれ、次の自分のターンまでだっけ?
・スチームトークンは相手モンスターの攻撃力が0になると、相手のモンスターを除外。
・グランエルガード、攻撃対象を装備シンクロに変更できる。
・楔カウンターは装備カードには使えない。そうか……。
・唯一、とかいうなよ、可哀想じゃん。
・ブラックブーストあるじゃん。ガチだなあ。
・10取り除いて、アウロラを破壊。
・グランエルダイレクトアタック。
・ブルーノはなんなんだ。
・ギブリ現る。可愛い。
・ブラックリベンジ。ATK1000以下の鳥獣が破壊されたとき、BFトークンを作る。
・ブースト発動。
・グランエルアタック、1ターンに1度、装備スカノヴァで攻撃できる。
・貫通ダメージつき。
・ブラッククレストトークン、か。
・トークンをリリースし、天狗風の比叡をアドバンス召喚。
・クロウの独り言。長い。
・「カードを信じるんだ。
・シャドーインパルス。
・スカノヴァで残りLP100。
・「まだバトルフェイズは終わっちゃいねえぜ!」
・ダイレクトアタックかATK2000ダメージを受けたら、墓地のBFを2体特殊。
・緊急同調。
・BFDシンクロ。
・クロウの捨て身の戦略。今までで一番燃えた。
・「人は其れを絆と呼ぶんだ」
 あれ……此のアニメの主人公って誰だっけ……?

 2周走りに行っていた。
 家に帰ってシャワーを浴びて体重を測ったら、77.8キログラムだった。うちの体重計は200グラム刻みなので、77.7キログラムを目にすることはない。
 これから4連休になるので、いっぱい腎盂を書こうと思う。

 今日のメッセ。
名前:パクリコン@カップーヌードルごはんを見かけない
サブタイ:喰ってみたいのに。
 何処にも無かった。明日、秋葉原のドンキで探してみる。

 ピチロの世界

 人生、宇宙、すべての答え

 第1章-1

 翌朝のことだった。
 パクリコンはベッドの中でランカシーレと睦言を交わしていた。
「偶にはセックスせずに過ごすのもよかったかもね」
「はい、まあ……パクリコンさんは昨日結局殆どなにも召し上がっていませんでしたし」
 パクリコンは昨日の事実のショックで昼ご飯以降何も口にしていなかった。水を飲もうとしても吐く始末であったからだ。
「もう大分落ち着いてきたから大丈夫だと思う。なんか喉が渇いたから後でなんか飲もう」
「いっそ口移しでもいいですけれど」
「え?」
 パクリコンの脳内には、パクリコンが必死になって嘔吐を我慢しているところにランカシーレが接吻している図が描かれた。
「いや、きちゃないのはやめよう」
「どういう想像をなされたのか存じませんけれど、唾液の交換ができるのであるのなら、人肌の温度の液体でなら摂取できるのではないかと思っただけなのですが」
「ああ、そういうことか……きちゃないよ」
「パクリコンさんは私の唾液をなんだと思っていらっしゃるのですか」
「そういう意味じゃなくって……」
 説明にしどろもどろなパクリコンに、ランカシーレは笑った。
「ぷすーくすくす。分かっておりますって」
「分かってるなら言わないでよ……」
「分かっているからこそ申しますのですけれどね」
 パクリコンはランカシーレのそういう側面が未だに苦手だった。
「そろそろ時間ですので、私は仕事に行く準備をしてまいりますね」
「ああ、うん」
 ランカシーレがもそもそとベッドからおりたので、パクリコンもベッドから出た。

 二人はシャワーを浴びて其処にあるものを着た。パクリコンはランカシーレの裸には見慣れていたが、しかし彼女の身体のあちこちに残る傷跡だけには、折角の綺麗な躯体なのに、という勿体無さを感じていた。ランカシーレにとっても其の一群の傷跡は自分の忌々しい過去であり、消してしまいたくても消せないものであった。ランカシーレはパクリコンと、あと一緒にお風呂に入ったことのあるレビアにしか此の傷跡のことを話していなかった。そういうわけでランカシーレは普段から露出度の高い服を着ることをあまりよしとせず、少なくとも肩と脚は見せないようにと、スリーブがあるシャツとジーパンを着ることが多かった。仕事に行くときはスカートを穿くが、ストッキングがあるので大して気にはしていなかった。
 パクリコンはランカシーレがシャツを着て髪の毛を全部外に出すところで、ふと気付いた。
「ランちゃん、今まで気付かなかったけれど……あ、いや」
「何です?」
 ランカシーレは振り向いて言った。
「あんまり根掘り葉掘り訊く心算じゃないんだけれど……首のところにもなにかの跡があるよね。其処も……」
「いいえ、違います」
 ランカシーレはそれだけしか答えなかった。
「じゃあ……どういう……?」
「帰ってきたらお教えします。それでは、行ってまいります」
「あ、うん、行ってらっしゃい……」
 ランカシーレはパクリコンの家を出て自転車を押し出してきて、集配所のほうへと自転車をこいでいった。
「違うって……じゃあなんなんだよ……」
 パクリコンは腑に落ちないまま玄関のドアを閉めた。

 パクリコンが朝食を作っていると、携帯にメールが届いた音が聞こえた。
「誰からだ? ……セルクタスか。珍しいな、セルクタスがこんな時間帯に、って」
 セルクタスとはGx団の一人で、パクリコンの親友だった。
「ええっと……なんかレオルという奴がレオルドにピチトルを挑みに来たからどうしよう。か……。レオルって誰だ。レオルドの親戚じゃないのか? まあとりあえず……レオルド君にはフルボッコにされて世間の壁を体感してもらおう。っと、此れで送信しておくか。あ、やばい、卵が焦げてる。あー、こびりついたなあ……」
 パクリコンは菜箸でフライパンの底をガリガリと引っ掻いた。

 Gx団の秘密基地、通称Gx基地は茅ヶ崎市にあった。
「レオルドという奴が此処に居ることは分かっている。出してもらおう」
「レオルドなら未だ来ていないから、もう少し待っててよ」
 セルクタスがレオルと自称した男に丁寧に言った。
 セルクタスは色白な男で温厚な性格から皆に好かれていたが、ピチトルの腕は確かなものであった。
「レオルドとの因縁の決着……今つけねばならない」
「なにかあったの?」
「なにかあった、どころではないがな……」
 レオルは話しだした。
「以前、レオルドがフライドとナゲットという仲間を引き連れて俺と3対1のピチトルを強引に仕掛けてきた。俺は善戦し、フライドとナゲットを戦闘不能にさせ、レオルドの鎧甲を粗破壊した。だが……レオルドはしっぷーだかなんかだかという奴をいきなり呼び出して俺に攻撃を加えてきた。もとよりハンディキャップマッチだった上に反則のオンパレードだった。俺はピチトルに負け、レオルドはいい気になって俺を足蹴にした……。許せん!」
「其れは許せないなあ」
 セルクタスは相槌を打った。
「だから俺はレオルドを此の手で倒し、奴を屈服させることで俺の実力を示すのだ。俺は俺の仲間達から止められはしたが――そんなことにむきになっても仕方がない、と――だが俺はやるしかないと確信した」
「そうだね。まあ、気が済むまでやったらいいよ。レオルドも呼んだからもう少しで来るだろうし」
 セルクタスがお茶をレオルに差し出しながら言った。レオルはお茶を一気に飲み干した。

 やがてパクリコンの家にランカシーレが帰ってきた。
「ただいま帰りました」
 玄関のドアが開いてランカシーレの声が聞こえてきた。
「お帰り。朝ご飯できているよ」
「ありがとうございます。男の人にご飯を作っていただくなんて私はまだまだ駄目ですね」
「そんなことないと思うけれど。今時ジェンダーフリーがどうのこうのって言われているんだし」
「そうでしょうか。……とりあえずシャワー浴びてまいりますね」
「うん」
 ランカシーレは脱衣所へと入っていった。
「……未だ話してくれないのかな。まあいいけれど……」
 パクリコンは独りごちた。

 Gx基地のドアがウィーンと開いて、レオルドが眠そうな顔でやってきた。
「なんなんだよ……こっちは眠いんだぞ……」
「そういうわけにもいかなくてね」
「レオルド! 貴様! 俺のことを忘れたか!」
「誰だっけお前……レ……レオ……レオポ……レオポル……」
「ポ、の時点で違う! 俺はレオル! 貴様にインチキなピチトルで敗れて以来、貴様をぶっ倒すことだけを考えて生きてきた! そして其れを今晴らす!」
「なんだよ……昼間にしろよ……」
「昼間は仲間がやめとけっていうのが五月蝿くてな!」
「ふん、仲間の言うとおりにしておけばいいものを。俺はあれから新たな力を手に入れた。バーサクの力をな!」
「面白い! ならば俺と貴様とどっちが強いか、一対一のピチトルで勝負だ!」
「いいだろう」
「じゃあ僕はレフェリーやるね」
 セルクタスは、火花を散らしながらピチトル場に向かうレオルドとレオルを見ながら暢気に言った。

「じゃあ、ピチトルゴーファイト!」
「リーダースキル発動! 1ターン3回!」
 レオルドはにやっとレオルを見た。が、
「リーダースキル発動! 常時火薬化!」
「なにっ!?」
 レオルドはレオルのリーダースキルに目を丸くした。
「一体どういう……」
「ごちゃごちゃ言っている暇があったら行動することだな! 俺の先攻だ! 撃つ攻撃レーザー!」
 レオルはAPを11消費して右腕からレーザーを照射した。レオルドは左腕の鎧甲で防御したが、左腕の鎧甲はぼろぼろになって、がたっと外れた。
「そんな威力がある……とは……!?」
「お前の鎧甲も所詮其処までだ!」
「くそっ……撃つ攻撃ライフル! 三連打!」
 スパパパンとレオルドは右腕でライフルを撃ったが、レオルは涼しい顔で其れ等を受け流した。
「効いてない……だと……!?」
「腕が落ちたな、レオルド」
 レオルは左腕を構えた。
「此れで貴様の両腕を捥いでくれる! 狙い撃ち攻撃ビーム!」
 レオルの左腕からビームが照射され、レオルドの脚部と右腕の鎧甲を破壊した。
「なぁっ……!? そのための火薬化か……!」
「そうだ。熟練度や命中など関係ない。当てて貫通させれば其れが最大の攻撃であり防御にもなる。そしてお前は残るは頭胸部鎧甲のみ! さあ、最後のお前の行動を見せてみろ!」
「くそ……ならば、リミッター解除! バーサクモード!」
 レオルドは雄叫びを上げて理性を犠牲に大きな攻撃力を得た。
「ウヲヲヲヲヲヲーッ!」
 レオルドは全身でビタフォースを消費し、レオルに向けて一斉射撃を放った。
「そう来ることは読めていた! カウンターフォース発動! フォース反射!」
 レオルはチェーン発動でフォースを発動させ、レオルドのビタフォース、一斉射撃を全て跳ね返した。ズガガガガァーンという音がして全てレオルドに一斉射撃のダメージが直撃した。
「がはああっ!」
 レオルドは衝撃で後ろに吹き飛ばされ、頭胸部の鎧甲は破壊された。
「其処まで! 此のピチトル、レオルの勝利!」
「まだだ!」
 レオルは叫んだ。
「俺はレオルドから受けた屈辱を全て返済するまで奴を屠る! 喰らえレオルド!」
 レオルは倒れているレオルドに右の拳で思いっきり殴りつけた。
「ま、待って! ピチトルはもう終わっているんだ!」
「そんなの関係ない! 俺はこいつを……!」
「駄目だ! 此れはルールだ! 戦闘不能な人に攻撃を加えることは……」
「煩い!」
 レオルはセルクタスに向けてレーザーを撃った。セルクタスは右腕で其れを防御し、そして言った。
「どうしても言うことが聞けないというのなら、僕が君の相手を……」
「なにを!?」
 レオルとセルクタスがにらみ合った、そのときであった。
 Gx基地のドアがバキーンと破壊され、其処から80センチくらいの薄茶色の毛皮に茶色い縞の入ったアナグマのようなピチロが顔を出した。
「げーほげほ……こっちにレオルって奴が来なかったか!?」
「ああ、此の子だけど……」
 セルクタスは訳が分からず答えた。
「レ……レオル! 其れ以上レオルドを痛みつけても、お前の過去は変わらないんだ! やめろ!」
「五月蝿い! 俺は……俺は……!」
「お前等、レオルを取り押さえるぞ!」
「おー!」
 其のピチロに続いて5人くらいのピチロがだだだだっと基地内になだれ込んできて、レオルの右腕左腕を雁字搦めに取り押さえた。
「離せ! ネークシル、俺はこいつに……」
「レオル、お前がやりたいのは復讐以上に只のうさ晴らしでしかない! いい加減気付くべきだ!」
 ネークシルは叫んだ。
「黙れ!」
「くそ、ノルム! 一旦レオルの鎧甲を全て破壊しろ!」
「任せろ!」
 ノルムと呼ばれた、黄緑の身体に所々緑色のある、緑色の尾が長いピチロが右腕と尾をレオルの鎧甲に対し、一閃した。レオルの鎧甲が其々破壊され、砕け散った。
「くそっ……最後に一発殴らせろ! 俺は……俺はそうしないとこいつに対して気が済まない!」
「モナド! レオルを気絶させろ!」
「おうよ」
 ネークシルにモナドと呼ばれた、大きな躯体で紺色の背中に鋭い爪のあるピチロがレオルの鳩尾に鋭い蹴りを入れた。
「がはあっ!」
 レオルはがくっと気を失い、其の場に倒れ臥した。
「此れでよし、と……。あ、どうもすみませんね、レオルが勝手に暴れてきてしまって」
「いや、まあレオルドの過去も過去だし、其れはしょうがないと思うけれど」
 セルクタスはそう言ったけれども、正直未だレオルはやりたりていないように思えた。
「じゃ、帰りますんで、どうも失礼しましたと」
「あ、うん」
 モナドがレオルを担いで、ネークシル等は帰っていった。
「……なんだったんだろな」

 海老名でパクリコンとランカシーレは朝食を摂っていた。
「卵焼きには味醂と醤油だよなあ」
 パクリコンは熱々の卵焼きをほおばりながら言った。
「バター、という手もあるのですけれどね」
「バター……なるほど!」
 ランカシーレのそういう料理に対する発想には、度々パクリコンは舌を巻いていた。
「本格的なレストランなどになると、生クリームまで入れるそうですけれどね。あとはチーズをいろいろ入れて、特に……」
「ランカシャーチーズとか?」
「其れは面白いですね。今度やってみましょう」
 ランカシャーチーズとは、イギリスのランカシャー地方で産出されるチーズで、酸味と塩味が仄かに利いておりマイルドで非常においしいチーズだ。
「ランちゃんって……自分の名前がチーズだの地名だのなのに、あんまりそういうコンプレックスは無いよね」
「全く無いですね。寧ろ誇りに思っておりますから。ランカシャーチーズは見目も綺麗ですし、やっぱり……えへへ」
 ランカシーレは一人で照れていた。
 ランカシャーを英語で書くとLancashireなので、ドイツ語圏のオーストリア人であるランカシーレは其れをドイツ語読みしたものを名前とされた。唯一、ドイツ語なら、シ、はschi、の筈だ、というのが気がかりなところではある、と以前ランカシーレが言っていたくらいで、自分の名前がチーズであろうと地方名であろうと、あまり其れはランカシーレの人生に支障は無かった。
「ちっちゃい頃はインディゴインディゴと呼ばれておりましたので、そちらの方が寧ろ嫌でした」
「まあ……其れは、そうだろうなあ」
「あとはまあ半人半獣という……まあお察しのとおりで」
 ランカシーレの25%混じっているピチロの血が、彼女を被差別の身へと追いやったのだ。詳しい話を以前パクリコンはランカシーレから聞いたことがあり、ランカシーレのそういう自分と重なる部分にパクリコンは大きく共感した。
「半獣なんだからフォース使えてもおかしくはないよね?」
「はい、ですがフォースなんて訓練しないと使えませんでしょう」
「そんなことはないけれど……でも、家系的には使えてもおかしくないんだけれどなあ」
「そうでしょうか。私はフォース自身にはあまり興味がありませんので」
「でもフォース使えたら、道端で強姦されかけたときになんとかなるんじゃないかな」
「私は強姦されかけたときに黙って強姦されるだけの莫迦みたいな覚悟なんて持ち合わせておりません。何のためのフィットネスだとお思いなのですか」
「でもいざ強姦されると恐怖でいろいろと……」
「じゃあパクリコンさん、ちょっと強姦してみてください。抵抗してみせますから」
「いや、そういうことはしたくないけれど……」
 パクリコンはランカシーレに、どんな些細なことであろうとも、暴力じみたことや強引なことをしたくなかった。其れがランカシーレの昔の記憶を掘り起こすことにもつながりかねないから、という意味合いが大きかった。

 茅ヶ崎市の中央通りを先ほどGx基地におしかけた6人と、モナドに担がれているレオルの姿があった。
「ねえねえ、レオル君どうする?」
「どうするって……」
 ちびな女の子のピチロに問われて、ネークシルは戸惑った。
「連れて帰るしかないよ。そいで他の奴等にどっかに行ってもらう。此れ以上茅ヶ崎にこんなわけの分からんのが居られたら困るよ」
「そうだね」
 一方列の最後尾でノルムが、水色の同じくらいの身長の女の子に話しかけていた。
「ねえねえ、ボクの技、またパワーアップしたよね? 見てたよね?」
「そうかしら」
「だって鎧甲一撃だもん。ボクの新緑の刃は今やネー君を超えた」
「なんか言ったか?」
 ネークシルが振り向いて言った。
「な、何も言ってないよ……ねえ、レマちゃん」
「そんなのでよく言えますよね」
 レマはノルムに冷たい視線を浴びせた。
「あー、こいつ担ぐの疲れた。誰か代われ」
「文句言わないの。モナド君が一番大きいんだから」
 モナドは、隣で空中をふよふよ浮遊しているピチロをにらんだ。
「アフィンはちびでちっこいからいいけれど、こういうのは全部毎回俺の仕事になるんだ。不公平だろ」
「好きでちびやってるわけじゃないもん、ねー、イデアちゃん」
「だよねー」
「くそ……」
 モナドは諦めて歩き続けることにした。

 海老名市のパクリコンの家では、朝ご飯が終わって縁側でパクリコンとランカシーレがのんびりしているところであった。
 ランカシーレは昼間はフィットネスに出かけることが多いのだが、午前中は基本的に暇なので、パクリコンも其れに便乗して縁側で一緒に居ることが多い。
「あ、ねえ、ランちゃん、よければでいいんだけれど……」
「分かりました」
 パクリコンが最後まで言い切るより前にランカシーレは言った。
「毎回そうだけれど、なんで俺の言いたいことが分かるの?」
「簡単ですから。でも……そうですね、此れをお話するに当たって二つ三つ、いいですか?」
「うん……なに?」
 ランカシーレは一息入れた。
「私のことを莫迦な奴だと……まあそう思われても構いませんけれど」
「思わないって」
「それと、過去は過去だということを分かっておいてください」
「うん、そうする」
「ではお話します。……私の両親は私が12歳のときに離婚しました。お母さんはスイスのジュネーブへと帰り、私はオーストリアのウィーンでお父さんと一緒に暮らしていました。家事は殆ど全部私がこなし、其れでもなお体罰や折檻は続いていました。或る冬の日、私はスイスのお母さんにと、マフラーを編むことにいたしました。もともと編み物は得意でしたので、比較的順調に仕上がっていきました。或る日お父さんに、此れはなんなんだ、と訊かれたので、お母さんにプレゼントするためのものです、と答えました。するとお父さんは、あんな……ちょっと汚い言葉なので伏せますけれど……に渡すような真似はするな、と言い、滅茶苦茶にして私を殴っていきました。私はいっぱい泣いて、もうこんな暮らしは続けていられない、と確信しました。ですから私は、其の解けかかったマフラーを首に巻きつけ、かた結びをしました。そしてもう一端のマフラーを、台にのぼって家の庭の木に巻きつけました。今私が台から飛び降りれば、確実に死ねる、自殺ができる、そういう状況でした。私には迷いがありませんでした。もう私は死ぬべきなのだと、死んでしかるべきなのだと、もう充分すぎるくらいに生きるうえでの苦痛は受けたのだと思いました」
 パクリコンは何も言えなかった。
「仮令将来私がどんなに素敵な人と出会えようと、どんなに素晴らしい人生に転向しようと、どんなに幸せな家庭を築けようと、そんなことは関係ないと思いました。ですから私は立っている台を蹴飛ばそうとしました」
 ランカシーレは俯いた。
「ですが……どうしてもできませんでした。自分で自分の死に対しての恐怖を感じました。捨てるものなんて無いのに、其れでもできませんでした。滑稽ですよね、何にも固執するものなんてないのに、いざやろうとすると少しもそんな勇気がないだなんて。そうこうしていると、通りがかりの人が私を見つけたのか、莫迦なことはやめろ、と急いでやってきました。そのとき……私は台の上でバランスを崩し、文字通り木とマフラー一つで首吊り状態になりました。意識を失い――後から如何考えてもあれは死んだものだと思いました。ですが暫く経って、病院で私は意識を取り戻しました。脳や身体の障害が出るかもしれない、とも言われました。精神科医にかかり、私は塞ぎ込んだ自分の心のありようを示しました。何の解決にもなりませんでしたが」
 ランカシーレは少し上を向いた。
「お父さんからは、あの侭くたばればよかったのに、とも言われました。本当に其のとおりだと思いました。そして庭の木を見ると、まだマフラーの残片が枝に巻きついていました。私は其れを手に取り、もはやお母さんに渡せられえるようなものではないようなマフラーの残骸を捨てようかとも思いました。けれど……どうしても捨てきれず、庭に埋めることにしました。誰にも知られることなく、悠久の時を超えて、また誰かが見つけたときに、其れが私の人生の節目の一つであったと暗に分かるように、と。ですからあのマフラーの残骸は未だウィーンの家にあります。今となっては何の意味もないものですけれど……でもいつかは土に還るでしょうね」
 ランカシーレは深呼吸をした。
「はい、以上です。本当にくだらなくてしょうもない話でしたけれど、此れでご満足していただ……」
 ランカシーレはパクリコンを見ると口を噤まざるをえなかった。
 パクリコンはランカシーレのほうを見ながら眼を見開いて涙をだらだら流していたのだった。
「如何なされたのですか、パクリコンさん……?」
「ランちゃん……! 君が……本当に生きて戻ってこられてよかった! 君の生き死にで未来は大きく、こんな海老名ででも変わることもあるんだ! 君が生きていてくれて本当に……本当によかった! 君にはきっと此処まで生きてこられた意義がある筈なんだ!」
 パクリコンはランカシーレに抱きついた。
「ランちゃん……!」
 ランカシーレにはパクリコンが此れほどまでに感銘を何故受けたのか分からなかったが、其れでも抱きついてくれていることには嬉しかったので、暫く此の侭時を過ごすことに決めた。
(つづく)
プロフィール

パクリコン

Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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