なつの、がっこう その4

 露天風呂から眺める星月夜は、海の匂いに満ちていた。

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 ビュッフェ形式の朝食を摂りつつ、むにゃむにゃと咀嚼していた。
 なんだかやたら蠢くものを胃袋に放り込んでしまったような気もするが、いずれ消化されるさ……いずれな……。

 午前の講義は有限温度有限密度系のQCDの話がメインだった。相転移とかは面白かったし、中性子星の半径と質量の関係などには目を見張るものがあった。
 とはいえ……だ。
 ホワイトボードに生成消滅演算子が書かれ始めると、
「やはりこうなるか……」
という思いを抱いた。もちろん理論の人たちはこういうものを楽しみに来ているわけなのでこれは当然の帰結なのだけれど、パクリコンはそっとノートをめくって個人的な数学の証明を楽しむことにした。
 こ、講義はちゃんと聞いていたよ?


 個人的な数学の証明。
「ユークリッド平面上で、ある面積をかこむ周が一定であるとき、その面積が最大となるのは円のみである」
という命題を代数的に示そう、というものだ。
 これを幾何的にやろうとすると割と簡単なのだけれど、代数的にやろうとするとしんどい。とくに「円のみである」という十分条件の部分が厄介だった。
 けれどいずれ示せるさ……いずれな……。


 昼食をはさみ、仕事に戻る。

 漫画だけどな!
 これで『世界樹の迷宮へ』の漫画が2話分(2区切り分、2区間分。なんだかしっくりこないが、とりあえず2塊だ)進んだ。ランが可愛いのはもうどうしようもないくらいに当たり前の事実として話が進んでいるけれど、やはり自分の手で表現できるととめどない感慨に襲われる。ラン可愛いよラン。

 夜の研究会に出る。
 今回は聞く専門だったけれど、なかなかためになる研究会になった。今回はそれぞれの発表者のスライドを回収する係を仰せつかっているので、発表者のみなさんとお話しながらスライドを集めていった。
 これもすべては物理学の為だ。ワンフォーフィジックス、オールフォーフィジックスだ。

 クォンタムの冒険第2章だかでエルヴィンが、「すべては物理学のために、物理学はすべてのために」という言い回しを使っていたけれど、それとは微妙に違うな。
 まあいいか。

 お風呂に入る。
 露天風呂に浸かりつつ、空を見上げる。海の鈍色を映した模様を呈していた。あの雲の向こう側に無限の神秘とロマンを秘めた宇宙が待っている。
 待ってろよ、元素合成。俺がお前を明らかにしてやる。

 そんな意識の高ぶりを感じながら、お布団にもぐった。
 ランは何を目指して生きているのだろう。
 きっと俺じゃ想像のつかないようなことを考えているのだろうなあ。
 分からなくとも分かろうとし、一歩前に踏み出て手を差し伸べることはできる。
 そんなことを考えていたら、眠りに就くことができた。

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