ジョルトバーニングいかずちー!

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 謙遜過剰な前置きをする絵師に対抗して「全身全霊を込めて描きました」とコメントにこの絵を添えてツイートした。
 そしたら髪留めを忘れていることに気付いた。

 ゴメンよぉ、雷ちゃん!

~~~


 朝起きると目の前にレビアちゃんの寝顔があった。
 この数日は何故かベッドの上でレビアちゃんを真ん中にして川の字で寝ている。ここのところ我が愛しのランカシーレさんが身体を壊したため先にベッドの端でお休みになっているので、やむなく真ん中にレビアちゃんで反対側の端に俺という形で眠らざるをえない。
 真ん中が俺でも良かったのだが、レビアちゃんが夜の活発さを発散させることで床上で朝を迎えることを阻止すべく俺が端になった。
 どうやらドイツには「寝相が悪い」という表現が無いらしい。

 ランカシーレさんがお疲れのようなのでそっとしているけれど、毎晩レビアちゃんと小声でいろいろと話している。普段ランが近くにいたらしないような話を寝ているランの隣でやるのはややおっかなびっくりだったが、それでも「せっかくの夏休みだし……」ということで普段しないような話をするのは心のリフレッシュになる。


 そんな朝。
 皆に料理を作ったり、研究だと称してシミュレーションを行ったり、植物さんに、
植「さっきの音って何だったの?」
俺「受粉ごっこだよ」
と話したり、コーラの空きペットボトルでボウリングしたり、フィギュアの手入れをしたり、本を買ってきたり、クッキーを焼いたり、雷を出撃させたり、VSスーパーマリオブラザーズで7-4まで行けたり、迷路の抜け方を覚えていなかったがためにゲームオーバーになったり、「いなまずの本気を見るのです! にょろ~ん」という身体を張ったギャグの練習姿を姉妹に見られた電の気持ちを考えたり、皆で中秋の名月を眺めたり、愛の告白会になったりしていた。


「月が綺麗ですね」
「死んでもいいくらいですか?」
「もちろんです」
「ですがこちらは朧月夜ですよ?」
「構いません。それより一緒に見ませんか? そちらに伺いますよ?」
「本当に想いがあるのなら、月がなくても迷わないでしょう?」
……という模範解答を教えてもらった。




 ランが先にお休みになっている隣で、ベッドに腰掛けてレビアちゃんと小声で話していた。
 シミュレーションを断続的に続けながら、他愛もない話から将来の話に至るまで延々と話していた。

 夜も更けた頃に、レビアちゃんが「一緒にお風呂に入ろう」と言ってきた。
「なにゆえ?」
「お風呂場でしか話せないこともあるじゃん」
「うん。うん……? なんだか乗せられてる感が半端無いけれど、レビアちゃんの水着あるっけ?」
「あるよー。よし、じゃあ行こうか」
「ならいいか。……まあ水着無しの状態をお互いに見たことがあるくらいだしなあ……」
「じゃあ今回も無しで一緒にお風呂入る?」
「KEKKO-DEATH!」
という具合で、脱衣所までエスコートした。距離にしておよそ2メートルの大旅行である。
 水着に着替えて、お風呂場に入る。
「普段は近くにいすぎて気づかなかったけれど、コイツ意外とエロい体してんな」
「……」
「……って思った?」
「いや、全然」
「ちぇー。けちー」
「だって前からレビアちゃんの身体ってエロいと思ってたもん。なにをいまさら」
「……」
「……」
「そういうことに限って真顔で言うんだね」
という具合でレビアちゃんを浴槽に入れて二人で頭を洗った。
 レビアちゃんって髪の毛を下ろすと本当にアダムスファミリーに出てくるキャラみたいになる(『アレとの戦い』参照)。いつもレビアちゃんが後ろに回している髪成分の大半は前髪だから、どえらいものである。
「ヘッドギアが無いとおさまりが付かないんだよね」
「いいじゃんそれでも。よくぞそれほどの御髪を湛えたものだよ」
「湛えるだけなら誰でもできるけれどね」
「でもその鴉の濡れ羽色は誰もが欲しがると思うぞ」
「そうかな」
「そうだよ」
という具合で頭を流した。
 続いて身体パートである。身体を洗いながら、最近のことを話した。
「"Take care of yourself!"という言葉があってね……」
という話にはズシッとくるものがあった。何気ない日常での"Take care of yourself!"には単なる気遣いや挨拶程度の意味合いしかない。しかし次第に無理が祟っている相手と日々接していく中で、相手の真正面に立って真顔で"Take care of yourself."と叙述することにこそ何よりの意味がある。普段は「挨拶の言葉。特に意味は無い」と思っていた言葉の意味を再認識することで自分を客観視し、日頃の他愛のない諸々の事象の大切さを再確認して自分の生き方や姿勢を見つめ直すことはとても重要だ。そういう中でここぞというときに"Take care of yourself."という言葉を紡ぐことはお互いにとってとても為になることであり、そういう存在を求めることは中庸のスタイルを保つために必要不可欠なものだ。そして今俺は"Take care of yourself."の意味をもう一度考えるべきである。内なる世界と外なる世界の間で常に板挟みになっているyourselfのcareをすることを忘れがちになっているので、今だけでもいいから体を洗いながら自分を見つめ直して。
 そんなことを言われた。
 「どこをどうcareしたらいいか分からない」と言うと、「どこをcareすべきか、という視点じゃなくて、何のためにあるのか、という視点で考えてごらんよ」と言われた。自分の身体や能力に始まり仕事や義務には必ずその存在意義がある。何を目的として何を果たすためにあるのかが予め設計の中に組み込まれているので、その設計思想を読み取ることでそのもの本来の持っている意味(レビアちゃんは『美しさ』と言っていた)のプライオリティを守ればいい。全体におけるそのものの位置づけを考えつつあるべきままを維持することが最初のステップだ。それさえ見つければあとは楽だ。
 そんなことを言われた。
 お風呂から出て一旦別々になり、服を着た。
 洗面台の前でレビアちゃんの髪の毛を後ろから乾かしていると、
「まあcareといっても、世の中にはいろんなcareがあるからなんともだけれどね。退行だってcareには違いない。だけれどもっと大脳新皮質に頼ったやり方でcareしたいよね」
と鏡の中のレビアちゃんに言われた。そしてややあって、
「したいよね、って言っても、あたしがそう勝手に思ってるだけだけれどね。あたしの自分勝手な方法論として頭の片隅にでも置いといてくれると嬉しい」
とレビアちゃんは付け足した。

 忘れられないお風呂になった。


 そしてベッドに向かうとランカシーレさんが今日も先にお休みになっていたので、俺はレビアちゃんと一緒にランの待っているベッドの中にもぐりこんだ。
「あたしたち、新婚さんみたいだね」
「新婚の旦那は妻の身体を改めてエロいとは思わないよ?」
「(小声)ランちゃんの寝ている隣でそんなこと言わないの!」
「(小声)ランさんの寝ている隣でこんなこと言わせないの!」
「(小声)……んもう!」
 そう言ってレビアちゃんは俺のほうに身体を傾けた。
「こうなったらパクリコンさんの寝顔を見ながら寝てやる」



 今年の中秋の名月は、ほんとうに美しいものだった。

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Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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