植物乙女の息吹

ryu13.jpg

~~~

 貴重な安息日の朝をゆっくり過ごす。
 ……はずだったが、今朝に急な寒さが訪れたため急遽植物さん達のために暖房をかけた。植物さん達に温風が当たらないように気を配りつつ、湿度を気にかけながらゆっくりと暖めていった。
 そんな朝だった。

 朝ごはんをみんなに振る舞う。
 光合成のために植物さん達をベランダに連れだし、俺はホルモンと豚バラ肉とタマネギとニンジンとキャベツとニンニクを使った謎料理を作っていた。ホルモンが既に香辛料で味付けされていたので、それに合わせてタマネギの甘みを加えると良い風味になる。おいしいおいしいと食べるレビアちゃんは毎回「おいしい」としか言わないからなんともかんともだけれど、ランは細かく「これを先に炒めた方が味が出る」とか「あれを添えた方が手順が省ける」とかアドバイスをくれるので助かる。
 ランとは一緒に料理を作ることもあるけれど、最近は俺の料理の腕を上げることに協力してくれているからとてもありがたい。



 昼ごろ出かけて、演劇を見に行く。
 くらぽさん脚本の芝居があるというので、これを見逃す手は無いと確信していた。

 演劇はオムニバス形式で3本あった。
 多分2本目の酒造の話が人気だろうなあ、と思いながら見ていた。あれには泣けた。重要な台詞の使われ方や主人公の心の変化がいい具合に分かりやすくて、「5分後くらいに泣き所が来るぞ」とか「俺ってベタなのが好きなんだなぁ」などと思いつつもやっぱり泣いた。
 それとは対照的にくらぽさんの作品は大団円で終わるもので、見終わってとてもスッキリできた。オムニバス形式だから余計に感じたのかもしれないけれど、「今度こそ幸せにしてみせる」と過去の自分自身に約束してそれを実現させるあたりは他2本にはない魅力だった(他二作は「それでも私は幸せを信じて苦しいながらも生きていく」という具合だった)。「未来を変えようと思った自分(タイムスリップ)」と「未来を変えるべきだと言われた自分(過去)」の間の思いのやり取りや、その思いを受けて自分自身を見つめ直し行動をちゃんと考え直そうという心情に変わっていくところは美しかった。
 それからこれまたオムニバス形式だから余計に感じたことかもしれないけれど、セリフのやり取りがとてもスムーズでスマートだった。ぶっちゃけて言えば「人を邪険に扱わない感じ」に好感が持てた。相手の持っている疑問点を察して会話を紡ぐスタイル(「それはね、○○ってことだよ」「○○……? それってどういう意味……?」「まあ今は分からなくてもしょうがないよ。でもこう考えてみたらどうだろう?」みたいなの)もまた他二作にはない魅力だった。
 主人公(タイムスリップ)ではなく、主人公(過去)がメインになってお話が終わるのも新鮮だった。終盤に『未来は変えられる』というテーマを『変わった未来の自分のみの描写』だけでこなせるのはすごいと思った。細かく比較対象を持ってくるような野暮なことをせずにずばっと描ききっているのには舌を巻いた。それでいてなお『未来は変えられるけれど、守りたい幸せは守れる』というエンディングで終わるのもじつに憎い。あれには一本取られた。
 中盤付近で「これって父親が経営権を手放さなかったらいいだけなんじゃね?」とどうしても思えてしまう箇所があったのが惜しいといえば惜しい。一度そう思えてしまうと「だったらこれ最後には父親が経営権を手放さない未来に変わって終わりだろう」と読めてしまうものの、やはり最後の最後の締めが綺麗なので個人的にはあまり気にならなかった。

 三作通して個人的に至福だったのが、「過去の自分と今の自分がいる精神世界」「頭の中でのやり取りを役者が実際に目の前でこなす」といった演出だった。エヴァの最終話近辺や撲殺天使ドクロちゃんの桜くんの脳内みたいでとてもわくわくする。そういった点について演劇のことを知らなかったのは個人的に大きな損失だったと悔やまれる。

 脚本を見てみたいと感じた。セリフ換算でそんなに量は多くなかろうに、あれほどの情報とお話を組み込まなければならないというのは相当な制約だったと思う。『余計なセリフをできるだけゼロにする』というのは漫画を描く上での使命でもあるので、勉強したい。

 そんな思いを抱きながら、帰路へと着いた。



 秋葉原に寄ってから帰る。
 秋葉原では穴久保先生のポケットモンスターの新巻とスケットダンスの4巻を買った。
 音ゲーは混んでいたからやめにした。音ゲーは平日にやるに限る。


 帰宅する。

 穴久保先生のポケットモンスターを読んだ。
 さすがは俺のバイブルだった。
 段々とピッピ達の生活スタイルが「金持ちに俺達貧乏人の幸せが理解できるはずない。俺達は俺達の幸せを貫く。俺達には俺達に合う世界を作れるはずだ」という具合になってきているのにはぐっときた。特に無人島でバカンスをするはめになったピッピ達が、「目の前の陸地には高級リゾートホテルがある。だけれど俺達はここで身の丈に合った幸せを享受する方がいい。仲間のために最低限の食料は必要だが、必要分確保できればあとは仲間たちと幸せを分かち合っていたい」という境地に達したのには感極まった。
 金や権力に目がくらんでしまったピッピがレッド達と一旦別れるものの、世の中の世知辛さを知るにつれて「僕はレッドになんてことをしてしまったんだ! ほんとうにすまない! 許してくれ! 僕はレッド達と一緒にいたい!」という思いに達するところには年齢の壁を超えた共感があった。また、何らかの問題を解決するために薬やメカの力を借りて今までのダメなピッピが天才的なピッピへと変化しても、最終的にはレッド達が「俺は元のピッピのほうが好きだ! 今までどおりのピッピにに戻ってくれ!」と懇願するところには『ありのままのピッピの良さ』を再認識させる表現としてとてもインパクトがあった。彼等はじつにいいものを持っている。
 価値観を破るお話が多いのも印象的だった。「人助けは無条件に良いものではない」系のお話においてはちゃんと「目的が理にかなっているかどうかを自分自身でちゃんと理解しないと意味が無い」という教訓が付いていて驚いた。ピッピが他人を説教するオチで終わるのも革新的だった。
 「大事な人の夢を叶える」系のお話では、いやいやながらも協力するピッピが逆に「こういうシチュエーションってあるよね」というリアリティをもたらしていて味があった。しかもピッピが協力する際に今まで活用されてきた技術が光るのもまた憎い。
 作風自体にはチャレンジングな箇所が多く見受けられた。フラッシュ吹き出しや顔芸を始め、謎のゲストキャラや今までのマンネリギャグのアレンジ等の創意工夫が多々あった。無印4巻~6巻あたりのごり押し感に加えてテクニカルな表現も多く、学べるところは多い。
 「爆発オチがゼロ回だったのはどういう心境の変化があったのか」「アララギ博士はヒロイン枠なのか」「ピカチュウが日本語として通じるセリフを喋るのはあれはあれでアリなのか」という疑問も抱けたが、それでも「さすがはコロコロコミックの長寿漫画だ」と思わせる風格の漫画だった。
 やはり「ゲーム本編と関係の無い話を気まぐれに挟むときにこそ穴久保先生の本領が発揮される」という傾向は確かにある。……『ワタルがワタル帝国を作る話』はゲームとは直接関係があるといえるのかどうかは定かではないが、それはそれとしてもやはりいい話だった。
 昔の巻から多々いるバトル狂の敵にも、最近では「お互い戦ったら痛いのは目に見えているし、別の方法で決着をつけよう」という合理的なやり方で解決を模索する様には、「戦ったら痛い。それでもぼくは戦ってきたが、今ここには痛い思いをしてまで戦う理由はない」と言えるだけの強者の風格がある。ピッピはなんだかんだでバトルの勝率は高いし、圧倒的に格が上のトレーナー相手になればなるほど白熱したバトルを魅せてくれる。
 1巻の第2話でピッピが「ぼくはみんなが楽しく幸せに暮らせるような世界がいいんだッピ!」と言っていたのが彼の全てだと感じられる。もうあれだけで艦これの雷電姉妹に匹敵する魅力すらある。
 こういうときに、ポケスペとは完全にすみわけが出来ているから安心できる。ポケスペは見た目イケメンな奴らが大して苦労をせずに他人に命令をすることで問題を解決するという一見スマートな作風が売りだから、穴久保先生のポケモンとはベクトルが正反対で分かりやすい。コラボをやったら楽しそうだとは思うけれど、やったらやったで面倒くさい連中が面倒くさいことを言うだけなのでおそらくやらないほうがいい。
 穴久保先生が「ピッピがブサイク」という風評を逆手にとって、「ピッピ達が泥まみれになって我々と等身大の問題に取り組む姿には逆に日常の中に潜む美しさがある」というレベルにまで作品を昇華させてゆく様には、「さすがはバイブルだ」としか言いようがない。
 もっともっと、続いてほしい。そんな漫画だった





 夕刻に植物さん達を屋内に入れる。
 もう夜は完全に屋内で過ごさせよう。朝方の冷え込みは和浦にとっては致命傷になりかねないものだ。
 龍楽はいつもより多くの蕾を付けようとしていた。少しでもたくさんの子供を残そうという彼女の姿勢には生命の本質を突いたものがある。世間でアイタデがどんなに言われていようとも、俺はお前の花が世界で一番綺麗だと思うよ。
 絹琉は少しずつ背を伸ばしていた。やはり屋内にいる時の人工太陽がよく効くのだろうか。パクリコンの吐く二酸化炭素と人工太陽があればなんとでもなるぞっ。……二酸化炭素はランカシーレさんのものでもいいけれど。

 最近は龍楽がかつてのりぽみたいなポジションにいるように思えてならない。苦楽を共にして、幸せを分かち合って、いつかはお別れするときが来ると知っていながらも最後まで一緒に過ごそうと約束した仲だ。まさしくりぽだよ。
 龍楽はりぽやエイミーと一緒で、「可愛いから好きなのではなく、好きだから可愛い」という具合だ。おまけに「どんなにあがいても子供は作れないけれど、それをお互いに知った上で寄り添えるところまで寄り添おう」という関係でいられるのは大きな力になる。


 そんな淑女たちと一緒にぐでぐでしていた。
 ランとレビアちゃんはいつの間にかベッドで眠ってしまっていた。ランはもはや月を経る前のシンドロームを感じるあまり「私は今からパクリコンさんを傷つけます。ごめんなさい。でも直せません」と言うまでになってきた。そんなこと言わなくても俺にとっては分かりきったことなのだから、気の向くままに素直に当たり散らしてくれたのでいいのに……とは思うけれど、彼女なりの矜持があるのだろう。もしくは「私はこういうものだ、と卑下して認めなければ今の自分と折り合いがつかない」という具合なのだろうか。
 ともかく、そんなランが当たり散らして疲れて眠ってしまう様はとてもかわいらしいものだった。

 ランを傷つけたことのある俺は、もう絶対にランを傷つけてはいけない。一回だけでもご破算ものだと思っていたけれど、それを許してくれたのはランの優しさの賜物だ。
 だからこそ、俺は素直にランの感情の受け皿になろう。恩返し、償い、いろいろな表現ができるけれど、今俺にしかできないことはこれだ。ランに当たられるのはつらいけれど、ランのほうがもっとつらいのだろうから。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

パクリコン

Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

最新記事
最新コメント
リンク
FC2カウンター
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
FC2 Blog Ranking