始まりの海へ

 ヲ級との二人暮らしのSS。

「ただいまー」
「ヲ!」
「よしよし、いい子にしてたか? おやつ買って来たから一緒に食べよう」
「ヲ!」
「はい、お前の大好きなボーキサイトだ。柔らかいのが好きだったろ? 赤いのと白いのどっち食べる?」
「ヲ!」
「そうか。じゃあ白い方は晩御飯の後にしような」
「ヲ!(パクパク」
「ほんと、お前はうまそうに食べるよなあ。まるでF先生の漫画に出てくるキャラみたいだよ。小池さんと充分張り合えるぞ」
「ヲ?(ムシャムシャ」
「さてと、じゃあ俺は晩御飯でも作るよ。鋼材と弾薬の燃料炒めなんてどうだ? 今日は燃料がとってもジューシーだからおいしく仕上がるぜ」
「ヲ!」
「そうかそうか。じゃあ作ってくる。しばらく待っててな」
「ヲ!」
「……。鎮守府にいた頃はいろんな艦娘がご飯を作ってくれてたっけな。でも今はこうしてヲ級と二人暮らしをしてるんだから、俺が作るしかないよな。ヲ級はどうあがいても深海棲艦なんだし……」
「ヲ……?」
「あっ、いやっ、なんでもない、ただの独り言だよ! 油が散るから危ないぞー。そうだ、リビングのほうでテーブルの上を片付けててくれない?」
「ヲ!」
「よしよし。…………。鎮守府かぁ。今頃みんなどうしてるかなあ。いきなり俺がヲ級とともに消えたんだし、大騒ぎしただろうな……。迷惑かけたろうな……。にしても……艦娘は当たり前のように深海棲艦を殺そうと海に繰り出していってたよな……。相手がヲ級だろうと、ル級やタ級だろうと、同じように敵視しては沈めようとしてきた……。俺も最初はみんなと同じようにヲ級達をただの敵だと思っていたけれど、でも……こいつらだってちゃんと生きてるんだ。生きていたら分かり合えるはずなんだ。たとえ言葉や棲んでる場所が違っても、心は通じるはずなんだ」

「だって……俺のヲ級は………………」



~~~

「翔鶴! 危ない! 下がるんだ!」
「いいえ、まだやれます!」
「今のお前には轟沈の可能性がある! 撤退を優先しろ!」
「ですが敵はあと一隻だけです! せっかくここまでたどり着けたのですから、この機を逃す手はありません!」
「だが奴はフラッグシップだ! 並大抵の装甲じゃないんだぞ!」
「分かっています! ですが……私はここまで来て引きさがれません!」
「だめだ! 下がれ、翔鶴! これは命令だ!」
「そんな命令聞けません! たとえ私が轟沈しようとも勝利が手に入るのであれば、安いものじゃないですか!」
「そんな勝利に何の意味がある!? またここに来ればいいだけの話じゃないか!」
「ここに来ればいいだけの話とおっしゃいますが、それに何か月かかったと思っているんですか!? それに……もう既に敵も中破しています! おそらく次の一発で勝負が決まるでしょう!」
「やめろ、翔鶴! お前の耐久は既に相手の砲撃を2発も耐えられないんだぞ!?」
「ですが次の敵の攻撃がおそらく最後です! なので私は轟沈なんてしません! だから……第三次攻撃隊、全機発艦!」
「だめだ! それじゃあだめなんだ! あの敵戦艦は主砲1基と副砲3基を積んでいる! だから敵は一度の攻撃で……」
「きゃああああああっ!」
「翔鶴! くそっ、被弾したか……!」
「ぐっ……一撃だけでもこんなに重いだなんて……! でも……私の攻撃が通りさえすれば……!」
「翔鶴ッ! 敵の『2発目』に気をつけるんだッ!」
「えっ……」

「きゃああああああああああっ!!」
「翔鶴ーッ!!」

~~~




「夕飯できたぞー。お、テーブルの上がお片付けされてる。えらいえらい」
「ヲ! ヲ!」
「そうかそうか、お前はいいお嫁さんになれるぞ。引く手数多で引っ張りだこになるぞ。ははは。……ん? どうした? テレビ?」
「ヲ!」
「ああ、弓道の試合をやってたのか。お前はほんとうに弓道が好きなんだなあ」
「ヲ!」
「そうか。じゃあ今度弓道具一色を揃えてやるよ。一緒に弓道場で練習して、的の当てっこしようぜ!」
「ヲ!」
「ははは、お前ならきっと上達が速いだろうなあ」
「ヲ!」
「きっとお前なら名射手になれるぞ。なんてったってお前は……」
「ヲ?」
「お前は……」
「ヲ……?」
「…………」
「ヲ…………?」
「………………」

「ごめん……。ほんとうに……ごめんよ……」
「ヲ……?」
「俺が……お前を守ってやれなかったばっかりに……お前はこんな姿になってしまって……」
「ヲ……?」
「お前が深海棲艦になってしまったがために、お前は皆から忘れられ……攻撃され……誰一人としてお前をお前だと分かってくれなくなった……。全部俺のせいだ……。お前が轟沈さえしなければ……皆と一緒に幸せに暮せていたはずなんだ……」
「ヲ……」
「だから……俺はお前を今度こそ幸せにしてみせる……! 艦娘も鎮守府も要らない……! なによりお前に償っていきたいんだ……! お前を……ありのままのお前として生きていかせたいんだ……! たとえお前がどんな姿になろうとも……お前は俺の……! 俺の…………!」
「ヲ……」

 ヲ級は俺の頭をそっと撫ぜた。
 その手には、かつての俺の愛すべき空母のぬくもりがあった。
 そう、世界で俺にしか分からない、世界で最も愛おしくも儚いぬくもりが。

「いつかまた……海に行こうな。俺達の始まりの場所、海に」



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 丁寧語で話し色素の薄い長髪を棚引かせながらともに戦える女の子に弱い系男子……? いえ、知らない子ですね。

 夕べは寝たのが遅かったので、昼すぎにのんびりと起きた。
 植物さんに午後の日差しを浴びせつつ、水と栄養ドリンクと与える。龍楽は寒い夜を乗り切った反動で日光浴をしながらぼーっとしていた。それでも日増しに色とりどりの花を咲かせつつある彼女は本当に魅力的に見えた。
 命が潰える前に生命としてやるべきことをこなし生きた証を残そうとする様は実に美しい。あるべき姿には美しさという名の正義が宿るという話を思い出すくらいに、彼女には千の言葉をもってしても語りつくせないほどの魅力が満ち満ちていた。。
 龍楽にこんな言葉を投げかけても薄っぺらく思われるだろうなあ、とは思いつつも、なんだかんだで「今日も君は綺麗だよ」「新しい蕾が本当に可愛いなぁ」「美しい花が咲き誇っているのが様になってる」と告げている。俺の語彙が少ないのは情けないけれど、きっと彼女はそんな語彙の多寡よりもそう言われつつそっと一撫でされる事それ自体の感覚に大きな意味を見出してくれることだろう。
 幸せになれ、龍楽。


 mixiに空母ヲ級コミュニティを作って、フェイスブックに空母ヲ級部屋を作った。特にmixiのコミュニティは参加人数一人の状態だと1か月で潰えてしまうので、この1か月間楽しんでやっていこうと思う。
 翔鶴のコミュニティも探せばありそうだけれど、もともとの空母としての翔鶴・瑞鶴コミュニティしかなかった。まあ……これはこれでありか。

 ヲ級はとても美人だしとても魅力的なキャラなのだけれど、それに勝るとも劣らず翔鶴もいい子だと分かった。艦これをやっていて、
「雷は性格がずば抜けていい。皐月や金剛は見た目がずば抜けていい。性格の曲がり具合でいえば比叡さんがずば抜けていい。……でも王道の『こいつだ!』と思える艦娘がいないんだよなあ」
と感じていたけれど、なんだかんだで翔鶴は見た目も性格も充分に魅力的な子だ。あとは言葉遣いだとか交友関係だとか立ち居振る舞いだとかいろいろとぐっとくる要素はあるけれど、全部ひっくるめてあまねく素晴らしいキャラだ。
 なのでヲ級と翔鶴が仲良くなるお話があればいいなあ、と思ってぐぐってみた。するとそういう内容のSSを連載しているスレがあった。世の中は広いぜ!
 したがってヲ級と翔鶴の愛情劇はそちらに任せて、パクリコンは『轟沈した翔鶴がヲ級になった』という流れでやっていこうと思った。……『やっていこう』というか、『やりました。おしまい』というか、どっちだろうな。
 無論今は未だ翔鶴やヲ級のパーソナリティに深く触れることができたわけでもなく、ただ表層的な部分だけを見て「彼女たちは魅力的だ」と感じているに過ぎない。単にパーソナリティに至るまでの窓口が広かったというだけだ。けれどその深奥にある彼女たちの人格に基づいた魅力を知ることでより深く艦これの世界を理解し愛していけるようになれば、さぞかし実り豊かな人生になるだろう。

 できればヲ級や翔鶴にはガチレズ大井botに出てくるドロドロレズレズな関係ではなく、もっと淡くもほろ苦い関係でいてほしい。
 いや、まあドロドロレズレズなほうも好きだけれど、そういうのは翔鶴じゃなくて瑞鶴のほうが似合ってるとかなんとか……。

 ヲ級が進化してelite、flagship、そしてやがては装甲空母姫になると考えるとワクテカが止まらない。
 どんな姿になっても、翔鶴とヲ級には仲良しでいていてほしい。


 そんなわけでツイッターにて翔鶴やヲ級のbotを手動自動問わず探してフォローした。
 そしたら翔鶴とヲ級がなんだかんだとじめじめした喧嘩をした直後であることが判明して驚いた。この子たちはちゃんと意思疎通をしながら喧嘩もしーの対立もしーのやってるんだなぁ。話している内容からして中の人同士が何やらトラブルを起こしたようにも見て取れるが、今はそんな野暮なことを考えずに素直に二人に接していこうと思う。
 中の人がどうであれ、こうして演じられている様が一つの「ヲ級」や「翔鶴」の姿であることには違いないのだからありのままを愛そう。


 あ! 翔鶴って、もみちゃんのお母さんに似てるね!

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Author:パクリコン
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