貞潔の朝

 ランとともに目覚めた一日だった。

 ランは昨日のことを引きずっているのか、ときおり「ごめんなさい」という言葉を口にしていた。そのたびに俺は「謝ることなんてない。全部ひっくるめてランはランなのだから、そこに良いも悪いも無い」とあやしては頭を撫ぜた。
 何度かランに「もう私たちは別れた方がいい」と言われた。そのたびに「あれだけ胸の内を吐きだしたら、ラン自身も相当傷ついたことだろうに。今は傷ついた自分自身を慰めておやりな」となだめては背中を撫ぜた。
 ときたまランは「もう私はここにはいられません」と言っていた。そのたびに「ここにいてほしい。俺はランとずっと一緒に居たい」と告げてはランの涙をぬぐってやった。
 ランは最後に「私のことをお嫌いになったでしょう?」と尋ねた。俺は「ランのことを嫌いになったことは今まで一度も無い」と答えた。
「何故です? あれほどのことを申してしまった以上、ただで済むと思っている私ではございません」
「俺は二年前に同じことを別の人にやった。その結果ただでは済まなかった。でも俺と君では、それこそなにもかもが違う」
 そう言う俺に対し、ランは悲しそうな顔で続けた。
「もしパクリコンさんが『あんなことをやってしまった俺に、ランを嫌う資格など無い』と思っていらっしゃるのでしたら、今すぐ私をお捨てなさい。パクリコンさんが今どう思おうと、誰もパクリコンさんを咎めやしません」
「そうじゃない」
 俺は短く答えた。
「俺はランが欲しい。たとえランがどうであろうと、ありのままのランが愛おしい。その思いはそうそう簡単に突き崩されるものじゃない。……たとえ君自身によってでも、だ」
「ですがパクリコンさんは私のことを汚穢で矮小な存在だとお思いになったでしょう? 私よりもレビアちゃんのほうがよっぽどできた存在であるとお思いになったでしょう?」
 ランは荒い息で俺に問うた。俺はただ、
「今俺が『思っていない』と言ったところでランは信じてくれないだろうから、どうとも答えるつもりはない。だけれどそろそろレビアちゃんと比較するのはやめにしないか? 俺は他の誰と比べようとも、ランを選ぶよ」
と答えた。ランはその言葉を聞いてしゅんとなり、布団の中にもぐりこんでいった。

 当分治るのに時間がかかりそうだ、とふと思った。

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Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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