白雪姫、改。後編4

 小人たちが王城に到着しました。

パクリコン「時刻は午後19時3分……いける!」
ライキチ「パクリコンよ。午後7時と19時が混ざって変な表現になってるぞ」
パクリコン「かまわん。二重の確認ができるのはいいことだ。……さてと、各々持ち場の担当は完全に把握しているいるな?」
レビア「とーうぜん!」
ラー「まかせろってーの!」
ワイ「どーんとこいなのさー!」
ロン「はわわわわわなんとかなるといいなあ!」
ヒジリ「……」
パクリコン「まあひーちゃんは安全なところで見守っててくれたのでいいよ。今回の作戦にはひーちゃんを入れてないんだし、無茶なことさえしなければ俺は何も言わない。俺達がやることを見届けてくれたので充分だ。それでいいかい?」
ヒジリ「分かってますって……」
パクリコン「よし。じゃあみんな! これからは危険が付きまとうことになるだろう! 俺達の目的は一つだ! 俺個人の目的として、皆無事に帰る、というものもあるのだが……これは俺が一番守れそうにないから今は言わない。だからみんな!」
 小人たちとランカシーレとエルヴィンはパクリコンを見ました。
パクリコン「ぱーっといこうぜ、ぱーっとな!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
 小人たちとランカシーレとエルヴィンは馬車を出て、三々五々へ散らばっていきました。

 最初に騒ぎが起きたのは王城の東門付近での爆発でした。
「なんだ!?」
「何事だ!?」
 城壁に次々と爆発が生じ、煉瓦が次第に崩れてゆきます。
「敵か!?」
「分かりません!」
「ええい、一刻も早く原因を突き止めて爆発を食い止めろ!」
「はっ!」
 兵士達と兵士長は城壁の付近を松明をもって調べにかかります。しかしなにぶん陽がとっぷりと暮れた時間帯なので、一向に手掛かりがつかめません。
「でえい、他の兵士も集めてかかれ! 物量作戦だ!」
「はっ!」
 こうして東門付近の爆発の原因を突き止めるべく、兵士たちは大勢駆り出されては辺りをしらみつぶしに調べ始めました。
 しかしそんな彼等の様子を伺う者が二名、大きな木の上にいました。
「さすがに木の上からのフォースによる爆撃とは思わないだろうってーの!」
「翼竜の底力があればこんな木に登れるということを、奴等は知る由もないのさー」
「さあて、別の木に移動してばかすか撃ちまくるかってーの!」
「そうするのさー!」
 ラーとワイは大きな翼を広げて飛び立ちました。彼等は飛行こそできないものの、木から木へと滑空して飛び移るには充分すぎるほどの翼を持っていました。
「さあ、もっと兵士を動員しろってーの!」
 ラーは次の木にしがみついて、ふたたびビタフォースを凝縮してミサイル状のフォースを撃ち放ちました。大きな爆発がまたもや別の場所起こり、兵士たちに混乱を与えました。

 国王の部屋では、国王にこの騒ぎが報告されました。
「大変です! 東門付近にて謎の爆発が発生しました! 敵の攻撃かもしれませんので、国王陛下の警護を厳重にいたします!」
「早く原因を突き止めろ! こんな不祥事が外部に漏れないうちに始末するのだ!」
「はっ!」
 侍従長にそう命令した国王は頭をかきむしりました。色あせた茶色い髪にところどころ白髪が混じっています。かつてはしっかりしていたであろう四角い顔も、今となってはシワとシミによって年齢が感じられます。国王は大柄な男でありましたが、心配事がたび重なるごとに少しずつ体が弱っていくようでした。
「このわしを苦しめおって……! 一体誰が……!?」

 その頃南門、すなわち王城の持つ門のうちもっとも大きな門でもひと騒動ありました。
 南門の番兵に、一人のフードをかぶった男が近づいてきます。
「誰だ!? 名を名乗れ!」
 番兵は誰何します。しかしそのフードをかぶった男は足の歩みを止めず、
「夜は眠りを誘う刻。今夜もまた例外ならず」
と言ってサッと手を前にかざして何かをばらまきました。
「貴様! 不届きなことをすれば命は無いぞ!」
 そう言う番兵でしたが、いざフードをかぶった男を止めようとしても身体が動かないことに気付きました。
「これは……!?」
 すると物陰から別の影がさっと現れました。その影は口元を布で覆っています。
「シビレ粉ってところだな!」
 そう言うやいなや、口元を布で覆った影は番兵に近づいて雷撃のフォースを放ちました。番兵は声すらあげられずに倒れました。
 雷撃のフォースを放ったライキチがふと見ると、フードをかぶっていたロンが門の一部を融解のフォースで溶かしていました。
「これで入れる。急ぐぞ、ライキチ」
「おう!」
 二人は夜の闇に乗じて門の中へと忍び込みました。
 門の中へと忍び込んだ二人は、すぐさま門の内側にいる警備員にシビレ粉と雷撃のフォースをくらわせて気絶させました。その後ロンは門の見張り塔の上にのぼり、塔の上にある拡声器を用いて大声で叫びました。
「北門に敵軍が進撃中! 警備を強化し、兵を集めよ!」
 その声を聞きつけた兵士たちがどやどやと集まってくるのをロンは聞きました。
「北門の先およそ300キュービットに敵軍の影あり! 至急武装兵は捜査せよ!」
 そう言うやいなや、ライキチによって門が開けられました。鬨の声をあげて門から出る兵士たちでしたが、その騒ぎに乗じてライキチとロンは城内にうまく侵入しました。
「ここからが本番だ! ひと暴れいくぜ!」
「やってやろうじゃないか!」

 城内はたちどころに混乱騒ぎになりました。それもそのはず、東門にて爆発騒ぎがあったかと思えば南門にて敵軍を発見したとの知らせがあったからです。
「ここにいたるまで敵を一人も見つけられないとはどういうことだ!」
 城の第一兵士隊長は叫びました。
「我が兵のメンツもある、ここはなんとしてでも敵を探し出すのだ! おそらく東門の爆発はオトリであり、南門からの強行突破を狙ったものに違いない! 先制して南門の敵を叩け! ぐずぐずするな!」
「はっ!」
 兵士たちは南門から大勢出て行きました。

 一方で北門から少し離れたところの城壁には、人知れず二つの鉤縄がかけられました。東門と南門の騒ぎのためか、あたりに兵士はいません。
「よし、引っかかった!」
 二つの鉤縄はともに縄梯子の一端を担っており、縄梯子を使って城壁内に入ることができます。パクリコンとレビアは縄梯子を使って城壁内に侵入し、草むらに身を隠します。そして二人ともそれぞれ兵士と下女の格好に着替えました。
「さてと。ここで一つ、花火でもしましょうかね」
 パクリコンが火を起こすと、草むらから煙が立ち上ります。
「ボヤだ! 消火に当たってくれ!」
 パクリコンは声を上げました。
「なに!?」
 北門を警備していた兵士達が集まります。
「城門の外に居る奴も頼む! 川の水を汲んできてくれ!」
「しかたねえなあ」
 パクリコンの声に応え、城門の番兵も近くの小川へ向かって去っていきました。
 すると城門の近くに隠れていたランカシーレとエルヴィンは今のうちにと城門に近づき、エルヴィンの持っていた鍵で城門を開けてこっそりと中に入りました。
「ところでボヤの発見者は誰だ?」
「ええと……あれ? あいつ、どこに行ったんだ?」
「……さあ?」
 兵士たちのそんな声が遠くから聞こえてきました。

 東門の爆撃は続いていました。
「いかん! こちらはオトリだというのに一向に爆撃の気配がやまん!」
「待て……ひょっとしてこちらはオトリではなく、オトリに見せかけた本当の襲撃ではないのか!?」
「ッ!? 照明弾を持って来い! あたりを明るくして意地でも敵を見つけ出してやる!」
 しかし兵士たちの奮闘も虚しく、崩れ落ちかけている城壁の破壊者はちっとも見つかりません。
「警備を固めろ! いつ敵の突撃があるか分からんぞ!」
 兵士長は声を大きくして叫びました。

 城内が東門襲撃と南門敵軍接近に追われている中、ライキチとロンは城庭に隠されてある電線を次々に切り落としていきました。また灯りを消すことによって兵士たちの不安感をあおります。
「そこのお前たち、誰だ!?」
 一人の兵士が立ち寄り、二人に誰何してきました。
「誰だろうね」
 そう答えるやいなや、融解のフォースで兵士を動けなくするロンは月明かりの中で一瞬フッと笑いました。

 南門から侵入したランカシーレとエルヴィンは、隠し通路を通って国王の部屋へと急ぎました。国王の部屋の周囲にはまだわずかに兵士たちが残っているのですが、パクリコンとレビアが陽動することによってうまく兵士を分散させていました。そして最終的にはパクリコンとレビアが兵士を力ずくで打ちのめしていました。
「悪く思うなよ」
 パクリコンが国王の部屋の前にいた最後の兵士に虚動のフォースをくらわせると、兵士は動かなくなりました。
「よし。……いいぜ」
 パクリコンが合図すると、隠し通路からランカシーレとエルヴィンが現れました。ランカシーレはドレス室にある一番豪華な水色ドレスを身にまとい、紺色のトレーンを見に付け、ピンクの重厚なガウンでその身を羽織らせていました。
「この部屋に近づく奴等は俺とレビアで片づける。だからラン……一番大切な所を頼んだ。ランにすべてを託す」
「はい、お任せください」
 ランカシーレとエルヴィンは国王の部屋へと入っていきました。やがて扉が閉じられ、ランカシーレのドレスの衣擦れの音が聞こえなくなりました。

 国王の部屋では、思わぬ来訪によって国王は大いに驚いていました。
「ランカシーレ……!? それにエルヴィン! お前たち……一体なぜここに!? ランカシーレは何故生きている!?」
 国王の言葉にエルヴィンが頭を下げて答えます。
「もうしわけございません、国王陛下。なにしろ森にて小人たちにランカシーレ王女殿下が攫われてしまったため、王女殿下を取り戻すのに時間がかかりすぎてしまいました」
「小人たちに……だと!? 何故それを先に言わぬ!? 何故ランカシーレを殺したという嘘まで吐いた!? 小人にさらわれたということさえ分かっていれば、小人の住む森という森をすべて焼き払ったものを!」
「もうしわけございません。しかし下手に小人を刺激することで『ランカシーレ王女殿下が小人ごときに攫われた』と国民に思われては、我らが国の面汚しとなりましょう。……それに小人たちにおびえていたランカシーレ王女殿下も、少しは考えを改めたようでして」
「考えを改めた……だと?」
 国王は怪訝な顔でランカシーレを見やりました。ランカシーレは一歩前に出てカーテシーをし、国王の顔を見て言いました。
「お父様。私の大切な大切なお父様。私は森で小人たちに苛まされるうちにお父様のありがたさをよく理解し申し上げられました。いつなんどきでも私を守り、ずっと私のことを案じてくださったお父様にどうして逆らえましょう。私の身はお父様のもの、私の身体をお父様に捧げます」
 そうして再びランカシーレはカーテシーをしました。国王はううむと唸り、エルヴィンに告げました。
「エルヴィン、下がれ。ランカシーレと話をする」
「はっ」
 エルヴィンは一歩退き、国王の部屋を後にしました。

 国王はランカシーレに問いました。
「お前は、わしに身を委ねるというのか?」
「はい、お父様」
 ランカシーレは率直に答えました。
「お前の身体をどうしようと構わない、と言うのだな?」
「はい、お父様」
 ランカシーレは同様に答えました。
「……ランカシーレ。この騒ぎの中だが、この部屋は兵によって守られている。安心するがいい。……さあ、お前を抱きしめさせてくれ」
「はい、お父様」
 ランカシーレは国王に駆け寄り、抱きしめられました。国王はランカシーレの背中から臀部にかけて撫ぜながら、
「おお。やはりお前は素晴らしい逸材だ、ランカシーレ」
と呟きました。
「お父様、私は大変怖い思いをしてまいりました。今、敵がありとあらゆるところから攻めてきているという状況で、やっとの思いでこのお城にたどり着くことができました。どうか……お父様に慰められたくございます」
「そうか、慰められたいか。なら……」
 国王はランカシーレの腰に手を回し、ベッドへと連れていきました。
「さあ、わしが慰めてやろうぞ」
 国王はランカシーレをベッドに押し倒します。水色のドレスの裾がはだけ、ランカシーレの脚が現れます。
「この日を待っていたぞ、ランカシーレ。お前がほんとうにわしの良さを理解する日がな……!」
 国王はランカシーレの脚に手を這わせ、ランカシーレの股間に手をやります。
「まだある。いいぞ、素晴らしいぞ、ランカシーレ」
 国王はそう言って、己の衣服に手をやり下半身をむき出しにしました。いきり立った男根がランカシーレの前に現れます。
「さあ、ランカシーレ。始めようぞ」
 国王がそう言ってランカシーレに身体を重ねようとしたその瞬間でした。
「ぐっ……!?」
 国王の陰茎はランカシーレによって乱雑に掴まれました。
「お父様、私はどうしても欲しいものがございます。つきましてはお話をいたしたいと思いますがいかがでしょう?」
「離せ! お前……何を掴んでいると思っているんだ!」
「お父様、私のもう片方の手にはナイフが握られてあります。お父様が暴れるようでしたら私は遠慮なくお父様の男根を根こそぎ切り落とす所存ですが、いかがでしょう?」
「貴様……!」
 国王は股間に目をやります。するとそこには男根にあてがわれたナイフがきらりと光っていました。国王は怒りをあらわにしてランカシーレを殴ろうとしましたが、すんでのところでその手を止めました。
「はい、私に触れようものならお父様の男根はあっという間に切り落とされることでしょう。よく御自制なさいました」
「……お前の要求は何だ!? 何が目的だ!?」
「私の目的はただ一つです」
 ランカシーレは言いました。
「お父様、あなたの退位です。この国をこれ以上お父様の手によって汚すわけにはまいりません。オストシュタット国に気に入られるよう法を変えて国を滅茶苦茶にし、あげくのはてこの国の経済や産業を破壊するお父様のやり方はこの国に破滅を導きます」
「お前に何が分かる! そうでもしないとこの国は世界のトップには立てないのだぞ!?」
 国王は怒りに任せて叫びました。しかしランカシーレは静かに、
「オストシュタット国に寄生した発展によって、この国が世界のトップに立てると本気でお思いなのでしょうか?」
と告げた。国王の返答を待たずにランカシーレは続けます。
「世界のトップに立つことに意味はありません。少なくとも、我が国ゴットアプフェルフルスは世界のトップに立つよりもより有意義な未来を望んでいます」
「より有意義な未来……だと……!?」
「はい。この国にしか存在しない伝統を維持し、この国だけで自給自足できる水準を保つこと。それによりこの国は国交におけるありとあらゆる依存関係から独立した、真の自由を得る国であり続けるのです。他の国に寄生するだの、他の国に媚びるだのといった事柄は全てお父様の犯した過ちでございます。今更お父様では立て直しもできないでしょう。ですからお父様には退位していただきます」
「……わしが退位した後この国はどうなるというのだ!? 誰が治めるというのだ!?」
「私です」
 国王の顔は怒りで赤くなり、国王の右手はぷるぷると震えます。
「私はこの国の王位第一継承者です。私以外に王の座に付ける者などございません」
「そういうことか……!」
 国王は顔をしかめたが、やがてランカシーレに問うた。
「だがどうするというのだ? このままわしの股間にナイフを当てたままわしを退位させるというのか? くだらぬ! お前の我が儘にいつまでも付き合うことなどできぬわ!」
「口の利き方に気を付けなさい」
 ランカシーレは国王の男根にナイフをつんと突きつけた。国王の顔が一瞬恐怖に歪んだ。
「女王に向かって何という口の利き方をするのです? 私が女王になる以上、あなたには消えていただきます。消えるということは、少なくともこの国にはいられないということをお分かりください。あとは私の部下の者がやってくれましょう」
「部下……だと……!?」
「はい。この国には、残念なことに、あなた以上に私に従ってくださる方が大勢いらっしゃいます。もはや私以外にこの国を動かせる者はおりますまい。あなたはもはや要らない存在でございます」
 ランカシーレはふたたびナイフで国王の男根をつつきます。
「ああ、哀れなお父様」
 ランカシーレがそう言ってフンと鼻息を鳴らしました。
 その瞬間、国王はランカシーレの顔に向かって思いきり唾液を吐きました。ランカシーレが一瞬ひるんだのを察した国王は、ランカシーレの臀部を思いきり膝で蹴り上げます。
「きゃああっ!」
「ふざけおって! なにが退位だ!」
 国王はランカシーレの左手を押さえてナイフを叩き落とします。
「こんなものに頼らなければ何もできないからお前は弱いのだ! さあ、お前を完膚なきまで犯した後で、わし自らの手でお前の息の根を止めてくれるわ!」
 国王がそう叫んでランカシーレの股に手を伸ばそうとしました。ランカシーレの身体に国王の身体がのしかかります。その時でした。
「そこまでだ!」
 扉がバタリと開いて男が二人入ってきました。
「だ、誰だお前は!?」
「俺か? 俺はお前の憎くて憎くてならない小人さんだ!」
 国王の誰何に対し、パクリコンは剣を取り出しながら答えました。
「ランカシーレ王女殿下の手をお放しください。ここにはもう、国王陛下の味方となる者はおりません」
「エルヴィン! お前までもか! それでもお前はわしの臣下か!?」
「いいえ、国王陛下。私はこの国の忠実なしもべです。国王陛下のしもべではありません」
「貴様……!」
 剣を構えるパクリコンとエルヴィンに対し、丸腰の国王。唯一の盾はランカシーレだけです。
「お前ら、それ以上近づいてみろ。こいつの命はないぞ!」
「国王の命も当然無くなるけれどなぁ!」
 パクリコンは挑発的に言い、一歩国王ににじりよります。
「お前ら……来るな! 来るなぁーっ!」
 国王はランカシーレの腕を引き、部屋の隅に逃げ込みます。そして部屋の隅に合った釦を何度も押してみるものの、一向に変化が起きないので国王は焦りの表情を呈しました。
「残念だったなぁ。東門の爆撃に気を取られて俺達の侵入を許した挙句、電気回線まで切られてしまうとはなぁ」
 パクリコンは、釦を押すのを諦めてランカシーレの腕を乱雑に掴んだ国王を見やりました。エルヴィンも国王に一歩近づきます。
「観念してください、国王陛下! もうあなたの時代は終わったのです!」
「終わっとらん……まだ終わっとらんぞ……! こうなったら……こうなったら!」
 国王は部屋の隅の壁の一部を押しました。すると壁がぐるりと回転し、国王とランカシーレは壁の向こうに消えてしまいました。
「案の定そんなものを隠していたとはな!」
「追いましょう!」
「当然!」
 パクリコンとエルヴィンは隠し扉を通っていきました。

 そこは長い滑り台のような通路を滑った先のところでした。
「ここは……?」
 パクリコンが立ち上がると、後ろでエルヴィンも立ち上がります。
「王城の地下にある熱機関貯蔵庫です。まさかここに通じていたとは……!」
「熱機関貯蔵庫?」
「はい、煮えたぎる溶岩によって動かす機関を貯蔵している階です。ただところによっては溶岩がむき出しになっている部分もありますので、国王のやりそうなことといえば……」
「くっ……! 急ごう!」
 パクリコンとエルヴィンは駆け出しました。

「いやっ! 離して!」
「お前はこっちにくるんだ!」
 そんな声が響いているほうへ向かっていくと、二人は扉の前にいる国王とランカシーレのところに追いつけました。
「ランを離せ!」
「これ以上の抵抗は無駄です!」
 パクリコンとエルヴィンが制止の声をかけると、国王は振り向きました。
「無駄? 本当にそうかな?」
 国王は扉を開き、ランカシーレを連れてその先に逃げ込みました。
 その先は桟橋になっており、幅2メートルほどの橋が長く続く何の変哲もないただっぴろい空間になっていました。ただひとつ、その部屋の下には溶岩が煮えたぎっているということだけを除けば。
「くくく……それ以上近づくと、こいつをここから突き落とすぞ!」
 国王はランカシーレの手を引いて桟橋の先へと歩いていきます。
「いやっ、離してぇっ! 助けてぇっ!」
「くくく……ここに突き落とせばこんな小娘の命など一瞬でおわりだ。お前たちの言う新しい女王など消滅するのだ。ならどうすればいい? わしがオストシュタット国の王女と結ばれ、世継ぎを作ればいい。簡単な話だ。もうこんな小娘に用は無い。お前たちの負けだ」
「負け?」
 パクリコンは桟橋に一歩踏み出しました。
「負けなのはあんただろ。自分の娘を見捨てて、挙句の果て国まで見捨てて自分の都合の良いように近視眼的なことにだけ執着するような奴に王の資格は無い。この国を治めるのに相応しいのはあんたなのかランなのか、もはやはっきりしていることだろ」
「黙れ! お前のような小人になにが分かる!」
「分かるさ、小人だからな。……いや、『小人』という言葉を作ったあんたの妄執に付き合うのもこれ以上は無意味だが」
「黙れ!」
 しかしそう言う国王はランカシーレを連れて桟橋を伝って逃げようとします。
 桟橋は二岐に分かれており、それぞれが別の出口へとつながっています。国王は二岐の箇所までランカシーレを連れてにじり下がっていきました。
「ランカシーレという盾がある限り、お前たちはわしに手出しできない。くくく……お前たちはわしの味方がおる場所までわしを捕えることはできない。……この小娘がいるばっかりになぁ!」
「あんたは自分の娘をそんなふうにしか呼べないのか」
 パクリコンは冷ややかな声で問いました。
「当たり前だ! こいつさえ……このランカシーレさえいなければわしの策はすべてうまくいっていた! こんな奴に愛情だなどというものなど感じたことすらないわ! 今すぐにでも消え失せろ!」
「いやあっ!」
 国王がランカシーレの腕を握る力を強めようとしたその瞬間でした。
「それくらいにしといたほうがいいんじゃないの?」
 別の出口から声が響きました。
「誰だ!?」
「小人さんだけど?」
 それはレビアでした。
「と言っても、地下の地図を見ただけでこちら側にたどり着ける程度の知能しか持っていない小人さんに何ができるかっていうと、まあこれくらいだよね」
 そう言ってレビアはボウガンを取り出しました。
「もうやめなよ、国王。あんたの負けなんだから。ここでランカシーレさんをどうこうしたところで、あんたの死は免れない。やけになってランカシーレさんと無理心中しようとしたところで、あたしならどんな手段を用いてでも止めてみせるけれどね」
「貴様ら……! この騒ぎに乗じて城の中に忍び込んでいたというのか……!」
「だから何?」
 レビアは答えました。
「あんたに残された時間はあと15秒。それまでにランカシーレさんの手を離さなかったらあんたの命は無い。だけれど幸運なことに小人さんには慈悲がある。あんたがおとなしく国外追放されるってのなら、あたし達はあんたの命までは奪わない。……これがあんたらとあたし達の違いなんだろうけれどね。あたし達慈悲深き者ピチロっていう種族はさぁ!」
 レビアは一歩一歩国王を追い詰めます。国王はランカシーレの手を引いて、第三の出口に向かって走り出しました。
「いやあっ! 離してっ!」
「あんな奴等、信用できん! お前を盾にしてわしは逃げ切るからな!」
「やめてぇっ!」
 しかし第三の出口にも小さな人影がありました。
「誰だ!?」
「誰でしょうね」
 その紺碧の瞳を持つ竜鳥は静かに言いました。
「名乗るまでも無く、とっくに15秒が経ちましたよ?」
「だから何だというのだ!? お前達はわしに指一本触れる事すらできん! この小娘がいるばっかりになぁ!」
 ヒジリの問いに答えず、国王は高笑いました。
「くくく……お前達をここから生きて帰させやせんぞ! この小娘ごときの命を惜しむお前達には、この地下で息絶える未来以外ありえん! この地下から出られるのはこのわし以外に存在しないのだ! それが分かったら、武器を捨ててわしにひれ伏せ! もしくは自らの手でこの溶岩に飛び降りるがいい! くくく……ふははははは!」
 その瞬間でした、国王がランカシーレから目をそむけた隙に、ランカシーレはドレスの裾をたくしあげて思いきり国王の足をハイヒールのかかとで踏みました。
「ぐああああああああっ!」
 肉がもげて骨が砕ける音がこだましました。
 ヒジリはダッと国王に近づき、フォースにより鋼鉄のように固まった翼で国王の腕を激しく殴打しました。バキリと音がして国王は思わずランカシーレを掴んでいた手を離します。
「ランカシーレさん、逃げて!」
「はい!」
 ランカシーレはヒジリとともに駆け出しました。しかしランカシーレの引きずる長いガウンの裾を国王は握り返していました。
「きゃあっ!」
 ランカシーレは身動きができません。
「最後までお前を盾にせねば……! わしとともに地下から出ようぞ……!」
 国王がランカシーレのガウンの裾を手繰り寄せようとしたそのときでした。
「もう、かける慈悲なんて無いよね」
 レビアの声が響き、ドシュッと音がしてレビアの持つボウガンから太い矢が発射されました。長い距離があったのにもかかわらず、ボウガンの矢は確実に国王の首を抉り取っていきました。
 首から血しぶきが流れ出て、国王の身体はぼとりと溶岩の中に落ちていきました。

 これで国王の存在は完全に消滅してしまいました。

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パクリコン

Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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