これで……お黙りなさい!

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 高い柱にて支えられている大聖堂の中をランカシーレ女王は独りで歩いていた。ランカシーレ女王は水色のドレスに紺色のトレーン、そしてピンクのガウンを身にまとっていた。女王はドレスを手の平一つ分ほどたくし上げながら、ハイヒールを石畳に響かせつつ優雅に歩を進めていた。
 背後で重い金属が動く音がした。ランカシーレ女王が振り返ると、そこには甲冑を纏った二人の家臣が一人のみすぼらしい男を連れて大聖堂へと入ってくる姿があった。
 二人の家臣は深々と首を垂れた。
「女王陛下。こちらの者は女王陛下の凌辱を試みんとしていた男です」
 ランカシーレ女王はその言葉を聞いて眉をひそめた。かねてよりランカシーレ女王自身が暗がりにて何者かに襲われ続けていたことを想起したからだ。
 ランカシーレ女王は厳めしいソプラノ声で家臣に告ぐ。
「その者の両手両足を縛り、私の前に打ち捨てなさい」
 二人の家臣は再び首を垂れ、そのみすぼらしい男の両手を必要以上に締め付けた。さらに男の両脚を乱雑に縛り上げた後に、ランカシーレ女王の前に勢いよく叩きつけた。
 ランカシーレ女王はそれを見やり、
「よろしい。ではしばらくの間、私とこの者だけになさい。下がってよろしい」
と二人の家臣に告げた。
 家臣が去り、大聖堂の扉が閉じる音が響いた。
 その音を聞くや否や、ランカシーレ女王はその男を思いきり蹴りつけた。
「お前のような卑しい者風情が……! よくも私を……!」
 ランカシーレ女王はこれまでの凌辱未遂に至る様々な夜の闇を思い浮かべながら、ドレスをたくし上げては男を蹴りつけていた。
 男はランカシーレ女王の足を避けつつ、懇願するかのようにランカシーレ女王に告げた。
「女王陛下! これは濡れ衣です! 信じてください!」
「誰が信じるものでしょうか!」
 ランカシーレ女王は男の顎をハイヒールで思いきり蹴りつけた。骨が削れる音がして男は倒れ、呻いた。
「私の怒りはこの程度ではございません!」
 ランカシーレ女王は男ににじり寄り、ドレスの裾を高くたくし上げた。刹那、男の右手に女王のハイヒールが踏み落とされた。男の指の関節が外れる音が響き、男はのた打ち回った。
「女王という最も高貴な身分を二度と穢すことのできぬよう、私がこの場でとどめを刺してさしあげましょう」
 ランカシーレ女王は優雅にドレスとトレーン、それにガウンをもたくし上げた。女王の身体が衣という重みから解き放たれる。そして次の瞬間、女王はハイヒールのつま先で男の頬に蹴り込んだ。男の歯茎は砕け、女王に為されるがままに顔がゆがめられてゆく。
「何か仰りたいことでもございましょうか?」
 ランカシーレ女王はつま先をぐりぐりと男の頬にねじ込ませてゆく。男は苦痛に身悶えていたが、やがて女王のハイヒールの踵が自らの首を圧迫し始めていることに気付いた。鋭い痛みが顔をひきつらせる。
 それを察した女王は薄ら笑みを浮かべ、男の頬にそっとハイヒールの踵をあてがった。
「どうでしょう? こちらをあなたが味わうというのは?」
 男は息を荒げ、たどたどしく女王に反駁した。
「女王陛下……っ! これは……濡れ衣でして……っ! 私めは決して……っ!」
「何だと仰るのです?」
 ランカシーレ女王は男の顔をハイヒールのつま先でねじ伏せた。大の男がたかが女のつま先一つで軽々しくもてあそばれる様に、女王は世の無情を嘲笑った。
 ランカシーレ女王は男の顔に置かれてあるハイヒールに体重をかけた。太針で刺されたかのような痛みが男の視界を貫く。
 男は女王に最期の言葉を告げた。
「女王陛下! 私めは女王陛下を襲おうだなどという不埒な行いをしたことはありません! どうかお考えを改めください!」
 ランカシーレ女王はその言葉を聞き、ドレスの裾を正して男にひとつ問うた。
「ではあなたが私を襲う気が無いということをこの場でお示しなさい」
「はっ! し、しかし……どうやって……!?」
 ランカシーレ女王はドレスをたくし上げて男の顔を蹴りあげた。
「容易いことです。あなたの陰茎をお見せなさい。もしあなたが私を襲う気など無いのであれば、陰茎はおとなしくしていることでしょう」
 ランカシーレの言葉に男はすくみあがった。
「さあ、早く!」
 ランカシーレは左手でガウンごとドレスを掴んで、脚を露わにしては男の胴を蹴った。ランカシーレの蹴りに耐え切れなくなった男がわななきながら見せたその陰茎は、先ほどから目の前を舞っていたランカシーレ女王の下着の艶めかしさによって大きくそそり立っていた。
「これをご説明なさい」
 ランカシーレ女王は生肉をこねるかのように男の陰茎をハイヒールで踏みにじった。男の男としての生命はまさにランカシーレの踏みの力加減ただそれだけにゆだねられていた。そしてまさに踏みにじられているその陰茎も、脈打ちながらランカシーレのハイヒールに刃向かおうとしている。
「あら、なんというふてぶてしさでしょう。己の非を認めないばかりか、こうして今もなお私を襲おうと考えていらっしゃるとは」
 ランカシーレは男の陰茎をハイヒールで圧迫した。陰茎からは脈に合わせて透明な液体が漏れ出でている。
「これではどうしようもございません」
 ランカシーレ女王の言葉を聞いて、男は女王の脚に縋った。縛られた両手を頼りにランカシーレ女王の脚に縋りながら、男は懇願した。
「お願いです、女王陛下! どうか、この場でも何もせぬこの身に免じて! どうぞお赦しを!」
 しかしランカシーレ女王は返答の代わりに男の腕を踵で踏み抜いた。肉がえぐれ、骨がむき出しになる。
「あなたは行いが過ぎました」
 ランカシーレ女王は男の手を踵で踏み抜いた。穴が開き、血がほとばしる。
「これで……お黙りなさい!」
 ランカシーレ女王は両手でガウンの上からドレスを掴みたくし上げた。女王の下腹部が顕わになる。そして女王はゆっくりと男の頭上に足を振り上げた。次の瞬間、女王は男の眼窩をハイヒールで貫いた。

 男が息絶えたことを確認したランカシーレ女王はドレスの裾を正した。石畳が十数枚も隠れるようなトレーンの上にガウンがはなりと重なる。そしてランカシーレ女王はガウンの重みを丁寧に両手に預けながら、ゆっくりと歩を進めた。何事も無かったかのように、何者も息絶えなどしなかったかのように、ゆっくりと。
 それはさながら、女王という侵されざる存在を示すかのようであった。

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