準備

 旅立ちの日が近づいてきた。片道切符を握りしめて、ランと二人で幸せな未来を作ろう。

 名残惜しむかのようにアニメを見ていた。ああ、素良くんと黒咲がデュエルをしている。デストーイシザーベアとライズファルコンがバトルをしている。未来都市ハートランドといういかにも伏線になっていそうなフィールドで、二人が様々な思いを抱きながら熱い戦いを繰り広げている。どちらが勝ってもいい、最後には二人とも互いを認めて仲良く打ち解けて大いなる未来に向かって歩んでいってほしい。
 秋葉原にも別れを告げた。「いい感じに悪い方へ垢ぬけた」と称されることすら受け入れる秋葉原の全てを網膜に焼き付けておいた。最近厳しくなった取締に応じて「ハグオプションは廃止しました」とお知らせを出す店や、急な階段の先にあるメイド喫茶に行くために後方をちらちら確認しながら階段を上るメイドの姿は、まさに秋葉原の「今」を象徴する光景としてじつに和めるものだった。そう、ここ秋葉原では、金銭的余裕と女体欠乏を獲得した青年たちのみならず、彼等に「5000円でナマの肌に接せられるのはおトクだぜ!」とダイレクトに訴えかけてくる搾取者たちすらもが秋葉原の一員である。このように様々な次元における欲望によって街が動いてゆく様は、秋葉原の一番の魅力のように見える。
 牛乳を買う。近所で一番高い牛乳だ。1リットル260円というセレブ価格なその牛乳をこれまでは「自分へのごほうび」のためだけに買ってきたが、この際構わないだろう。ちょっと高めの饂飩も買ってやれ。普段は買わないような子供向けおまけつき菓子なども大いに郷愁をそそってくれる。身近なところに紛れ込んでいた俺の知らない幸せを発見できたかのようで、じつに満足だ。
 自宅にある本を読む。化学や物理学に特化した武器を使う主人公たちも、軍艦の名を冠する少女たちも、ジェンダーの問題に関して裁判で争った人たちも、じつに輝いて見える。ネバーエンディングストーリーで言われていた「本は読むたびに違った顔を見せてくれる」という現象はやはりある(ぐぐってみたところ、このセリフがネバーエンディングストーリー内のものであるという確証が得られかった。頼む、俺を信じてくれっ)。そんなことを思いながら、棚の本を丁寧に揃えていった。
 めくっていなかった週めくりカレンダーをめくる。今週の艦娘は長門だった。駆逐艦が好きで、可愛いものをこよなく愛し、腹筋を鍛えることに余念のないあの長門である。長門から滲み出る主人公オーラは、間違いなく初期艦これのコンセプトに沿ったものだ。吹雪ちゃんとも陽炎とも瑞鶴ともまた違ったベクトルを持つ、まさに王道熱血主人公としての風格だ。長門がいてくれれば、たとえ艦これがどんな困難を前にしようとも乗り越えてやっていけるだろう。長門の改二を楽しみにしているぜ。
 和浦に水をあげた。これからしばらくは彼女に留守を任せることになるので、たっぷりと水をあげた。最近二本目の茎を伸ばしつつある和浦は、今や立派なウツボカズラに成長していた。いつでも俺のデスクの近くで元気に茎を伸ばす和浦には大いに励まされたものだ。感謝せねば。
 ベランダの掃除をする。先日龍楽の子供たちから種を受け取ってからというもの、多くの子が息を引き取っていった。寂しい、という思いもあり、彼女たちはこれで幸せだったのだろうか、という思いもある。しかしそのような思いの中で確かに感じられることは、これまで日々接して成長を見せてくれた彼女たちはまさに俺の宝物だったということだ。
 最後にランといろいろと話をした。話す中で、いろいろあったね、もろもろあったね、と想いを馳せていた。その中で、そういえば4年前の初夏にランとも宝物だのなんだのという会話をやったっけね、と話していた。

「なんだか私……パクリコンさんに助けられてばっかりですよね」
「そんなことはないよ。俺としては貴重な近所の、なんというか、大切な存在か宝物みたいなものだしさ……」
「たからもの、かあ……」
「あ、いや、物とかそういうんじゃなくて、その」
「あはは、分かってますよ」


 4年前といえば、まだランの髪の毛が短くて口調があけっぴろげで、そもそも俺がランと付き合っていなかった頃である。それが今ではどうだ、KEKKONである。練度に換算すれば三桁だ。ランには大いに助けられたり支えられたりしてきたものだ。感謝の念を込めて、たくさんナデナデしよう。かりかりもふもふ……くんかくんかきゅんきゅんきゅいっ。

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Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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