ビビデバビデブー

 『シンデレラIII』というシコリティの高いアニメ映画を鑑賞した。

 『シンデレラIII』にて、魔法の杖さえあれば誰でも以下のことが可能となることが分かった。
・動物を石化させる
・動物をキメラ化させる
・動物を別の動物に変化させる
・人間の姿かたちを別の人物と同じものにする
・身体の一部を無機物化させる
・身体の一部を肥大化させる
・対象を大きくする
・対象を小さくする
・時間を巻き戻す
・記憶を改竄する
・記憶を元に戻す
・対象を転移させる
・攻撃ユニットを生成する
 これらの行為は、魔法使いでなくても誰でも可能となる。劇中ではネズミですら魔法を使用していたので、基本的に「杖を握ってビビデバビデブーと唱えらえる者なら誰でも可能」と言いきってしまって良さそうだ。すなわち魔法の杖とは、魔法なる術を使うためのインターフェースであると考えられる。
 『シンデレラIII』では、主に「継母が魔法の杖を用いて悪事を働くことを、いかにして阻止して元に戻すか」という困難がシンデレラたちに襲い掛かる。劇中では無事にシンデレラたちは魔法の杖を取り返して、めでたしめでたしを迎えることができた。ではこの後シンデレラたちはどのように振る舞うだろうか。
 まず序盤にて、石化したフェアリー・ゴッドマザーは自力で石化を解くことができなかった。すなわち、魔法の杖の存在を知る者を全て石化させてしまえば、誰もシンデレラの魔法を「杖によって行使された現象である」と認識できない。そして杖それ自体は亜空間に仕舞っておける(『シンデレラ(無印)』より)ので、とくにシンデレラが魔法の杖の扱いについて困ることは無い。加えて人前で杖を振るったり大声で呪文を唱えなくとも、ローブの袖下などでこっそり杖を握りつつ呪文をつぶやくだけで、上記の魔法を行使できる。したがって非常に秘匿性の高い能力であると理解できる。
 ゆくゆくは王妃となるシンデレラがどのように魔法を使うかを考えてみよう。まず、自国の民が飢えで困ることがなくなったり、病によって苦しむことがなくなることは明白である。加えて、他国との戦争において非常に優位に立てるという点も見逃せない。否、他国の君主や民の記憶を改竄してしまえば、戦争を介さずとも自国の領土を広げることができる。ここで「妥当な手段によって領土を広げた」という記憶を人々に根付かせることができるという点も非常に大きい。さらには己の身体を「毒や怪我に耐性のある身体」に変えてしまえば、暗殺される可能性をかなり下げることができる。加えて己の身体の若さや美しさを魔法で維持することも可能である。
 こうなるともはや、シンデレラが王妃という身分にとどまる必要が無くなる。年月とともに老いて衰えてゆくチャーミング王よりも、若くて美しくて圧倒的な強さを持つシンデレラのほうが君主として相応しいからだ。君主としての必要な素養や技術などは、すべて魔法で修得すればよい。なので統治のうえで必要な情報をすべて、シンデレラは持つことができる。すなわち、シンデレラはあの世界一体を支配する帝国の女帝として君臨することができる、と分かる。
 そうして永遠に若く美しいシンデレラ女帝はやがてどうなるだろうか。年月を経るごとに、己の出自を知る者は死んでゆくだろう。また記憶の改竄によってシンデレラ女帝には「誰が本当に信頼できる相手か」という懸念がつねに付きまとうことになる。相手が記憶の改竄を経ている以上、相手の言葉が本心なのかどうかが分からないからだ。
 シンデレラ女帝がどれだけ多くの富と名誉と快楽を得ようとも、それを可能とした魔法ゆえにシンデレラにはつねに孤独が付きまとう。己が己の力で得たものなど何も無く、己の知識ですら魔法による改竄物なのかどうかも分からない。誰に尋ねても一切真相は分からない。石化した人を元に戻したところで、石化されていた人がシンデレラ女帝を信頼するはずもない。
 シンデレラ女帝は全てを手に入れることと引き換えに、世界で最も過酷な孤独をも手に入れてしまったといえよう。そうなるとシンデレラ女帝の心は誰にも癒せない。どれだけ魔法に頼ろうとも、「魔法に頼った」という事実は消えないからだ。
 最後にシンデレラ女帝はどうするだろうか。
 己の身体を普通の人間のものに変えて、魔法に関する記憶を全て消した後に、命を絶つだろうか。
 それとも「孤独」なる概念を消し去って、魔法によって創られた生けるモノとして永遠に帝国を統治しつづけるだろうか。
 はたまた魔法の存在に耐えられなくなって心が壊れて、生ける屍と化すだろうか。

 そのいずれにせよ、またそのいずれでもないにせよ、『シンデレラIV』にて何らかの結末が与えられることを望む。

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