不思議の国の声、奮闘記の4

 21ページ目に差し掛かった。とても楽しい。嫁も可愛い。
 ひとつ問題があるとするなら、今回の分量が40ページくらいになりそうだということだ。

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 「何もしない」というのも、ひとつの行為だ。土管の上に寝そべって、
「何か面白いことはないかな~」
と呟きながらぼーっとする様や、あるいは休日にて雨が激しく打つ窓ガラスをぼーっと眺める様を想像すると分かりやすいだろう。とにかく「何もしないまま時間をすごす」という行動は、案外「やろうと思ってもできなくなったもの」だと感じる。
 「誰からも逃れられない時代」と評される現代では、携帯電話を介して他人からの干渉がひっきりなしに訪れる。それと同じくして、己から他者への干渉に対する閾値も著しく下がった。スマホ画面へのタップ一回でツイッターのタイムラインを覗けるのだから、まさに「指先ひとつでなんでもできる」という表現が現実のものとなりつつある時代であるといえよう。また娯楽が多種多様に広がってきたため、パソコンひとつ、スマホひとつで遊べるモノに際限が無くなった。あなたがひとつのモノを遊び終える前に、世界ではひとつ以上のモノがまた作られてゆく……という図式を考えれば、自然数の数を数えるのと同じような原理で理解できるだろう。こうして「何もしない」という時間をあえて送る必要が無くなった。
 能力というものは、使わなければ衰えていくものである。それは「何もしない」という行為においても同様だ。進んで「何もしない」という行動を選択しようとしても、案外できないものだ。「何もするまい」と思っても、気が付けばスマホに手が伸びていたり、何の気なしにパソコンのブラウザを広げていたり、あるいはテレビをつけたり、はたまた本を読んだりしようとしてしまう。べつに「何もしない」ことが悪いことではないのに、
「何かしなくては」
という焦燥に似た思いによって、どうしても突き動かされてしまう。
 そう感じてしまうと、
「だったら今日は意地でも何もしないぞ!」
と思いたくなるのがパクリコンだ。初めのうちは多くの誘惑に負けてしまったものだったが、最近では数時間ほど天井を眺めていたり、あるいは数時間ほど布団に身を委ねたまま空想の世界を堪能したりできるようになった。このようにして得られた「案外何もしなくても大丈夫だ」という確信は、さらにパクリコンをして「何もしない」という選択をせしめた。
 この「何もしない」という行為には大きなリターンが伴う、ということにも気づいた。ひとつはエネルギーの補填だ。精神的にも肉体的にも、「何もしない」という行動は非常に多くのエネルギーを生み出してくれる。そうして生まれたエネルギーは、少なくとも一週間程度の研究くらいなら案外容易く可能にしてくれる。加えて「何もしない」という行動によって、己への理解度の増加が見込まれる。現在の己はどういう位置にいるのか、どういう状態にあるのか、という情報を、「何もしない」という行為はかなり定量的に与えてくれる。そしてそれらの情報は今後の行動指針を立てる上で大いに役立つだろう。さらには、空想の世界の描写にたる情報の獲得という側面も、大きなのリターンとして認められる。数時間に渡る空想は、それそのものがひとつの思考の塊として意識の片隅に留まる。その塊を少しずつ解きほぐしていけば、その空想の世界そのものの記述を獲得することができる。その記述は創作において直接的なパワーリソースになり、同時に自己実現に対する自己依存的な原動力にもなる。
 このように、「何もしない」という行為はとても有意義なものだといえる。空想のテトリスで遊んだり、空想の舞台を見物したり、空想の空間に箱を詰めこんでみたり……と、「普段はできないけれど、思い切ってやってみると案外楽しい」という行為に思う存分浸ることができる。案外「何もしない」という行為そのものは、じつに「何かをする」という行為を遥かに超えたレベルで「何かをし」ているとも言えるのではないか。
 やはり「何もしない」はいいものだ。俺も「何もしない」ことをやっていくぞ。
 そう思ったときのこと。丁寧にも下半身だけ露出している黄色い熊がこう呟くのが聞こえた。

"What I like doing best is nothing."

 その熊のつぶらな瞳を見やりつつ、
「お前って、ただの露出狂じゃなかったんだな……」
とパクリコンは思った。しかしよくよく考えれば、その熊にしたってクリストファー・ロビンという少年の想像の産物にすぎないのだ。
 想像の産物は、想像の価値を誰よりもよく知っているものだろう。そう思いながら、パクリコンは「何もすまい」と決めこんだ。

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Author:パクリコン
ピチロの世界の住人。

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