のけものフレンズ

 「のけもの同士でもフレンズになれる」と感じていた一日だった。

 『けものフレンズ』を見ていた。
 主に、「時間・労力への無頓着とスルースキルを持ちさえすれば、だいたいハッピーに暮らせる」という趣が感じられるものだった。それらの性質は、実際の動植物から容易く見てとることができる。なので「大自然がもともと持っている性質をうまく肯定的に表現したお話」だと素直に思えた。
 加えて、「動物の労働力と人間の知恵があれば、だいたいハッピーに暮らせる」という趣旨もまた好感が持てた。かなり逆説的な結論ではあるが、「明らかに非力な人間が、動物たちを前にしてもなお活躍できる」という筋書きから、「人間はどうあがいても動物と同じ生き方はできない。だけれどともに生きていける」という「人間の特異性」が汲み取れる。第五話以降でかばんちゃんがその特異性をどう認識していくかがとても楽しみだ。
 むろん、フレンズたちの慣習である「スゴいことにはスゴいと言う」「知りたいことを知りたいと言う」などの言動を無垢に描くことによって素敵に描かれていた知的好奇心も、その特異性の一因として表現されていた。ことさら、人間社会にある何気ない知恵や工夫ひとつひとつをフレンズが「すっごーい!」と褒めるたびに、人間の特異な生き方がなんとなく感じてとれる。

 一方で主人公が関与していない部分においては、フレンズたちが何らかの形で助け合って生きているという描写はほとんど無い。第一話で述べられてあるとおりに、「自分のことは自分でやる」という大前提が敷かれているからだろうか。彼女ら同士は共存するフレンズであるけれども、共生関係を望む節は見られない。しかしそれこそがまさに「時間・労力への無頓着とスルースキル」の原動力になっているのは事実だ。フレンズが何かの行為を「やっぱりやーめた」と放棄してもことさら叱咤されることはないのは、まさにフレンズたる彼女らが何らかのコミュニティ構成員ではないからだ。

 『けものフレンズ』には、たしかに人類が忘れているものがたくさん描かれている。文明の利器ひとつひとつにしても、「力は無いし脚は遅いけれど、考えるのが得意」という性質にしても、「本来はとてもありがたくて貴重な性質」は普遍的に受け入れられやすい。しかしそれを劇中のフレンズにいくら説明されても、結局のところ人間が生きていくのは、人間社会というコミュニティ内でしかない。人間がコミュニティ構成員である以上、人間は他人との契約や時間・労力には縛られざるをえない。人間は互いに共生関係にはあるが、彼女らのようなフレンズにはなかなかなれない。
 しかし、じつはここが一番のキモの部分であるように思える。つまり、
「彼女らのような存在(コミュニティ構成員としての役割を果たせない人)であっても、互いにフレンズになれる」
という可能性の提示こそが、現代社会コミュニティで苛まされている人たちへの強力なエールとなっているのだ。
 人間がコミュニティ構成員である以上、全員がまんべんなく同程度の能力や認識、理解を持つことを強いられている。納税や労働は逃れようのない義務だし、「得意なものは人によって違う」からといって一日中得意なことだけをするわけにもいかない。そういう現状を踏まえると、「社会から"のけもの"にされることは、死刑宣告されることと同じだ」という恐怖や焦燥感はいつも現代人に付きまとう。しかしそんな現代人に対して、『けものフレンズ』は、
「それでもだいじょうぶだよ!」
と真正面からフォローしてくれる。





 『けものフレンズ』物語それ自体がどういう暗喩を含んでいるかについては、いまだ明らかにはされていない。なので「手を使わずに水を飲み、ハンドルを握ることを知らないサーバルちゃんが、どうしてティーカップをすんなり手で持ってお茶を飲めたのか」などの点については、今のところ説明はつかない。さまざまな背景描写から「人類が滅んでもなお稼働しているサファリパーク」が舞台であろうことが推測されうる程度だ。しかしその暗に描写されている背景こそが、
「コミュニティの"のけもの"になっても"フレンズ"として生きていけるのだから、だいじょうぶだよ!」
という、現代社会に対する強烈なアンチテーゼの一要素としてうまく機能している。

 現代ではあまり通用しなくなってきた「現代の若い奴等は他人への無頓着だ」「結婚して家庭を持とうという気概は無いのか」「働くことは尊いことだ」などの観念に対し、「yes」「no」以外の選択肢――「フレンズとして生きる」――という道を示してくれるのが『けものフレンズ』だ。
 良いアニメだ。

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